「この人と結婚してよかった」病室で泣いた5分後、夫のパンツを握りしめて絶望した出産。
いつもと変わらない11月の朝。
出産予定日まであと1週間。お腹ははち切れんばかりに大きかったものの、体調はすこぶる良好。いつものように出勤する夫を玄関まで見送りました。
とにかく人を笑わせるのが好きな夫で、
その日も
「ぎゃはははは!!!」
私はお腹を抱えて大爆笑しました。涙が出るほど笑って、そして次の瞬間。
ツーッ……。
ん? あれ……?
笑い転げた衝撃で、下から何かが流れ出る感覚がありました。ピタッと笑いが止まり、一瞬にして頭の中が真っ白になりました。
まさかコレは……
___破水!?
--わたしのパンツ--
慌てて産院に電話をかけると、「すぐ来てください。即入院です!」と緊迫した声。
予定日より1週間早い出来事でした。陣痛バッグと入院バッグの準備はそれなりにしていたものの、致命的なことに「私の数日分の下着」がまだ入っていなかったのです。
2つの大きなバッグを抱えて動くことは不可能と判断し、私は必要最低限の陣痛バッグだけを肩にかけ、泣く泣くタクシーに乗り込みました。 車内から、仕事中の夫へ急いでSOSのLINEを送信。
「破水したから今から入院! ごめん、仕事抜けて家に戻って、入院バッグに数日分の下着を入れて病院に持ってきて!」
夫は事態を察し、すぐに会社を抜けて家に戻り、ものすごいスピードで荷物をまとめ、病院へ駆けつけてくれました。 ただ、破水からの入院だったため面会は一切不可。荷物は助産師さんの受け渡しのみです。
病室のベッドにポツンと1人。 助産師さんから受け取った入院バッグを見て、私はホッと胸を撫で下ろしました。 初めての出産、しかも予定外の破水。恐怖とパニックで心臓はずっとバクバクしていましたが、私のSOSにすぐさま応えてくれた夫の行動力が何よりも心強く感じました。
「本当に助かった……。色々と焦ってたけど、文句ひとつ言わずサッと動いてくれる。この人と結婚して本当によかった」
--病室で開けたバッグから出てきたモノ--
少し落ち着きを取り戻したところで、私は入院バッグのジッパーを開けました。
「さて、まずは着替えと下着を……」
ガサゴソとバッグの奥に手を伸ばし、夫が急いで詰めてくれた下着を引っ張り出します。 その瞬間、私の動きはピタッと止まりました。
手に握られていたのは、見慣れた黒い布切れ。
……ん? なんか、布の面積が少ない。 そしてなぜか、前に立体的なポケットがついている……。
それは、紛れもない『ユニクロのメンズボクサーパンツ(前開き)』でした。
脳内の処理が数秒遅れました。そして状況を理解した瞬間、
いや違う、そうじゃない!!!
確かに私は「下着を入れてきて」とお願いした。「私の下着」と一言一句正確に指定しなかった私にも非があるかもしれない。でも、普通そこは妻の下着を入れるはず。なんで『あなたのパンツ』を厳選して入れてきたのか。
夫に笑かされて破水してこうなってるのに、、ここまでくるとこの状況にさらに笑えてきました。
恐怖と不安でいっぱいでしたが、夫のボクサーパンツのおかげで、すっかり脱力感と笑い変わりました。
--執念の「パンツ防衛戦」と、笑顔の結末--
とはいえ、現実問題として私の「替えの下着」はありません。 夫に「なんで自分のパンツ入れてんの!」とLINEで追及しているうちに、容赦なく前駆陣痛が本格化し始めました。 お腹の奥から襲ってくる鈍い痛みに、パンツの謎など一瞬でどうでもよくなりました。
「もうこうなったら、今履いてるパンツで最後まで戦い抜くしかない!!」
私は完全に開き直りました。 幸いにも、病院からは破水用の「超特大産褥シート(多い日用ナプキンの3倍くらいある巨大な代物)」が支給されていました。季節は冬で、汗をかくこともほとんどありません。
私はその特大シートをこまめに交換し続けることで、下着本体の清潔を死守。「同じパンツを2日間連続で履き続ける」という気合いと根性のサバイバル術で、怒涛の出産劇を乗り切ったのでした。
そんなドタバタ劇から2日後。長丁場のお産を乗り越え、無事に女の子を出産しました。 初めて胸に抱いた娘は言葉にならないほど愛おしくて、これまでの痛みも、同じパンツを履き続けた不快感も、すべてを吹き飛ばしてくれました。
あれから現在、生後7ヶ月になった娘は、本当によく笑う子に育っています。 ニコニコと満面の笑みを浮かべる娘の顔を見つめながら、私たち夫婦も変わらずよく笑い合っています。
朝の玄関での大爆笑から始まり、夫のボクサーパンツが病室に届いたあの日のハチャメチャな出産エピソード。 それは、娘が「よく笑う明るい家族」を選んで、少しだけ早く飛び出してきた結果だったのかも。
娘の笑顔を見るたびに、私はあの一番辛くて一番笑った日のことを思い出し、この家族で本当によかったと心から思います。

