SSBJを使わない会社の担当者が、なぜこのセミナーに参加したのか
先日のセミナーが終わったあと、受講者の方と話していて、少し意外なことを聞きました。
その方は企業でサステナビリティ開示を担当しています。ただ、その会社ではSSBJ基準に基づく開示を想定していないというのです。
それでも参加したのは、社内で開示を考えるときの参考になりそうだったから。そして、こんな趣旨のことを話してくれました。
「こういうことを開示したいと言っても、社内で反対されることがある。でも、『こういう理由だから、この情報を開示する必要がある』と言えれば、状況が変わるかもしれない」
この話を聞いて、今回のセミナーで扱っていたことは、SSBJ対応よりも少し手前にある問題だったのだと気づきました。
サステナビリティ開示を考えると、どうしても最初に、
「基準では何を求めているか」
「他社は何を開示しているか」
「何を書けばよいか」
を確認したくなります。もちろん、それらは必要です。
ただ、開示はコミュニケーションです。そう考えると、その前にもう一つ問いがあります。
「この情報によって、誰の、どんな判断を可能にしたいのか」
ここが決まらないまま海外企業の開示事例を集めても、「この表現は使えそうだ」「この図は分かりやすい」で終わりがちです。
反対に、先に「投資家は何を判断できないのか」を考えておくと、同じ開示事例でも見え方が変わります。
なぜ、この会社はこの情報まで書いているのか。
この説明があることで、投資家は何を判断できるようになるのか。
それを自社に置き換えたら、何を説明する必要があるのか。
海外事例から持ち帰るべきなのは、文章そのものではなく、その文章によって可能になっている「投資家の判断」なのだと思います。そして、この考え方なら、社内で「なぜ開示する必要があるのか」と聞かれたときにも、
「海外企業が開示しているから」
ではなく、
「投資家がこの点を判断するためには、この情報が必要だから」
と説明できるようになります。
これは、開示を増やすための考え方でもありません。「なぜ必要なのか」を突き詰めた結果、「この情報は有価証券報告書には要らない」という判断になることもある。だからこそ、開示を選ぶための考え方でもあります。
ブログでは、ここからさらに、気候変動が自社ビジネスに大きな影響を与えないとするRELXの開示をどう読んだのか、欧州企業の事例をどのような順序で自社開示に読み替えたのか、そして「投資家から考えること」とSSBJ基準の要求事項がどうつながるのかまで整理しました。
「何を書けばよいか」を考える前に何を考えるべきなのか。その全体像は、ブログ本文でご覧いただけます。
