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冷蔵庫の扉

「怖くないの?」
と呟きながら、いつの間にか眠りに就いた君が、苦しそうに顔を歪める。夢の中まで、辛いのだろうか。

僕が明るい未来を見せてあげられたらいいのに。そんな話を信じられる君を探し出してあげられたらいいのに。

✂︎-----キリトリ-----

今夜はもう眠ってしまいたい。
眠りたいという言葉さえ、声にならない。
鬱なのではなく、鬱になるエネルギーさえ失っているようで。そうきっと、私はただ、生きる活力だけを圧倒的に失っているのだ。

冷蔵庫を開けて、炭酸水を飲もうとして、チューハイを選ぶ手からこぼれ落ちたのは、名前のない虚しさのようで、すべてを失ったわけではないことを思い知る。
それがこの夜にたまたま現れただけで、私はいつだって希望的観測を持って生きているわけではない気がする。

「どうしたの?」
と覗き込む和哉が優しければ優しいほど、憂鬱が渦を巻く。
言葉にしてはいけないものを、言葉にしてしまいそうで、本来言葉にするべき気持ちから離れていく自分を感じる。
誰のせいでもない。
でも「誰のせいでもないから、苦しいの」と言ってしまうと、和哉を苦しめる気がして、また「大丈夫」と笑って見せる。

大丈夫なわけ、ないじゃない。

「いつか死ぬんだろうって思ってた。」
朝日より遅く起きた私は、同じように朝日の中で寝ぼけ眼な横顔にそう呟いた。
「そうだね。人は誰でもいつか死ぬから。」
優しさが朝日のように輝いて、闇から目を覚ませない私にはいつも眩し過ぎる。
「違う。そんな先の話じゃなくて。歯磨きしてる時とか、お皿を洗っている時とか、ふとした瞬間に突然死にたくなるんじゃないかって。」
眩しさに噛み付くように言ってみる。
「そうだね。いつか不意に死んじゃうんじゃないかって思ってた。」
眩しさが重なる。そして眩しさを遮るように
「でも、僕も君も生きてる」
と私の額にかかった前髪を指で梳かす。

「怖くないの?」
和哉を咎めるように言うと 
「怖いから一緒にいるし、怖くないから一緒にいられる」
と続けた。 

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