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ハッピーライティングマラソン#66|何度も読み返した本は?~『八日目の蝉』

「何度も読み返した本は、ありますか?」

本田健さん主催のハッピーライティングマラソン#66、今週のお題です。

お題を見て、真っ先に浮かんだのが
『八日目の蝉』でした。

この本を最初に読んだのは、妊活をやっとの思いで卒業して、育児中だったと思います。

当時の私は、母になれた後だったけれど、主人公の誘拐犯に完全に感情移入していました。

産みたくても産めない。

そんな女性が、
愛人の妻の赤ちゃんを誘拐してしまう。

もちろん、誘拐という行為を肯定するわけではありません。

それでも私は、主人公の「母になりたい」という気持ちに、どうしようもなく心を動かされたのです。

妊活中、何度も

「こうのとりポストの前で待とうか」

と思いました。

「……育てられないのならください。
私が育てるから」

赤ちゃんを抱きたい。

その想いが強く残っていたから、母になっても、この物語を「主人公の側」から見ていたんだと思います。


その後、映画も観ました。
オーディブルでも聴きました。
そして最近、Netflixで俳優さんが違う作品を発見して、もう一度観ました。

何度目だろう。

でも、今回観た『八日目の蝉』は、
以前とは少し違って見えました。

今度は、主人公だけじゃなくて、赤ちゃんを突然奪われた母親の気持ちもわかる。

そして、そんな二人の母親の間で育った子どもの気持ちも、以前より見えるようになっていました。

同じ物語なのに、見えてくるものが違いました。

「昔は、ここは見えていなかったな」

と、新たな感動がありました。

そして、「八日目の蝉」の意味が、
今になって深く沁みたのです。

誘拐した母が、

「普通では見られない世界を見ることができた」

というような意味の言葉を言いました。

その言葉を聞いて、私はふと思いました。

この物語で、普通なら見ることのなかった世界を見たのは、この女性だけじゃないのではないか、と。

子どもを奪われた母親も。
その子ども自身も。

三人とも、自分が普通に生きていたら、きっと見ることのなかった世界を見たのだろう。

そして、その世界を生きたからこそ、
それぞれの中に残ったものがある。


娘は最初、愛を受け入れられなくて、
堕胎しようとしていました。

でも、二人の母親から注がれていた愛に気づいて、

「産もうかな」

という気持ちになる。

そこが、私はたまらなく感動しました。

一人の女性から始まった
「母になりたい」という願い。

奪われた母の愛。
育てた母の愛。

そして、その愛を受け取った娘が、
次の命へとつなごうとする。

愛に気づくことで、
すべてが巡っていくように感じました。

そして思ったのです。

私たちも、もしかしたら同じなのかもしれない。


人生の中で起きた出来事によって、それまで知らなかった世界を見ることがあります。

そのときは、

「どうして私が?」
「こんな経験、したくなかった」

と思ったことでも、何年か経って振り返った時

「あの経験があったから、見えたものがある」

と思えることがあるから。

あの頃の私は、主人公の気持ちを見ていました。

今の私は、奪われた母親の気持ちも、子どもの気持ちも、少しだけ見えるようになりました。

きっと、物語が変わったのではなくて、

私が生きてきたから、
見えるものが増えたのかもしれません。


だから、本って面白い。


同じページを開いているのに、読む自分が変わると、そこにある世界まで違って見えます。


今回Netflixで『八日目の蝉』を観終わった私は、

「もう一度、原作を読みたい」
と思いました。

2人の監督も、演じた女優さんも、それぞれ感じたところが違うことに気づいたからです。

あの頃の私が読んだ『八日目の蝉』と、
今の私が読む『八日目の蝉』。

きっとまた、違う景色が見える気がします。

そして、これからまた歳を重ねたら、
さらに違うものが見えるのかもしれません。

本は、読むたびに新しくなるのではなく、

読む私が変わるたびに、新しい顔を見せてくれるのかもしれません。

『八日目の蝉』は、そんな余韻がずっしり残る本。

あなたの八日目は、どんな景色ですか?

今回のお題で、昔の私から今の私へと旅することができました。
健さん、素敵なお題をありがとうございました。


過去のハピマラはこちら

最後までお読み頂きありがとうございました。


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