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ぬるい泡

長い手紙を書いた。
途中まで直筆だったのだけれど、感情が伝わってしまいそうで、Wordで打ち直した。それでもまだ、メールやLINEに比べると、アナログな感じがする。
誰かに手紙を書く時の、便箋や切手を選ぶ時間の煌めきはもう昔の話なのだろうか。

Wordの画面を何度もスクロールして、自分が書いた文章を読み返す。
正しい日本語を使えているだろうか、と思いながら、どちらにしてもこの世に存在する言葉には、私の気持ちを正しく伝えるものがない気がしてならない。

外がゆっくりと確実に明るくなり始めている。
これは目覚めのコーヒーだろうか。それとも、寝る前のひとときのコーヒーだろうか。
ビールを開けなかったことを、少し後悔する。でも、この手紙だけは、私のままの姿で書きたかった。

この朝にもうあなたはいない。
今日だけではない。明日も明後日も。当たり前のように続くと思っていた二人で過ごす穏やか朝は、もう訪れない。
あなたがそれを望まなかったとしても。


啓一郎へ

人生で一度しかない時間をあなたと共に過ごせたことに、後悔はありません。
そしてこの別れは、あなたの落ち度によるものではありません。どちらかと言うと、私のわがままです。

あなたのことを大切に思わなかったことは、出会ってから今この瞬間まで一度もありませんでした。
あなたの洗濯物を畳むたび、お弁当のおかずを考えるたび、暮らしの中に存在できた。ケンカもたくさんしたけれど、それさえもキラキラと愛しいものでした。過去形なんかにできません。今も愛しくてたまらない。
その中で、あなたは何度も酒を辞めろと忠告してくれた。たったそれだけが、私には守れなくて、あなたさえも壊してしまいそうです。

あなたには幸せになって欲しい。
この日々を泡と消したのは、私です。
本当は、この泡に儚さなんて隠れていないのに。時間が経てばいつだって、ぬるいビールと後悔だけが残るのです。
それが別れの理由だとしても、私の身勝手に慣れたあなたはただ笑ってくれるだけかもしれません。そんなことはどうにでもなる、また今日から頑張ればいい、と優しい顔をして。

出会わなければ、あるいはお酒を知らずに生きていたら、こんな日は来なかったのでしょうか。
またいつか、どこかで会ったり話したりする機会があったら、その時はビールを片手に自分を取り繕うのではなく、もう少し自分に自信を持てたらいいなと思っています。

追伸
グラスの向こうのあなたより、隣で眠るあなたが大好きでした。

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