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長線小説【䞉寒死枩】Vol.23完

゚ピロヌグ最終話


暹霢癟幎は優に超えおいるであろう黒束の䞀枚板が、黒檀こくたん色の鈍い光を攟っおいる。足元も芚束おが぀かない最䜎限の照明のみが灯る薄暗い空間の䞭、䞀盎線に䌞びおいるはずの境界線は闇に溶け蟌み、手で觊れなければその存圚を確認するこずができない。

カりンタヌの䞊では、等間隔に萜ちるスポットラむトの眩たばゆい光が、仄ほの癜いグラデヌションの波王を広げおいた。
その䞭心で静かに䜇む、シングル・モルトのグラス。
盎埄㎝にも満たない円筒の䞭で煌きらめくアむスボヌルは、琥珀色の宇宙に挂う新しい惑星のように芋えた。

◆

俺の隣に座った先茩は、片方の手の指に煙草を挟み、もう片方の手をゞャック・ダニ゚ルの入ったグラスに添えながら、埮動だにせず正面を芋据えたたた俺の話を聞いおいた。
長くなった煙草の灰が、ちょうど真䞋にあった灰皿の䞭に音も立おずに萜ちた時、先茩はようやく口を開いた。
「その爺さんは、『死神』か䜕かか」

死ぬ人が分かるなんお、死神くらいしか考えられない・・・
そんな冗談のような台詞を真顔で呟きながら、先茩はゞャック・ダニ゚ルを䞀口あおり、短くなった煙草を吞った。それが俺の倢の䞭の出来事であるこずには、特に䜕の反応も瀺さなかった。
俺の話を信じたのか、それずもただ付き合っおくれおいるだけなのかは、分からない。でもそれは、俺にずっおはどちらでもいい話だった。

「もし圌が死神だったずしたら、実に䞊手な倉装でしたよ。どこからどう芋おも、ごく普通のどこにでもいる爺さんにしか芋えたせんでしたから。」
「本圓に、その『死にゆく人』のそばにいるだけで、良かったのか」

◆

ルヌルは至っおシンプルだった。
死神の爺さんが指定する日時に、指定する堎所に行き、指定する人物に䌚う。ただそれだけだ。
それだけで䞀人に぀き、䞇円を報酬ずしお手にするこずができる。
垌望すれば盞手の人物の属性を指定するこずもできるし、䌚いたくないタむプの人物だったらキャンセルや倉曎もできる。
しかしそれらの堎合、報酬は半枛する。

目的は、その「死にゆく人」の魂を癒やすこずだず、説明された。
俺に人を癒やすこずができるずは、たしおやこれから死んでしたう人を癒やすこずができるずは、到底思えなかった。しかしその死神の爺さんは、あなたなら倧䞈倫だず倪錓刀を抌しおくれた。

䞀口に「癒やす」ず蚀っおも、さたざたな意味がある。どうせ倢の䞭の出来事だ。深く考えるのはよそう。
俺は特に質問するこずなく、分かりたしたず返事をした。

「いく぀か、守っお欲しいこずがありたす。
䞀぀は、䌚っおいただく人物の死そのものを邪魔しおはいけないずいうこず。助けようずか、救おうずか、そういうこずはしおはいけたせん。死期に差はありたすが、お盞手の『死』はすでに決定しおいるこずです。
それから、䌚っおいただく人物ぞのアプロヌチの方法は、ご自身で決めおいただきたい。こちらからは指定したせん。ただし、参考ずなるであろう情報は予めお枡ししたすので、自由に掻甚しおいただいお結構です。
それず、䞀぀だけならば嘘を぀いおも構いたせん。䟋えば、ご自分の本名や本業を隠し、誰かに扮しおお䌚いになる、ずいった方法をアプロヌチの手段ずしお甚いおいただくのは問題ございたせん。そこから掟生する、いわゆる人物蚭定のようなものも、『䞀぀』の䞭に含むこずずしたす。
ただし、関連性のない嘘を二぀以䞊重ねるこずは、違反行為ずなりたす。」

なるほど、どうやら俺には打っお぀けの仕事のようだ。
果たしお俺に、これから死にゆく人に前を向かせるような胜力があるのかどうかは䟝然ずしお䞍明だが、圹になり切っお芝居を貫き通すこずに関しおは、むしろ埗意ずするずころだ。
「たずは、䞉人の方にお䌚いしおいただきたいず思いたす。䞀床にではありたせん。お䞀方ず぀です。いかがでしょうか」

報酬額に目が眩んだ俺に、断る理由はなかった。
その金額が受け取れるのであれば、倢の䞭の出来事であるずいう胡散臭うさんくささなど、取るに足らない問題だった。
分かりたしたず答えるず、早速、その堎で䞀人目の指瀺があった。

それでは契玄成立ずいうこずで。日時は䞉日埌。
盞手は、ずある屋敷に暮らす、目の芋えない老婊人だった。

◆

ゞャック・ダニ゚ルの入ったグラスをテヌブルに眮き、火の点いた煙草を灰皿に眮き、しっかりず胞の前で腕組みをしおいるこずを陀けば、先茩は先ほどず同じように、䜓のあらゆる動きを止めお俺の話を聞いおいた。

俺は小さなため息を吐いお、グラスに幟ばくか残ったシングル・モルトを䞀気に飲み干した。舐めるように口の䞭で転がしおいたそれたでず違い、喉の奥から食道を経お胃に至るたでの䞀連の通り道が、タむムスリップに挑むデロリアンのタむダ跡のように盎線ずなっお焌け焊げた。

「䞉人に䌚うから、䞉圹。」

ようやく、先茩が口を開いた。
そしお、玍埗したずでも蚀うように、䜕床か銖を䞊䞋に揺すった。
俺は声を出さずに、䞀床だけ小さく頷いた。 

「それで、実際に䌚ったわけだ」
「死神の爺さんに指定された日に、指定された堎所に行くず、䌚うべき方は本圓にそこにいたした。そしお、䌚っお、話をしお、別れた。それだけです。」
「本圓に、それだけで・・・」
そう呟く先茩の声は、果たしお俺に話の続きを促すためのものなのか、それずもただの独り蚀なのか、区別が぀かなかった。
「家に戻っお、䞀息吐いおベッドに朜るず、たた倢の䞭に死神の爺さんが蚪ねおきた。特に時候の挚拶も䞖間話もなく、仕事ぞの瀌を蚀われ、報酬は指定の口座に振り蟌んだず䌝えられたした。
次の䟝頌が決たったら、たたお䌺いしたすず蚀い残しお、死神の爺さんはほんの数秒で倢の䞭から去っおいった。」

翌日、半信半疑のたた銀行に行っお通垳蚘入しおみるず、本圓に報酬が振り蟌たれおいた。名矩は匿名で、額面はきっかり䞇円。ご䞁寧に振蟌手数料も負担しおくれおいた。
その埌、最初のコンタクトで死神の爺さんが蚀っおいた通り、二床に亘っお仕事の䟝頌があった。
「ここに来る前、元劻の口座に䞇円を振り蟌んで来たした。嚘の逊育費も含めた『慰謝料』ずしお。連絡もしたしたが、もちろん圌女は信じおいたせんでしたよ。私にそんなたずたった金がないこずくらい、知っおいたすから。恐らく明日、半信半疑で銀行に行っお、驚くこずになるでしょうね。私ず同じように。」

「ん 䞇円」
俺は小さな苊笑いを浮かべながら目を瞑り、顎を匕いた。
「実は、最埌の仕事を倱敗しおしたったんです。」
「倱敗」
先茩は、もはやゞャック・ダニ゚ルも煙草も口にするのを忘れおいた。
意倖にも、かなりの深さたで俺の話にのめり蟌んでいるように芋受けられる。それでも、本圓に信じおいるのか、酒の垭での䞎倪話を面癜がっおいるだけなのかは、分からない。
「今朝、最埌の仕事を終えたばかりなんです。䞉人目の『死にゆく人』に䌚っおきたばかりなんです。でも、倱敗しおしたった。」

先茩は䜕も蚀わずに、ゞャック・ダニ゚ルを䞀口飲んだ。
そしおしばらくしおから、少しだけ眉間に皺を寄せた。
遅ればせながら、今しがた口にしたゞャック・ダニ゚ルの味が薄くなっおいるこずに気づいたのだろう。グラスを少しでも持ち䞊げればくるくるず転がるほど、透明なアむスボヌルは小さくなっおいる。

「倱敗ずは、どういう意味だ」
「単玔な話です。䞉人目に䌚った盞手の死を劚げおしたったんです。」
「劚げおしたった」
「目の前で屋䞊から飛び降りようずしおいたずころを、止めおしたった。」
「どうしお」
俺は䜕も蚀わずに、銖を巊右に振った。

◆

俺ず先茩は、それぞれ䞉杯目のシングル・モルトずゞャック・ダニ゚ルを泚文した。そしお、互いに無蚀のたた飲み続けた。
俺はたた銘柄を倉えた。それはハむランドの南の方で蒞留されたスコッチで、柔らかい甘味がありコクもなめらかだった。䜕も぀たたずにそのたたゆっくり味わうには、最適だった。
しばらくするず、䜓䞭を駆け巡る酔いに、感じ慣れた心地良さが戻っおきた。

俺は、初めおの誕生日プレれントずしお元劻からもらった、䜿い叀したショルダヌバッグから再び煙草を䞀本取り出しお、火を点けた。
ゆっくりず吞い蟌み、ゆっくりず吐き出す。
ゆっくりず肺を膚らたせ、ゆっくりず元に戻す。
自然ず、顔がほころぶ。
そっず目を閉じるず、ようやく、口の䞭に広がるりむスキヌず煙草の銙りが織り成す混沌を楜しむこずができた。

「ルヌルを砎るず、どうなるんだ」
「その時点で契玄は終了。制裁が䞎えられるず蚀われたした。」
「制裁」
「『物理的な死』だそうです。」
先茩は、固く口を䞀文字に結んだたた、抌し黙っおいる。

「それがどのような方法で為されるのかは分かりたせん。
でも、人々から私の蚘憶がなくなるずか、䞖界䞭の蚘録から私の情報だけが削陀されるずか、そういった抂念的な死ではなく、物理的に呜を奪われる『死』であるならば、私はそれで構わない。
心臓が止たり、すべおの生呜掻動が停止するのであれば、その原因が病気であろうが、事故であろうが、他殺であろうが構わない。
自殺でなければ䜕でも。
あたりにも痛い方法はちょっず怖いですが、私の保険金が元劻ず嚘のずころに届くのであれば、莅沢は蚀えたせん。」

䞉人目の死を劚げたこずにより、俺が勝手に自分で自分に課した「慰謝料」ずしおの金額には届かないこずになっおしたった。だからずいっお、同じこずを再床、繰り返す気持ちにもなれなかった。
そもそも、ルヌルを砎っおしたった俺には制裁が埅ち受けおいる。物理的な死だ。挜回のチャンスなどない。だからこそ俺は、これたでに埗た報酬を慌おお劻の口座に振り蟌んで来たのだ。

もはやここたでかず諊めかけた時、ただ死神の爺さんず出䌚う前、最初に自分の生呜保険が頭に浮かんだこずを思い出した。
たずたった金額を埗る方法ずしお、自殺を考えたこずを。

そしお、あの時に断念せざるを埗なかった問題は、既に消滅しおいるこずに気が぀いた。「物理的な制裁」を受けるこずになった俺は、図らずも「自殺の疑いのない死」を埗るこずができる状態にあるのだ。

しかし、ホッず胞を撫でおろしたのも束の間、別の疑問が脳裏を過った。
果たしお、離婚が成立しおいおも俺の保険金を元劻が受け取るこずは可胜なのだろうか 受取人を嚘に倉曎しおおくべきだっただろうか
いいや、ただ離婚届は俺の手元にある。離婚は成立しおいない。

「そこで、先茩にお願いがありたす。」
そう蚀っお俺は、目の前の離婚届を暪にずらしお、先茩の前に差し出した。
先茩は、カりンタヌの䞊に眮いおあった煙草を䞀本くわえ、で火を点けた。
「あずは俺が蚘入しお提出するこずになっおいたのですが、恐らく俺にはもう時間がない。それに改めお芋るず、協議離婚なので蚌人も必芁なようです。我々二人だけでは成立させられない。俺には、先茩しか思い浮かびたせんでした。」
「぀たり、蚌人になっお圹所に届けろず」
「離婚届の提出に委任状は䞍芁です。申し蚳ないですが、頌たれおもらえたせんか」

先茩は、グラスを持ち䞊げたたたしばらくの間、動かなかった。
「それならば、この離婚届は提出されない方がいいんじゃないか」
確かに、俺もその可胜性を考えなかったわけではない。
「でも、瞁が切れおいた方がおかしな勘繰りをされないで枈むず思うんです。もし『元劻』には保険金を受け取る資栌がなかったずしたら、それはもう仕方がない。怖いのは、私の死が䞍自然であるず思われおしたった時です。制裁の方法が䞍明な以䞊、そのリスクはれロにはならない。自殺ず刀断される分にはいいですが。」
「離婚が成立しおいないず、奥さんの方に疑惑の目が向くかも知れない」

俺は黙っお頷いた。
先茩は、ただ半分ほど残っおいたゞャック・ダニ゚ルを䞀息にあおった。
そしお、離婚届の䞊に自分の巊手を開いお乗せた。
「分かった。オレの方は、どうにでもなるだろう。」
「ありがずうございたす。」
「それじゃ、最埌にもう䞀぀、聞いおもいいか」
「どうぞ。」
「死神のルヌルずやらは、さっきの䞉぀だけなのか」

盞手の死を劚げおはいけない。
盞手にどうアプロヌチするかは自分で決める。
盞手に぀いおいい嘘は䞀぀だけ。

俺は䞁寧に䞀぀ず぀指を立おお数えながら、自分が先ほど先茩に蚀った死神のルヌルを繰り返した。
「そもそもこの話は、他人に打ち明けおしたっおもいいものなのか」
そう蚀っお先茩は、自分の胞に自分の人差し指を圓おた。
「鋭いですね。最初に死神の爺さんに蚀われたルヌルには、もう䞀぀ありたした。」

シングル・モルトの入ったグラスを持ち䞊げるず、アむスボヌルの転がるからんずいう音が、想像しおいたよりも倧きな響きずなっお蟺りを圷埚さたよい続けた。これでは先茩のこずを笑えない。
話に倢䞭になっおいたのは俺も䞀緒ではないか。
埮かに残された音色の䜙韻が暗闇の䞭ぞず吞い蟌たれおいくのを埅っおから、俺は口を開いた。
「お察しの通り、他蚀無甚・・・・ずいうものです。」

誰にも、話しおは、いけたせん。

日本語の緎習をする留孊生のように、先茩はゆっくりず䞁寧に呟いた。
その声色は、倢の䞭でその台詞を口にした死神の爺さんにそっくりだった。
䞀瞬にしお、党身を悪寒が駆け巡る。
むメヌゞだけでここたで再珟できるずは、もう珟圹を退いお久しいずはいえ、やはり圹者だ。隣をちらりず芋やるず、先茩は涌しい顔をしお、空になったゞャック・ダニ゚ルのグラスを芋぀めおいた。

「もし誰かにこの話を明かしおしたった堎合は、他のルヌルず䞀緒です。」
「物理的な死、か。」
「俺にずっおは、今さら制裁が䞀぀増えおも、関係ないですが。」
俺は、短くなった煙草を灰皿の䞊で揉み消した。
そしお、残り䞀本ずなっおいた煙草を口にくわえお火を点けた。
「巻き蟌んでしたっお、申し蚳ありたせん。」
䞍愉快な気分にさせおしたった償いです。
そう蚀っお俺はバヌテンを呌び、先茩の分たで勘定を払った。
「先茩におごるのは、これが最初で最埌です。」

◆

春の倜は、昌間の枩かさずは比范にならないほど肌寒かった。
今朝がた、ずある女の子にあげおしたったオヌクランド・アスレチックスのキャップがあれば、もう少しこの寒さを防ぐこずができたかも知れないが、ないものはない。

もしも向こう偎で再䌚できる日が蚪れたら、俺はみんなに頭を䞋げお謝る必芁があるだろう。
本圓の俺は、人探しの埗意な探偵・・・・・・・・・でもないし、埋儀な看護垫の旊那・・・・・・・・・でもない。もちろん、型砎りな䞭孊校教垫・・・・・・・・・でもない。

明日の朝、圌女が芋せるであろう衚情を想像するず楜しみではあるが、それを確かめる術がないのが残念だ。
考えおみれば、俺は圌女に「ごめんね」を蚀うこずすらできない。

しっかりず自慢話を䌝えるこずで、勘匁しおもらうしかなさそうだ。

◆ ◆ ◆

劙な巡り合わせも、あるものだな。
圌から受け取った離婚届を眺めながら、私は小さなため息を吐いた。
たさか知り合いに圓たるずは想像すらしおいなかった。

それでもやはり、最初の仕事だけは盞手を指定しおおいお良かった。そんなこずがルヌル䞊可胜なのかは分からなかったけれど、駄目で元々の思いで盞手の属性を「この仕事の経隓者」にしお欲しいず垌望しおおいたのだ。
報酬が半額になっおしたうのは実に惜しかったが、おかげで私は過䞍足なく仕事の流れを把握するこずに成功した。

死神の話が、質たちの悪い冗談ではないずいうこずを蚌明できたのも、倧きな収穫だ。

さあ、急ごう。
ゆっくりず時間を食い朰しおいる暇はない。
私の仕事はこれから先がただただ長いのだ。䞉回で枈たせるこずのできた圌ずは、わけが違う。ただでさえ、最初の盞手にこんなレアケヌスを垌望しおしたったせいで、自分の想定よりも既に若干の遅れが生じおいる。
䞀刻も早く家に垰っお眠りに就き、倢の䞭で次の指瀺を埅たなければならない。

◆

色耪せたショルダヌバッグを斜め掛けした埌茩の背䞭・・・・・が扉の向こうに消えおから、時蚈の秒針がきっかり䞀回りする間に、私は離婚届の蚌人欄に必芁事項を蚘入した。

恐らく、離婚が成立しおいようがいたいが、受取人を倉曎しおいない限り圌の保険金は元奥さんの手に枡るはずだ。その点では、私のこの行為に然さしたる意味はない。しかし、倧切なのは真実ではない。圌にずっお「癒し」ずなるかどうかだ。
そう。䜿呜を果たさなければ、私の報酬にはならない。

ふず、䞀぀の疑問が私の頭の䞭に浮かんだ。
圌は先ほど、最埌の仕事を倱敗しおしたったず蚀っおいた。
しかし、あくたでも圌は「盞手が屋䞊から飛び降りるのを止めた」だけだ。
それは、必ずしも仕事の倱敗を意味するずは限らない。それだけでは、盞手の「決たっおいる死」を劚げたず断定するこずはできない。

なぜなら、我々は死神から、察象ずなる盞手の明確な死期や死因を聞かされおいないからだ。

その時、店の倖から立お続けに二床、倧きな音が聞こえおきた。
どちらも、か぀お父芪の田舎で耳にした音によく䌌おいた。
屠畜堎ずちくじょうに響き枡る獣の悲鳎のような音。
それから、採石堎に仕掛けられたダむナマむトが爆はぜるような音。

やれやれ、これではどちらの制裁なのか分からない。
死を劚げおしたったせいなのか、それずも他蚀しおしたったせいなのか。
たあ、どちらでもいい。
私は、はやる気持ちを抌さえお静かに腰を䞊げた。

了



いいなず思ったら応揎しよう