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英語を「話す」前に大切にしたいこと―第二言語習得論の本を読み返して

先日、白井恭弘著『英語教師のための第二言語習得論入門』を読み返しました。

日々のレッスンで私が心がけているのは、楽しく学べること、そして学びにつながること。

そのためには、
「どうすれば英語を効果的に身につけられるのか」という知識も欠かせません。

第二言語習得論は、まさにその土台となるものです。

私自身、小学生英語指導者資格J-SHINEを取得したときにも、テキストの中で第二言語習得について学んだ記憶があります。その後も、折に触れて学ぶ機会がありました。

特に、mpi松香フォニックスの認定講師になるための研修では、第二言語習得理論に基づいた指導を座学と実践でしっかり学びます。
今ではオンラインで全国から受講できますが、私が受講した頃は、はるばる東京まで足を運んでいました。

講師から直接学ぶセミナーは熱量が高く、
なんなら喜びにあふれていました。
そこで学んだことは今でも強く印象に残っています。
私にとっては、英語指導の原点です。

読みやすく、英語指導を考えるきっかけになる一冊

第二言語習得に関する本はいろいろありますが、
『英語教師のための第二言語習得論入門』は比較的読みやすく、これから学んでみたいという方にも手に取りやすい本だと思います。
今回、久しぶりに読み返してみて、改めて
「自分は普段、どんなレッスンをしているのだろう」と振り返るよい機会になりました。

第1章では、第二言語習得研究で現在わかっていることのうち、英語指導に関連する内容が簡潔にまとめられています。

第2章では、第二言語習得論の視点から見た日本の英語教育について。

そして第3章以降では、小学生、中学生、高校生、大学生、社会人、それぞれの英語教育の現状と展望について述べられています。

英語を教える立場の人にとって、非常に興味深い内容です。

今回、同書を読み返したことで、自分自身のレッスンについて振り返ることが出来ました。

「話すこと」を急ぎすぎていなかったか

まず反省したのは、私の中に以前よりも「アウトプット」を強調する傾向が出てきていたことです。

本来は、英語を身につけるためにはインプットが大切だと考えていた私。

ところが、
子どもたちのインタラクションをもっと増やしたい、
実際に英語を使う機会をつくりたいと思うあまり、
少し先走っていた部分があったのではないか。

そんなことを考えました。

もちろん、英語を実際に使うことは大切です。

ただし、「聞いてわかる」ための土台が十分にできていない段階で、話すことを求めてはいないだろうか。

講師側の事情としては
「話し始めた子どもを見たら、保護者は安心してくれるだろう」という思いもなくはありません・・・。

が、子どもたちにとって本当に大切なのは良質なインプットの時間!
ここは折に触れて保護者の皆さんにも伝えていかなければ。

本を読みながら、そんなふうに自分のレッスンを振り返りました。

一方で、「これは比較的できているな」と思ったこともあります。
それは、文法の扱いについて。
私はふだんのレッスンでは「説明する」時間を、なるべく最小限にしています。
もちろん、子どもが「なぜ?」と疑問を持ったときにはていねいにお話することもあります。
また、中学生以上では、必要に応じて少し時間をとって、文法事項を伝えることもあります。

ただ、私の仕事は学校英語を教えることではなく、英会話を通して英語を使う力を育てること。
ですから、まずは英語をしっかり聞き、意味を理解し、そして実際に使ってみる。
そこを大切にしています。

「そろそろ話せる」を見極める

小学生のレッスンでは、
英語の音や基本的な表現に親しみ、
最終的には自分自身のことを英語で伝えられるようになること
目標の一つにしています。
ただ、子どもたちが皆、同じ時期に同じように話せるようになるわけではありません。

だからこそ、インプットの質と量に配慮して
「この子は、そろそろ英語を自分の言葉として使えそうだな」
というタイミングを、一人ひとり見極めていきたい。
改めてそう思いました。

ここでいう「インプット」とは、英語をまだ十分に読めない段階であれば、意味を理解できる英語を耳からたくさん聞くことです。

ただ、インプットだけで十分というわけでもありません。
「聞けばわかるけれど、自分では使えない」という状態になることもあります。

だからこそ、
聞く → 真似する → 自分で使ってみる
という流れをレッスンで確保する必要があります。

そして自然な英語を身につけていくためには、
まず「わかる英語」をたくさん聞くことが大切なのです。

保護者の不安を煽る情報に惑わされないために

今は、英語教育についてさまざまな情報があふれています。
「○歳までに○○しないといけない」
「これをしなければ英語が話せるようにならない」
そんな情報に、保護者の方が不安になってしまうこともあるのではないでしょうか。

でも、今回この本を読み返して感じたのは、
英語の習得に必要なことは、実はそれほど複雑ではないということです。

本書では、小学生の英語指導について、TPR(Total Physical Response)を活用した活動や、動詞を中心とした言語活動についても紹介されています。
英語を体験的に聞いて理解し、実際に動きながら使う。

そうした活動を通して、文法的な知識も徐々に身についていくという考え方には、私自身にも再発見がありました。

「英語を話す」には、安心できる環境が必要

中学校英語についての章では、アウトプットを無理に求めることの難しさについても触れられています。
人前で英語を話すというのは、子どもにとって意外と心理的な負担が大きい活動です。
もちろん個人差はありますが、ペアワークなど、比較的小さなグループで話す機会をつくることも一つの方法として紹介されています。

この点は、私が行っているオンラインの個別レッスンと相性がよいところだと感じました。

ほかの人に聞かれることを気にせず、自分のペースで話すことができる。
間違えても大丈夫だと思える。
そんな安心できる環境の中で、少しずつ英語を使う経験を積むことができます。

また、英語を使うときには「相手に伝わるかどうか」と「正確に言えているか」の両方が大切です。
ただ、私のレッスンは試験ではありません。
まずは自分の言いたいことが相手に伝わることを大切にし、そのうえで、必要に応じて重要な間違いをフィードバックするようにしています。
「間違えないように話す」のではなく、「伝えてみる」経験を積むことが大切だと考えているからです。

「授業は英語で」の本当の意味

高校英語について書かれた章も、とても興味深く読みました。
ここでは、「英語の授業は英語で」という方針が打ち出されるようになった背景についても説明されています。

「授業は英語で」と聞くと、
「先生は授業中、日本語をしゃべっちゃいけないの?」
と思ってしまうかもしれません。
でも、そういう意味ではありません。

たとえば、文法の説明などは、日本語で説明したほうが効果的な場合もあります。
大切なのは、必要なときには日本語も使いながら、
業の中で英語によるコミュニケーションや、英語を聞いて理解する機会を十分につくること
なのだと理解しました。

そして、ここでのインプットは、先生が話す英語だけではありません。
オーディオ教材などを通して英語を聞くことも含まれます。

高校の英語授業で、生徒の英語力を伸ばしていった実践例も紹介されていますので
興味のある方は、ぜひ本書を読んでみてください。

個人的には、普段レッスンで英文の読み物を使っている生徒たちについても、「これまでやってきたことを、これからも自信を持って続けていきたい」と指導に確信を持つことが出来ました。

英語学習は、もっとシンプルに考えていい

世の中には、さまざまな英語教材や英語学習法があり、それぞれに良さがあります。
でも、わが子の英語学習について考えるとき、あるいは自分自身が英語を学ぶとき、
「いったい何をすればいいの?」
と、そんなに難しく考えなくてもよいのではないでしょうか。

わかる英語をたくさん聞く。
聞いた英語を真似してみる。
そして、自分でも使ってみる。

基本にあるのは、意外とシンプルなことなのだと思います。

もし「英会話を自分で勉強してみたい」という子どもがいたら、私はまずNHKのラジオ口座など、良質な英語を継続的に聞ける教材をおすすめします。

高価な教材を買う前に、毎日、わかる英語を聞く習慣をつくること。
それだけでも、英語の力は身につきます。

本を読むことは、自分の指導を見直すこと

今回、久しぶりにこの本を読み返してみて、改めて感じたのは、英語を教える側も学び続ける必要があるということでした。

長く英語を教えていると、「これまでこうしてきたから」という経験が、自分の指導の軸になっていきます。

これは正直、怖いです。

ときどき立ち止まって、研究や理論に照らして自分の指導を振り返ってみることも必要です。

子どもたちが英語を「勉強させられる」のではなく、
わかる、言える、伝わる、もっと使ってみたいと思えるようになること。

そのために、これからも一人ひとりの様子をよく見ながら、インプットとアウトプットのバランスを考え、レッスンをつくっていきたいと思います。

今回は、白井恭弘先生の『英語教師のための第二言語習得論入門』を読み返した私自身の感想を、普段のレッスンを振り返りながらご紹介しました。


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