D係長のモヤモヤ夜咄「菩薩のこと」
うちの課には、菩薩のような女性がいる。
課長補佐の彼女は、わたしと同い年。仕事が丁寧で最高に人当たりがいい。
課長も議員も、必ず彼女に挨拶に行く。というより、彼女のふんわり笑顔に癒されに行く。
彼女の席には、いつも誰かが座って話し込み、彼女も常にニコニコと対応している。
コミュ障のわたしからしたら、拝みたいほどにありがたい光景である。
そんな菩薩ちゃんは、人事のキーマンである。内示の原案を作り、トップ3と話し合う。
人事異動はさまざまな要素がからむ複雑なパズルである。退職者、新規採用者、経験年数、昇格のタイミング、誰をどのポストにつけるか、人間関係の良し悪し…あちらを立てればこちらが立たず、担当者は何日も頭を抱えることになる。
一番大変なのは、せっかく難解なパズルを解いて作った原案が、町長の考えと合わないことだ。
一度で決まることは、まずない。何度も何度も人事首脳会談が開かれることになる。
今年も、持って行った原案が、トップ判断でひっくり返されたらしい。
「なんのための会議だったのか…。」
珍しい菩薩ちゃんの愚痴。
そして、連日残業で午前様の菩薩ちゃん。
「お先するね、早く帰るんだよ。」
と声をかけると
「帰れるなら帰りたいよ!」
珍しい菩薩ちゃんの逆ギレ。
菩薩ちゃんに早く平穏な日々が訪れますように。
