ひし餅を選んだ夜、娘に未来を願われた
ひし餅を選んだのは、わたしの方だったのに。
願いを込めるつもりだったのに。
込められたのは、わたしの方だった。
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祖母と飾った七段のお雛様
「おひな祭り」になると思い出すことがある。
客間に飾っていた7段のお雛様。
祖母と一緒に暮らしていたわたしは、
いつも一緒に箱から出して、飾っていた。
飾っていたというか、飾ったつもりになっていただけかもしれないけれど。
祖母が飾って、わたしは遊ぶ。
お人形の頭を持って、トントンと歩かせて。
でも、そのお雛様はもうない。
わたしが結婚したときに、母が手放した。
県内にある、お雛様が集められた場所へ。
10年保管してくれるとのこと。
あと、1年だ。
そこではこの時期、街中にお雛様が飾られている。
もし女の子が生まれたら……とも考えたみたいだけれど、
大きいし、一つ一つ結んで解く作業が大変だから、と母は言っていた。
それを聞いて、ふと気づいた。
祖母とお雛様を飾っていたあの時間、
わたしは祖母のことを見ず、
ずっとお雛様を片手に遊んでいたのだと。
わが家のお雛様と、子どもたちの成長
今、わが家にも「お雛様」がある。
最近はとてもシンプルで、
内裏雛だけの家庭も多い。
でも、わが家は
内裏雛の前に、三人官女と五人囃子もいる。
お菓子もどうぞって、子どもたちが置いてくれる。

これを飾りながら、子どもたちと歌う。
数年前は、ほとんどわたしが飾っていた。
でも、息子が5歳、娘が3歳くらいから、
わたしが一つ一つ箱からお人形を出すと、
去年の写真を見ながら飾ってくれるようになった。
今年は夫と初めて出してくれた。
7歳と5歳になった子どもたちは、
「これ、いるの?」というパパに
「ここにつけるんよ!」と教えていた。
なんとまあ、しっかりしていること。
ちゃんと去年のことを覚えていた。
子どもたちの思い出が、
静かに刻まれていくのを感じる。
夕食は簡単に。
誘うと「やりたい」と言った娘と二人で。
人参、大根、きゅうりをお花の形にしてもらった。
ピンクも入れたくて、大根はゆかりのふりかけとお酢で色付け。
卵は5つも焼いた。
以前は出来上がるまでに何度もつまみ食いされ、なかなか山盛りにならなかったけれど、
今回は「出来上がり」を楽しみに待てるようになっていた。
思わぬところにも、成長がある。
テーブルに置いて、さあ盛り付け。
花粉症で目をこじらせている息子も、少しだけ手伝う。
白一色だった寿司桶の中が、
だんだん華やかになった。
わたしの母が作るときは、少し違う。
でも、子どもたちに合わせて。
今日はこれだけ。


「ばーばが作るときは、鮭と生姜も入れるんだよ」
そう言うと、一番反応したのは夫だった。
「美味しそうだね」って。
今は子どもたち中心のご飯が多いけれど、
いつか夫中心のご飯も作るからね、と
心の中でそっと声をかけた。
ごはんの後は、特別におやつタイム。
子どもたちの好きな香川県のおいりと、
パパがスーパーで買ってきてくれたお餅。
娘はお餅が大好きで、
はじめて食べたのは1歳のとき。
兄が園から持ち帰った柏餅を、5ミリほどにちぎってあげた。
ひし餅に込めた願い
そして今回、7つの中から娘が選んだのは桜餅。
わたしはどれを食べようかなと目をやったとき、
ふと目にとまったのは、ひし餅だった。

noteなどでつながりのあるかばさんが、
ひな祭りに食べるものの色について書いてくださっていたことを思い出した。
noteを開いて、娘に伝えた。
ピンクは、悪い病気とかをバイバイできますようにって。
白は、すくすくと大きくなりますようにって。
緑は、元気で長生きできますようにって。
種類や季節によっても、
意味が違うことを伝えた。
「ママは、どれにしようかなぁ」
そう言うと娘は言った。
「じゃあ、ママはひし餅にして!」
「だって、わたし、ずーっと、ながーく
ママにおってほしいもん!」
ひし餅は、子宝に恵まれるだけではなく、
「長生きできる」とも伝えたものだから。
ちょうど昨年、祖母が亡くなった。
生きていることが当たり前ではないと、
娘なりに感じているからこそ、そう願うのだろう。
うれしくて、わたしの心は飛び跳ねていた。
元気でいたい。
ずっとこの子のそばにいたい。
そう願った。
両手で桜餅をほおばりながら、
ひし餅をゆっくり食べるわたしに娘は言う。
「ながーく生きてください、ママ♡」
「ママ、一緒に長くいられるね♪」
わたしが娘に願いを込めるつもりだったのに、
すっかりやられてしまった。
娘はうれしそうに笑っていた。
娘は続けて言う。
「なんで、ばーばたち長く生きとん?」
「なんでかなぁ」
そう言うわたしの横で、
今度は夫が笑って言った。
「ばーばたちは、絶対ひし餅食べてるよ!」
お菓子に詳しい母の顔が浮かんだ。
お読みいただき、ありがとうございました。
何かを伝えることは、
子どもの中で考えるきっかけにもなりますね。
わたしにとっても、うれしいひとときになりました。
お雛様に込められているものは、
ただ「飾る行事」だけではなく、
その子が、健やかに、やさしく、長く生きていけますように。
ただそれだけでいいと願う想いも込められています。
あれもできるように。
これも、がんばれるように。
そのような願いが、いつのまにか増えていきますが、
この子が生まれたあの日、
わが子に願ったのは、
生きていてくれたらいい。
笑っていてくれたらいい。
ただそれだけでした。
行事は、思い出を増やすだけのものではなく、
大切な願いに立ち返るためのものでもあるかもしれないですね。
どうぞ、あなたの大切なお子さんにも、
あの日と同じ、いちばんやさしい願いが届きますように。
ありがとうございました。
