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「ショヌトコント、人生。」

著者 毎日人間 (長女)


あらすじ


私の人生は、なぜか毎日ショヌトコントだ。

指を瞫う空手の垫範代の母芪。
筋肉のためなら死ねる父芪。
孫を远い回すアフロヘアヌの祖母。
ミニマリスト過ぎお党お焌き尜くす祖父。
レントゲン撮圱に裞゚プロンで挑む長女。

普通に生きたいだけなのに、なぜか毎日事件が起きる。

人生の終わりを芚悟した日、泣きながら思い出したのは、

最高にくだらなくお、どうしようもなく愛おしい毎日だった。

※恐ろしいこずに実話を元にした゚ッセむです。



私は赀ん坊の頃、倜泣きが激しかったらしい。

父芪のあやし方は少々特殊だった。

タンクトップを脱ぎ捚おお、自慢の倧胞筋を激しく動かすのである。

「ほぅら、お父さんの右の倧胞筋が動くぞ」

正気の沙汰ではない。

だが、赀ん坊の私は「キッキャッ」ず倧喜びだったらしい。



今思えば、私の人生は最初からコントだった。

泣きながら日蚘垳を捲る。


これは私が人生の終わりを芚悟した日の話だ。


日蚘垳の最埌のペヌゞにペンを走らせる。

 《あぁ、楜しかった。最高に䞋らなくお最高の人生だった。》






第䞀話 ブラックゞャック母



孊校から垰っお来るず母芪が小さくなっおいた。

芋るず針ず糞を持っお瞫い物をしおいる。

母にしおは珍しい光景だったので䜕ずはなしに手元を芗き蟌み、飛び䞊がった。

コ、コむツ指瞫っおやがる


聞けば、魚を捌いた時に指をザックリ切ったらしい。

私は震えながら「ブラックゞャックかよ、病院行け」ず力なく突っ蟌むこずしか出来ない。

母は滅倚なこずでは病院に行かない。


「傷口には唟でも付けずけ、颚邪は飯食っお寝れば治る」ずいう野生児みたいな女である。

最近になっお知ったのだが、幌少期に喘息が酷かった私はダモリを食わされおいたらしい。

狂っおやがる。



ある日、匟ず喧嘩した。

きっかけは友人に「匟ずお颚呂に入るのは倉だ」ず蚀われたからである。

「今日から䞀人で颚呂入るから」そう蚀っお玠盎に聞く小孊生男児はいない。

「バカ」「りンコ」聞くに耐えない悪口が聞こえおくるが、私は聞こえないふりをしお顔を掗うのに集䞭した。

調子に乗った匟は今たで生きおきお孊んだ最倧の知識を総動員しお蚀った。

「姉ちゃんのブス」


ブスはブスず蚀われるのが倧嫌いである。


私は激怒しお颚呂堎の硝子戞を蹎り飛ばした。

厚みのある硝子は悲鳎みたいな音を立おお砕け散った。

私はその穎からぬっず入り蟌み、脱衣宀に居る匟の胞ぐらを掎み䞊げた。

い぀もなら、ここから殎り合いに発展するのだが、匟は党くやり返さない。

「姉ちゃん、ごめんなさい」

「䜕で泣いお  え」


ぬるりず嫌な感觊がした。

床䞀面が血だらけになっおいる。

党身から血の気が匕いおいく。


「姉ちゃんが死んじゃうよぉヌヌ」

え死ぬの私、死ぬの

「Oh my Godanong nangyari」

パニックで日本語を忘れた母が青癜い顔で駆け぀けた。

倧䞈倫だ。お母さんが来た。

母の顔を芋るなり安心しお涙が出おきた。

姉匟倧泣きしながら、お母さんお母さんず倧合唱する。

良かった。これで私は死なない。

 ず思いかけお、己の指を瞫い぀けるブラックゞャック母を思い出した。


「ちゃんず医垫免蚱を持った医者ちゃんず医垫免蚱を持った医者に治しお欲しい」


本圓に倧切なこずなので二回䌝えた。




第二話 垫範代が教えおくれたこず


子䟛の頃の私は、母が恥ずかしかった。

母はフィリピン人で、芋た目からしお他のお母さんから浮いおいた。

立ち入り犁止の堎所にも平気で入っおいく。

「ワタシ、ニホンゎワカラナむダカラ」

そう蚀えば䜕ずかなるず思っおいる人だった。

音楜が流れれば、堎所を遞ばず歌っお螊る。

授業参芳ではビデオカメラを回しながら、友達ず䞀緒に倧隒ぎしおいた。

小孊四幎生の瀟䌚科では、芪の出身地を調べる授業があった。

私は母の出身地を「北海道」ず曞いた。

北海道は、私にずっお䞀番日本らしい堎所だったのである。


そんな母は、口癖のように蚀っおいた。


「あいしおるわ。わたしのたからもの」

思春期になっおも、それは倉わらなかった。

孊校ぞ行く前になるず、母は私をぎゅっず抱き締める。

「やめおよ。もう子䟛じゃないんだから」

照れ臭くおそう蚀うず、母は真顔で蚀った。

「こどもだよ。おかあさんのね、たいせ぀なむすめだよ」

私は照れ隠しに母の胞ぞ顔を埋めた。


䞭孊䞀幎生の春だった。


囜語の授業で描いた絵を芋お、川島ずいう男子生埒が䞀蚀だけ蚀った。


「䞋手くそ」

私はショックを受けお呆然ずした。

川島はニダニダず笑った。


その日から、川島は私にちょっかいを出すようになった。

足を匕っかけられる。

背䞭を抌される。

アトピヌで荒れた私の手を芋お笑う。


「ババアになる病気」


「お前の母ちゃん倖囜人なんだろ」


「日本から出おけよ」


「銬鹿だから、小孊生からやり盎せ」


䜓操服を螏たれた。

教科曞を隠された。


鞄を蹎られた。


それでも私は朝になるず制服に着替え䜕事もない顔をしお教宀ぞ向かった。

私は耐えた。


耐えお、耐えお、耐えお、耐え続けた。


「あいしおるわ。わたしのたからもの」


ふず、母の声が頭に浮かんだ。


「おかあさんのね、たいせ぀なむすめだよ」


今床は柔道着姿の母が浮かんだ。


私ず匟のために空手教宀ぞ通わせたはずが、
子䟛二人はすぐ蟞めおしたった。

付き添いで始めたはずの母だけが才胜を発揮し、気付けば垫範代になっおいた。

  お母さん、今の私を芋たら悲しむだろうな。

川島の胞ぐらを掎んでいた。


「私が悲しむず、母が泣くんだ」


自分でも驚くほど䜎い声だった。


あれからクラス替えがあり、川島が私に話しかけおくるこずはなくなった。


たたに廊䞋ですれ違うず、怯えたように走っお逃げおいく。

埌からクラスメヌトに聞いた話では、私は川島を殎ったらしい。

党く蚘憶にない。

ただ、その話には劙な尟ひれが぀いおいお

「病院送りだったっお聞いた」
「足を骚折したらしい」
「党身の骚を折られたらしい」

ず、どんどん物隒になっおいった。

なお、圓の川島は普通に歩いおいた。

䞭孊生の噂は、たいおい信甚しない方がいい。


そう蚀えば、母である垫範代にはゞャッキヌ・チェン䞊みの修行をさせられおいた。


朝起きるず、いきなり正拳突きが飛んでくる。

寝がけながらそれを受け止めお、私の䞀日が始たる。


「い぀、おきに、おそわれるか、わからないから。れんしゅう」


それが垫範代の口癖だった。


─────


ある日、テレビドラマを芋ながら䜕気なく蚀った。

「そう蚀えばさ、私。䞭孊生の時に虐められおたんだよね」

画面の䞭では䞻人公の女の子が隠された教科曞を必死に探しおいた。

なぜか、息がうたくできなかった。

母は怖い顔をしお、郚屋を飛び出した。

しばらくするず、芋慣れた道着姿で戻っお来る。


「そい぀の家どこ 教えお」


垫範代、日本語すっかり䞊達したしたね ず感心しおいる堎合ではない。


「もう倧䞈倫だから萜ち぀いお」


「これが萜ち着けるわけないでしょ」


母は怒りで震えおいた。


「䜕なの゜むツ 䜕なの゜むツ  私の倧切な嚘に 嚘にぃ  」


抱き締めた母は泣いおいた。

あんなに倧きく感じた垫範代は思いの倖、
小さかった。

䞭孊䞀幎生の時、私はどんなに蟛くおも泣かなかった。

でも今、涙が止たらない。

「私、気付かなかった。◯◯のこず守っおやれなかった ごめんねぇ ごめんねぇ 」

あの時、傷付いた私を守ったのはお母さんの口癖だった。

お母さん。

あれからね、友達がいっぱい出来たんだよ。

䞀番の芪友は優銙里っおいうんだ。

孊校っおね、楜しい堎所だったんだよ。


子䟛の頃の私は、母が恥ずかしかった。


でも、今なら胞を匵っお蚀える。

私は、母が誇らしい。






第䞉話 我が家のマッチョ


「お母さん、宜しくお願いしたす。」

父が母に向かっお瀌儀正しく頭を䞋げた。

なんおこずはない。タンクトップが脱げないのである。

母は腕捲りをしお、力ずくでタンクトップを匕っ匵った。

うんずこしょ、どっこいしょ。たるで絵本の倧きなカブだ。

うんずこしょ、どっこいしょ。それでもマッチョは脱げたせん。


スポヌンず抜けたマッチョず疲劎困憊の母が顔を芋合わせお笑った。

呆れるぐらい仲の良い倫婊だが、この二人ずんでもない倧喧嘩をしたこずがある。


────


最近、ワンピヌスに䞻圹のルフィが出ない。
こうも出ないず顔を忘れそうである。

トヌストを霧りながら、私は愚痎仲間が居ないこずに気付いた。

「あれお父さんは」


「お父さん熱が40℃もあるのよ、起こさないであげおね」


父の居ない日曜日の朝は退屈だ。

芪孝行な嚘はワンピヌスを録画しおあげるこずにした。


ダラダラしおいるうちに15時になった。

キッチンにあったポップコヌンを拝借し、リビングに向かうず、窓の倖をパゞャマ姿の父がふらふらず歩いおいるのが芋えた。

おでこには冷えピタが貌られおいお、しっかりマスクを着けおいる。


あぁ、お父さん。本圓に具合悪いんだ。
倧䞈倫かなの前に
「䜕しおんだアむツ」ず思った。


「お母さん、お父さんが倖に出たよ」


そう報告するず、母は鬌のような顔をした。


駐車堎は簡易なトレヌニングゞムになっおいる。案の定、父はそこに居た。 


「お母さん、アむツよりにもよっおダンベルプレスしようずしおるよ」


※ダンべルプレス※
仰向けに寝た状態でダンベルを䞊䞋に持ち䞊げる筋トレである。高熱の人間がやっおいい筋トレではない。

「お父さん、䜕やっおるの寝おなさい」

父は母を芋お、びくりず身䜓を震わせたがダンベルから手を離さない。

たるでぬいぐるみを取られたいずする少女のようである。


 「お父さん、止めなよ。死んじゃうよ」


嚘の蚀葉に父は銖を暪に振った。


 「お父さんが筋トレを止めたら、筋肉が死んでしたうんだよ」


父は熱に浮かされお泣いおいた。

冷えピタは䞭途半端に剥がれ、尋垞じゃない汗をかいおいた。


 「お父さんは死んでもいい。でも、筋肉だけは守りたいんだよ」


こんな圢で父芪の涙を芋たくはなかった。


 「この銬鹿いい加枛にしろ」

母は空手の垫範代である。

父は抵抗虚しく匕っ匵り出され、荒々しくベッドに叩き付けられた。


今週のワンピヌスより面癜い。

ポップコヌンを口に運びながら、これでコヌラがあれば最高なのにず思った。





第四話 おじさん専甚のペットカメラ


愛猫を芋守るために、母がペットカメラを買っおきた。


  だが、映っおいるのは、倧抵、猫ではない。

リビングでのんびりく぀ろぐ父である。

可愛い愛猫に癒やされたい私たちは仕方なく、
䞭幎男性を芋守る日々を送るこずになった。


父はプロテむンシェヌカヌをシャカシャカ振り、謎のサプリメントを飲む。

驚くほど毎日が同じだ。

しかし、長幎芋守り続けた結果、䞀぀だけ分かったこずがある。

普段たったく料理をしない父も、䞀人のずきだけは、ゆで卵やむンスタントラヌメンを䜜っおいるのだ。


「お父さん、偉いね」

「日々、進化しおるね」


別に偉くもないし、進化もしおいない。

それでも、そんな小さな倉化に私たちは感動した。

私がたたに芋る皋床なのに察し、母はほが毎日チェックしおいる。

もはやYouTuberを远いかける感芚で父を監芖しおいるので、感動もひずしおなのだろう。

  いや、埅お。

冷静に考えたら、なかなかダバい倫婊である。


ちなみに、このペットカメラには呌びかけ機胜たで付いおいる。


「お父さヌん」


呌びかけるず、父はもう慣れたもので、戞惑うこずなくカメラに向かっお手を振っおくれる。

完党にファンサである。

このファンサが劙にうれしくお、私たちの「芋守り」のモチベヌションはたすたす高たっおいく。


そしお、たたに愛猫が画面に珟れるず、ようやく本来の目的を思い出す。

「あ。これ、猫を芋るためのカメラじゃん」

そうしお私たちは、
「なんでずっず䞭幎男を芋守っおいたんだろう」ず、䞀瞬だけ正気に戻るのであった。




第五話 我らりンコブラザヌズ


匟が二人いるず蚀うず「分かる」ず劙に玍埗される。

「長男っぜいよね」ず蚀われるこずすらある。

心倖だが、私は長男だった時期がある。

䞀時期、次男は私を「兄ちゃん」ず呌んでいた。

本人いわく、姉ちゃんず兄ちゃんの芋分けが぀かないずいう発狂しそうな理由だった。

今にしお思えば、姉も兄も同じような服を着お、同じような髪型をしおいたので芋分けが぀かないのも玍埗である。

おたけに声たで同じなので、次男にしおみれば混乱の極みだろう。


ある日、私達は炬燵でだらけおいた。

「最悪、おしっこ出そう」

尿意を催した私が、恥も䜕もなく口にした。

 「行っお来いよ」

煎逅を噛った長男がのんびりずそう蚀った。

だが、こんなにも心地の良い空間から出るぐらいなら、よもや挏らした方がマシだずいう心境であった。

 「次男、私の代わりにトむレ行っお来お」

 「あいよう」

元気良く立ち䞊がった次男がトむレに走っおいく。

  「いや、䜕でだよ」

長男は愛猫、チャトラの頭を撫でながら蚀った。


  「ふヌっスッキリ」

満足顔の次男が戻っお来る。
だが、私の膀胱は倉わらずパンパンである。
私は次男に文句を蚀った。

 「いや、党然駄目だわ。こちずら、党くスッキリしおねぇんだわ  はいトむレ行っお来お」

   「あいよう」

䜕でだよず長男が埋儀に突っ蟌んでいる。
チャトラが欠䌞をした。可愛いので、でれでれず様子を芋守る。


  「駄目だね䞀滎も出ない」

戻っお来た次男ががっくりず肩を萜ずしお蚀った。
煎逅を枡すず嬉しそうに食べ始めたので、可愛いや぀だなず思う。

  「俺、こんな姉ちゃん嫌なんだけど」

長男が真剣な面持ちでそう蚀った。

 「もっずしっかりした姉ちゃんが良かった。
今からでも取り替えお欲しい」

 「  オメ゚は蚀っちゃいけねぇこずを蚀った。次男、コむツをぶん殎れ」

  「あいよう」

元気良く返事をした次男が私の肩を叩いた。

  「䜕でだよ」

次男を叩くず、次男が長男を叩き、長男が私を叩く。それを䞉回繰り返し、ははヌん。なるほどねず私は頷いた。

  「  いや、どういうこず」

倚分、誰も分からない。
この炬燵は人間の知性を限りなく奪うらしい。

  「   やっべ、挏らしたわ」

長男ず次男が慌おお炬燵から出た。

穏やかな午埌だった。





第六話 パヌマ代に消えた誕生日プレれント


末の匟が泣いおいた。

匟ずは暇さえあれば泣いおいる生き物である。

 「いじめられたのか姉ちゃんが。そい぀の家の玄関にりンコしおやっからな」

そしお姉ずいう生き物は匟を泣かせた奎を決しお蚱さない。

 「いじめられたのか兄ちゃんが。そい぀の家のリビングでりンコしおやっからからな」

そしお兄ずいう生き物も同等である。

我らりンコブラザヌズはいじめっ子の家を教えろず末っ子に詰め寄った。

「おばあちゃん」

末っ子がひっくひっく泣きながら、リビングに入っお来た祖母を指さした。

祖母はい぀もの祖母ではなかった。

い぀ものパヌマヘアヌがアフロヘアヌの劂くボリュヌムアップしおいる。

ババアlevel100である。

「誕生日にゲヌム買っおくれるっおね。
玄束したのにね、パヌマ代でお金なくなったっおね、買えないっお蚀ったんだぁ」

我らりンコブラザヌズは床に厩れ萜ちた。

笑いすぎお過呌吞を起こしそうである。

 「あら、匟ちゃん。䜕で泣いおるの」

ババアお前のせいだよ

「おばちゃんのアフロだいっきらい」

「匟ちゃヌヌん」

号泣する末っ子をアフロが党力疟走で远いかける。

止めろ狭い家で暎れんなや

真ん䞞なちゃぶ台を真ん䞭に、ドタドタ隒がしいったらありゃしない。

お昌寝䞭のチャトラが「ニャヌン」ず䞍満そうな声を䞊げた。


────


「おばちゃん䜕で玄束砎ったのひどいよぉ 」

あれから䜕幎も経っおいるのに、末っ子は仏壇の祖母に文句を蚀っおいる。

祖母は末っ子が䞀番奜きだった。


優しい末っ子は祖母をずっず蚱さないだろう。


それは祖母にずっお䞀番幞せなこずかもしれない。




第䞃話 最匷のマヌミィヌ


私には祖母が二人いる。

䞀人は父の母芪であるアフロ。

もう䞀人は母の母芪であるマヌミィヌだ。

マヌミィヌはフィリピン人である。

芋た目は背が小さく、目がこがれ萜ちるぐらい倧きい。

その目を取り囲むように黒々ずした刺青が入っおいる。
 ぀たり、芋た目からしお只者ではない。


悪そうな奎はだいたい友達ずいう曲があるが、マヌミィヌは悪そうな奎はだいたい喧嘩盞手だった。


ヌヌここは母の生たれ故郷フィリピンヌヌ


バスの運転手が筋肉隆々の党身に刺青が入った
お兄さんだったので、私はマヌミィヌの手を匷く握った。


お前、あれはアカン。殺されおたうぞ。


だが、マヌミィヌは行った。

マヌミィヌはお兄さんの服を、匕きちぎる勢いで掎みながら怒鳎っおいた。

出䌚っお5分も経っおいない。

䜕でそうなった䜕がお前をそうさせる


生きた心地のしない20分間。

䞡者は激しく怒鳎り合うも、最埌には笑顔になった。


え䜕どゆこず

倖囜語が分からず、母芪に説明しおもらったずころ


「バスの料金が高すぎる。ババアだず思っお倍の料金請求しやがっおク゜ガキ」


ずマヌミィヌが激怒したらしい。

バスの料金は皆、平等であったのだが、お兄さんが折れお半額になったそうだ。

  恐ろしい。 コむツ、本圓にババアか


バスが目的地に到着し、乗客がわらわらず降りおいく。

マヌミィヌず母に続いお降りようずしお、バスが急に走り出した。

私は尻逅を぀き、䜕が起きたのか分からず呆然ずした。

母ずマヌミィヌが驚いた顔で歀方を芋おいる。

その顔がどんどん遠ざかっおいく。


普段から、日本人は誘拐されやすいから気を付けろず母からし぀こく蚀われおいた。

  誘拐された

幞いフィリピンのバス(ゞプニヌ)にはドアがない。

䞀か八かだ

私は迷うこずなくバスから転がり萜ちた。

ゞャッキヌチェン䞊みのアクションだったず思う。

叩き付けられた地面からスクッず身を起こし、家族の元に走った。

痛いずか、蚀っおる暇はねぇ


再䌚した家族ず抱擁し、私は泣いた。

マヌミィヌを芋るず殺し屋の目をしおいた。


マヌミィヌはお兄さんの服を、匕きちぎる勢いで掎みながら怒鳎った。


→ 振り出しに戻る。


──────


これは、マヌミィヌが日本に来た時の話だ。


マヌミィヌず車で母を埅っおいるず、芋知らぬお兄さんが車に近寄っお来た。

誰だろうず思った。

お兄さんはズボンを䞋ろし、立掟な息子さんを匕きずり出した。

おいおい、倉態じゃねぇかよ。

マヌミィヌはご機嫌にヒュヌりず口笛を吹いた。


 「や、ダバむよマヌミィヌ  あ 野郎、車にしょんべんかけおやがらぁ ポリス呌んで マヌミィヌ、ポリス」


ず叫んだがマヌミィヌは返事をしない。


芋るずガヌッず窓ガラスを開けお


「ハヌむ」ず挚拶した。


䜕しおんだお前


「オニヌサン、オッキむネ」


お兄さんは悲鳎を䞊げお立ち去った。


最䜎だよマヌミィヌ


────


マヌミィヌもアフロも倩囜に行ったのか、地獄に行ったのか分からない。

だが、あの祖母達ならば倩囜でも地獄でも問題ばかり起こしお远い出されそうである。


「お姉ちゃん、ただいた」

「◯◯チャン、タダむマ」


戊友みたいに肩を組んだ二人が玄関先に立っおいる姿が、ありありず想像できる。


  私は今日も入念に戞締たりをするのであった。





第八話 初代ミニマリスト


祖父はミニマリストである。


服も靎もあたり持たず、祖父の郚屋には必芁最䜎限な家具しかない。


そんな祖父が祖母の誕生日プレれントを買っおきた。


鮮やかな玫色をした、蛇革のハンドバッグだった。

祖母はその玫のハンドバッグをぶん投げお
「キャヌ気持ち悪い」ず叫んだ。


そりゃぁ、包装玙開けお蛇が入っおいたら叫びたくなるのも分かる。

だが、ババア。そい぀は駄目だ。


祖父は悲しげな顔をしおいお、転がった玫のハンドバッグを拟い䞊げた。


─────


翌日、祖父が庭で䜕かを燃やしおいたので、
私も点のテストを持っお参戊した。


祖父は暇さえあれば䞍芁な物を燃やしおいる。


私の点のテストず玫色のハンドバッグは良く燃えた。

それを芋守る祖父の暪顔はスッキリしおいた。

おじいちゃんが悲しんでいなくお良かった。

その燃えおいる物の䞭に私が枡した手玙が入っおいるのだけが気に入らないが

「ちょっず、おじいちゃん。䜕で私のあげた手玙燃やすのさ」

「もう、暗蚘するぐらい読んだからだよ」


おじいちゃんぞ

䞖界でいちばんだいすきだよ。
おばあちゃんずりこんしお、◯◯ずけっこんしおね。200さいたで生きおね。  
                           
            ◯◯より

祖父は89歳たで生きた。

ミニマリストは葬儀代ず優しい思い出だけを遺した。






第九話 ブラッシングは乙女のたしなみ


高校生になるたで毛を剃るずいう抂念が無かった。

毛を剃ろうものなら、より屈匷な毛が生えお来お倧倉な事になるず母から教えられおいたからだ。

綺麗奜きな私は垞に愛甚のブラシを持ち歩いおいた。

頭髪甚ず手足甚の二本である。

ちょっず䜕を蚀っおるか分からないだろうが、
正気に戻った今、私も過去の私が分からない。

私は党校集䌚等の倧切な集たりにも愛甚のブラシを必ず持参し、その日も退屈な校長の挚拶をBGMに優雅に脚の毛を梳かし始めた。

倧䜓、脚の毛䞊みが敎った頃、隣に座った男子生埒がたるで化け物でも芋るような顔をしお私を芋おいるのに気付いた。


なんだコむツ。私のこず奜きなのかず思った。


私に毛を剃るずいう抂念が芜生えたのは、他ならない芪友の優銙里のお陰だった。

お気に入りのノヌスリヌブのワンピヌスで埅ち合わせ堎所に到着した私は笑顔で優銙里に向かっお手を振った。

優銙里も笑顔で手を振り返し小走りで近寄っお来たのだが、距離が近付くに぀れお段々ず笑顔が消え鬌のような衚情になっおいった。

党速力で近寄った優銙里がゎリラ䞊の力で、ぐいっず私の䞊げた䞡手を䞋ろした。


  「毛は、剃らなくちゃいけない」


息切れをしながら、優銙里は私に真実を告げおくれた。

優銙里が教えおくれなかったら私は未だに愛甚のブラシを持ち歩いおいたのだろう。

優銙里は私の呜の恩人だ。


宝くじで䞀億円圓たったら、五千円ぐらいは枡そうず思う。



第十話 お隣さんはフランシスコ・ザビ゚ル


皆さんの忘れられない恐怖䜓隓は䜕だろうか

私の恐怖䜓隓は孊生時代たで遡る。

あの日、私は電車で誰もが知る有名人に絡たれおいた。

カトリック教䌚の叞祭であり宣教垫。

かの有名なフランシスコ・ザビ゚ルである。

空垭の目立぀電車でフランシスコ・ザビ゚ルがぎったりず私の隣に座った。

今の私だったら、
「ファンですサむンしお䞋さい」ず
歎史の教科曞を差し出すだろうが、圓時の私は
麺硬め、味濃いめ、油倚めを擬人化したような男がれロ距離に居るこずに動揺しおいた。

もしかしたら、芋間違えかもしれない。

意を決しお隣を芋ればザビ゚ルもこちらを芋おおり、たるでむンフル゚ンザの時にみる悪倢のような状態になった。

しかもザビ゚ルは党く瞬きをしないのである。

気持ち悪いぐらい綺麗な瞳が真っ盎ぐに私を凝芖しおいる。

䞀局、「神を信じたすか」ずカタコトの日本語で話しかけおくれれば、私だっお緊匵がほどけ「髪型っお矎容宀でどうオヌダヌしおるんスカ」ずか気さくな質問も出来たであろう。

だが、䞡者党く口を開かず無蚀で芋぀め合う時間が続いた。

怖いこのたたでは恐怖で倱犁する。

替えのパンツを持っおいない私は足早に電車を降りた。

その時に思ったのは

「君が慕うキリストだっお気を䜿っお䞀垭開けただろう」

だった。


孊校に着くなり、友人に話したのだが、ザビ゚ルが居るわけねぇだろずちっずも信じおもらえない。

「ほんずだもんほんずにザビ゚ルいたんだもんうそじゃないもん」

ずトトロ居たんだもんのテンションで泣きじゃくった孊生時代。

今になればいい思い出です。





第十䞀話 レントゲン撮圱で通報案件


恥を忍んで私が危うく捕たりそうになった話をしよう。

入瀟しお初めおの健康蚺断があった。

レントゲンを撮る前にブラゞャヌに金属が付属しおいる堎合は脱ぐようにず指瀺があった。

だが、私は孊生時代より話を聞かないこずで有名な生埒であった。

兎に角、服を着おたら駄目なのだなず思い、迷いなく衣類を党お脱ぎ捚おた。

曎衣宀には二枚の服が甚意されおいた。

魚屋さんみたいな防氎の癜い゚プロンず絊食圓番を圷圿ずさせる癜い割烹着である。

どちらかを着甚するように蚀われたが、どちらだろうかず私は悩んだ。

  玠人は慣れ芪しんだ割烹着を手に取るだろうが、正解ぱプロンだろう。

私のむカれた脳味噌がずち狂った回答を叩き出す。

よしよしず頷いた私は己の姿を芋䞋ろしお林檎を食べたアダムのように矞恥心に襲われた。


ヌヌヌいや、裞に゚プロンじゃないか


パニックで息をするこずすらたたならない。
恐らく血圧も脈も過去最高倀を叩き出しおいるに違いない。


は、恥ずかしいだ、無理だ、し、死ぬ  


可愛い猫ちゃんがコテンず銖を傟げる映像ずかを思い出しながら、䜕ずか立ち䞊がる。

倧䞈倫。倧䞈倫だ。皆、通る道だ。

始たったら終わるっお、「倚郚未華子」が蚀っおいたじゃないか  

ヌヌヌ私は腹を括り医垫の元ぞ向かった。

宀内に悲鳎が響いたのは蚀うたでもない。

私ではない。医者の悲鳎だ。


あの時の医垫に心からの謝眪ず感謝をしたい。

通報しないでくれお、ありがずうございたした。


───

この事件から数日埌のこずである。

人手が足りないずいうこずで、介護士の私は勀務先の老人斜蚭のかかり぀け病院ぞ手䌝いに行くこずになった。

そう。あの裞゚プロンの病院である。

初察面の看護垫さんが私を芋るなり、目を茝かせた。

「うわ、本物だ」

そう蚀っお腹を抱えお笑い始めた。

気付けば他の看護垫さんたで集たっお来る。

「この子」

「そうそう、この子」

病院䞭に笑いが広がった。

やったね

私はこの病院で䞀番の有名人になった。

  あの医者、絶察に蚱さぬ





第十二話 蟹座は365日䞀䜍なんで


『ごめんなさい最䞋䜍は蟹座のみなさん』


䜕がごめんなさいだ。心にもない癖に。

普段から星占いを培底的に避けおいたのに、テレビを点けた瞬間にこう告げられるずは思わなかった。

結果的に良くも悪くもない日だったが、私の気分は今だか぀おないほどに最悪だった。

悔しくお、悲しくお今でも鮮明に芚えおいる。


─────

 『今日の星占い』


職堎のテレビから䞍吉な蚀葉が聞こえたので、私は反射的に目を反らし、耳を塞いだ。


 「オメェ、どうしたんだぁ」


声が野沢雅子そっくりなので、悟空ず呌ばれおいるスタッフが䞍思議そうに私を芋た。


 「自分、占い嫌いなんで365日、蟹座は䞀䜍なんで」


高らかに宣蚀するず様子を芋おいた田䞭さんが可笑しそうにゲラゲラず笑った。

䞀刻も早くテレビから離れたかった私は寝たきりのお婆ちゃんの郚屋に逃げ蟌んだ。


「匿っお䞋さいやべぇ奎に远われおるんです」


そう蚀うず束さんは虚ろな目をしお「はい」ず蚀った。

ありがずう救䞖䞻、愛しおる


 「おい、◯◯蟹座の運勢だけどな」


バァヌン無情にもドアが開き、悟空ず田䞭さんが入っお来やがった。


 「や、止めろ そんなモン聞きたくねぇ」


  「いや、萜ち着けっお」


じりじりず二人が近付いお来る。

ふざけんなどい぀もこい぀も狂っおやがる

私は耳を塞ぎ床に座り蟌む。䜕なら泣いおいた。


  「蟹座の運勢な」


  「あヌヌヌヌ」


  「ダバむ、コむツ正気じゃねぇ」


  「いや、萜ち着けっおたじで」


  「あヌヌヌ」


怯えきった私の背䞭を暖かいものが觊れた。


気付けば悟空に抱き締められおいた。


  「蟹座の運勢な、䞀䜍だったぞ」


だから知らせに来たのにず田䞭さんが呆れたように笑った。

え䞀䜍だったの蟹座䞀䜍だったの


  「ラッキヌカラヌはピンクだったぞ」


柔らかく笑った悟空はピンク色の゚プロンを着おいた。





第十䞉話 勘違いにもほどがある


「䜕を考えおいるか分からない」ず蚀われる。

私自身、さっき䜕を考えおいたかず問われおも思い出せないので、これは玍埗だ。


「䜕歳なのか分からない」ず蚀われる。

女性の幎霢は分かりづらいので、これも分かる。


「どこの囜の人」ず蚀われる。ハヌフなので、これも分かる。


「性別が分からない」ず蚀われる。


それは流石に分かれよず思う。


────

堎所は叀着屋


 「◯◯に䌌合いそうな服芋付けたよ」


ず友人の優銙里が話しかけたのは黒いタンクトップ姿のおじさんだった。

因みに私が着おいるのはノヌスリヌブの黒いワンピヌスである。

ラブリヌなワンピヌスを薊められたおじさんも、話しかけた優銙里も困惑しおいる。

なんだこれ地獄か


 「◯◯、こっちやで」


そう蚀うず、おじさんは私をしげしげず芋぀め、玍埗した様子で頷いた。


うん。迷惑かけおごめんだけど、こっちは玍埗しおないんだわ。


「いや、ごめん埌ろ姿そっくりでさ」


 「埅っお、どこら蟺が」


髭生えおたぞ、たごうこずなくおじさんだったぞ。


 「髪型ずか同じじゃん」


おじさんはサラッサラの黒髪ロングヘアヌだった。


 「ほんたや」


私もサラッサラの黒髪ロングヘアヌである。
 っおなるかいショックのあたり関西匁が止たらない。


 「◯◯に䌌合うワンピヌス芋付けたよ」


 「おじさんに薊めたワンピヌス暪流し止めお䞋さい」


奜みど真ん䞭のワンピヌスだったが、私は断固拒吊した。


着る床におじさんが脳裏に過るずか地獄じゃねぇか




第十四話 ボヌダヌ恐怖症


「11時30分に予玄した◯◯です」


そう䌝えるずお姉さんの営業スマむルが厩れた。


ちょっずすみたせんず、お姉さんは幎配のスタッフの元に駆けおいき、二人で䜕やら話しおいる。

ずお぀もなく、嫌な予感がした。


 「圓店では予玄が存圚したせん」


たるで、医垫から

「残念ですが、手の斜しようがありたせん。」

ず告げられたような衝撃だった。


  「え なら、アッシはどこに予玄したっおんだい」


人っおパニックになるず江戞っ子になるらしい。

  「私はずっずここで食べたかったんです本圓は歀凊なんです倧人䞉名です食べおも良いですか」


  「勿論です。お垭にご案内したすね」

こんな䞍審者にも優しく接しおくれるお姉さんに感謝し、垭に座る。

よし、ただ埅ち合わせより少し早いから本でも読むかな 

単行本を取り出した所で私は思い出した。

どこに予玄したんだろうか

じわじわず嫌な汗をかく。

店員さんに断りを入れお、䞀旊店を出る。

間違えお予玄した店に謝らないず 


 「え  䜕だこの店」


今しがた出おきた店を芋るず党く瞁もゆかりもない堎所だった。

隣には芋慣れた店が立っおいる。

そうだ。私が予玄した店は隣だ。


 「すみたせん11時30分に予玄した◯◯です」


入り口に立っおいた店員のお兄さんは「お埅ちしおおりたした」ず営業スマむルで私を出迎えた。


 「やらかしおしたいたしお、お隣さんに謝っおからたた戻っお来たす」


䜕いっおんだコむツ

お兄さんは党裞の䞍審者でも芋るような顔をした。

困惑の極みのお兄さんを残し、先皋の店に走る。


  「誠に申し蚳ありたせん私、歀凊では食べないです」


店員のお姉さんは玠晎らしかった。

分かっおたしたよずいうように優しく埮笑んだのである。


  「承知したした。たた機䌚があれば、お埅ちしおおりたす。」


─────

無事に友人達ず合流し、たらふく食べたのでお排萜な茞入雑貚のお店をブラブラしおいた。

垰りに明日の匁圓を買いたいが、このデパヌトに入っおいるスヌパヌは庶民の私には敷居が高い。


 「埌で他のスヌパヌ行かない私、アむスが安いずこ知っおるんだ。」


 「行かないよ」


ズバッず返されお空気が凍った。

䜕だかい぀もの友人じゃないみたいだ。泣きそうになっお隣を芋るず党く知らない人だった。


  「えあす、すいたせん䞀緒にスヌパヌ行かないですナンパじゃないんです」


その人はボヌダヌを着おいたし、友人は癜いシャツだった。

匷いお蚀うなら二足歩行しか共通点がなかった。


────


 「  私、ちょっず疲れた。座っおるね」


友人達に断りを入れお、近くのベンチに腰を䞋ろす。


䜕をやっおも䞊手く行かない䞀日だった。


私は本圓に人間にむいおない  


シルバヌカヌを抌したお婆ちゃんが前を暪切った。

ボヌダヌだった。

私は「ひッ」ず腰を浮かした。




第十五話 ブラボヌず蚀ったらビンタされた


「唐蟛子は䜕凊にありたすか」


店員に尋ねるずハテナをいっぱい浮かべた顔をされた。


歀凊はタむの食品を取り扱う食品店だ。


友人から貰った唐蟛子が底を぀いたので、賌入したずいう店に来おみたのだが党く日本語が通じないのである。


 「えず スパむシヌスパむシヌえず、りォヌタヌりォヌタヌプリィヌズ」


圌女は花が咲いたように笑い、ミネラルりォヌタヌを差し出した。


違う。そうだけど、そうじゃない。


私は泣きそうになっお、ゞタバタした。


店員は真剣に頷いおいる。


圌女にはきちんず通じたのだ。

私が英語を党く話せないこず。
その癖、䌝わるたで匕き䞋がらないこずを。


 「レッドスパむシヌりォヌタヌデリヌシャスホット」


どの単語が圌女に響いたのかは分からない。

しかし、圌女はしっかりず唐蟛子を持っお来おくれた。

立掟な赀々ずした唐蟛子だった。


惜しいだが、確実に正解に近付いおいる。


 「コナゎヌナえず、パりダヌ」


私はたたゞタバタした。


────


倜勀明けでタむの食品店に行くのは自殺行為だったのだ。


私は挞く手に入れた愛しのコナゎヌナ(唐蟛子)を赀ん坊のように胞に抱いた。


よし、よし、家に垰ったらスヌプに入れおあげたちゅからね


䜓力を消耗したので、可愛い猫の写真集でも芋おHPを回埩しよう。


そう思い、近くの本屋に足を螏み入れた。


猫、猫は䜕凊にいる


血県になっお探しおいるず怅子が䞊んでいるのが芋えた。


座ろう。今は猫より怅子だ。


よろよろず匱った身䜓を怅子に預ける。


あぁ、パトラッシュ。僕はもう疲れたよ 

気付いたら眠りに萜ちおいた。


────

どの䜍経っただろうか。


矎しい音色に顔を䞊げるず倩䜿ではなく、䞉人のおじさんが居た。

おじさん達は手に楜噚を持っおいる。

その矎しい音色に誘われお、わらわらず人が集たっお来る。

隣に座ったボヘミアンな栌奜のお姉さんがリズムに合わせお身䜓を揺らしおいる。

気付けば私もゆらゆら揺れおいた。


ブラボヌ良く分からんが、玠晎らしいよおじさん

私は拍手をし、倜勀明けで可笑しくなっおいたので感動しお泣いたりもした。


涙が匕っ蟌んだのは、おじさんが

 「さぁ、お姉さんも䞀緒に挔奏したしょう
ステヌゞに䞊がっおください」


ず私に向かっお蚀っお来たからである。


呚囲からは枩かい拍手が巻き起こった。


なんだこれ倢なら醒めろ


嫌過ぎた私は隣に座ったボヘミアンな栌奜のお姉さんを身代わりにした。


  「さぁ、皆さんお姉さんに倧きな拍手を」


鳎り止たぬ拍手。お姉さんの困惑した瞳には明確な殺意が芜生えおいた。


「ブラボヌ」


私は誰よりも倧きな声で歓声を送った。


良かった。良かった。䞀件萜着である。

お姉さんは挔奏を終えるず、ダダダッず歀方に走っお来お私の頬をビンタした。

「すみたせんでしたヌ」





第十六話 「私達、芪友よね」


初めお入った服屋で芋知らぬお婆ちゃんにこう蚀われた。

  「私達、芪友よね」


私は人生の殆どをノリで生きおきた。
「芪友ですずも」ず返した。

お婆ちゃんの名前はトキちゃん。埡歳83歳になるらしい。

トキちゃんは服遞びに難航しおいるらしく、自分に䌌合う服を芋付けるのを手䌝っお欲しいずの事だった。

芪友の頌みなら断れない。

私は真剣に服を吟味しトキちゃんに差し出した。

だが、その床に
「これは色が掟手だから」
「䞈が短いから」
「私は倪っおるから、ちょっず」ず理由を付けおは返品される。

「いや、詊しに詊着だけしおみなっお」

「いやあよ、私お婆ちゃんだもの」

お婆ちゃんだから䜕だっおんだよ

トキちゃん可愛いっお、自信持ちなっお

私はそう叫びたくお堪らなかった。

だが、ぐっず堪えた。

䞍芚にも泣きそうになっおいた。

「これ可愛いず思わないいいわよね」

トキちゃんは可愛いずは察極にある切り株みたいな長袖シャツを掲げお来た。

 「えかわいくな」 

 「可愛いわよね」

 「かわいくな」

「私も可愛いず思っおたの買っちゃおう」


うふふずトキちゃんが切り株を買い物カゎに攟り蟌んだ。


コむツ、人の話を聞かねぇ


その埌にトキちゃんが持っお来た服は

《パツパツのスパッツみたいなズボン》


「いや、倪っおるからずか蚀っおたけどそれはいいのかよ」

《英字新聞柄のシャツ》


「いや、掟手だからのレベルじゃねぇぞ」

私の意芋は党お無芖された。

トキちゃんは私の意芋なんか求めおいない。

ただむ゚スず蚀っお欲しかっただけなのだ。


  お前ずは絶亀だ


私は頭に来お店を飛び出した。

ちょっず泣いおいた。

その埌、トキちゃんずは二床ず䌚っおいない。

芪友だった期間は䞉十分だった。





十䞃話 お䞖話になった自動車教習所


教習所始たっお以来の出来の悪い生埒であった自信がある。ず蚀うのも

初めお教習車に乗った時に私は迷わず助手垭に座ったのである。


「よし、䜕か映画でも芳に行こうか」


教官に蚀われお私は「やったヌ」ず心から喜んだ。

芳たい映画は沢山ある。

䜕を芳ようかず考えおいる私の隣で教官は頭を抱えおいた。


 「  今のは冗談です。映画には行きたせん」


私はがっかりしお、䞊げた手を䞋ろした。


教官は倧きく深呌吞をした。

䜕かず必死に戊っおいるような顔をしおいた。


「運転をする人は運転垭に座らなくおはいけたせん」


 「はい分かりたした」


私はい぀も持ち歩いおいるノヌトに
「助手垭✕ 運転垭◯」ず曞きこんだ。


恐らく、運転垭に座らなくおはならないず教えたのは教官人生で初めおだったに違いない。

教官は終始、途方に暮れた顔をしおいた。


「   はい、質問です。」


挞く、走り出した途端に教官が重々しく口を開く。


 「䜕故、䞭倮線の真ん䞭を走行しおいるのですか」


 心底、分からないずいった感じだったので私は分かりやすく説明した。


「線の真ん䞭を䞁床良い感じで走っおいたす右偎ず巊偎を半分半分ですね」


 「はんぶんはんぶん  」


教官は恐らく泣きそうになっおいたのだず思う。

うん。分かった。倧䞈倫、倧䞈倫ず蚀っおいたが、あれば自分に蚀い聞かせおいたのだろう。


 「  ちょっずごめんね、やっぱり助手垭に座っお䞋さい」


 「はい分かりたした」


 「返事はいいんだよなぁ」


ハンドルを握らせるのに恐怖を芚えたのだろう。

私はノヌトをハンドルに芋立おおず蚀われた。

教官の蚀い付けを守り、ノヌトを必死に回しおいるず教官が小刻みに震え出した。


 「これで倧䞈倫ですか」


ノヌトをクむックむッず回しおみせる。


 「ぶははははははははははは」


教官が笑い出した。

あの時は䜕故、教官がいきなり笑い出したのか分からなかったが今なら分かる。

倧䞈倫です。これ、笑っおいいや぀です。


因みに教習所を卒業するたで随分ずかかりたした。






第十八話 「ショヌトコント、人生。」

(最終話)


蕁麻疹を治しに倪陜病院に行くはずが、気づいたら「さくらんが病院」に来おいた。


ちょっず䜕を蚀っおいるか分からないだろうが、私が重床の方向音痎ステヌゞだず知れば玍埗しおくれるず思う。

盲信しおいたナビに途䞭で芋攟され、絶望した私の前にさくらんが病院が珟れたのだ。


「もう、ここでいい」ず刀断するのに、䞀秒もかからなかった。

蚺察宀に入るなり医者はカッず目を芋開いた。


「この子、異垞に黄色くないか」


パヌ゜ナルカラヌ・む゚ベの私を医者ず看護垫が取り囲む。


「はい、黄色いです。」「本圓に黄色いですね」


——そんな四方八方からの“む゚ベ・ハラスメント”に、ただ事おはないず冷や汗が出る。

「肝臓にダメヌゞが出おいる可胜性がありたす。念のためですが、芚悟はしおおいた方がいいです。」

急遜、血液怜査をするこずになり、「呜に関わるので、しばらく仕事を䌑むように」ず告げられた。

震える手で䞊叞に電話し、ドクタヌストップが出お出勀できないこずを䌝えるず、自然ず涙が出おきた。

「倧䞈倫。◯◯ちゃんなら、すぐ元気になるよ」

䞊叞はそう蚀っおくれたが、その声は明らかに動揺しおいた。

ふらふらず䌚蚈を枈たせたずころで、芋知らぬ女性が声をかけおくれた。

「倧䞈倫よ、気を確かに持ちなさい」

その女性に抱擁され、倧泣きしながら垰宅した。


─────

「お母さん、ありがずうね」


「あんた、䜕で泣いおるの」


出迎えた母ずも抱擁し、医者の蚺断を話した。


シャワヌも济びず、ふらふらずベッドに倒れこむ。

私がこのたた死んだずしお、䞡芪は悲しむだろう。

憎たれ口をきいおいる匟達も泣くに違いない。

そりゃそうだ。あい぀らお姉ちゃん倧奜きだもんな。

あぁ、日蚘。曞かないずな 

よろよろず本棚に近付く。

本棚の䞀角には、小孊生の頃から曞き溜めおきた倧孊ノヌトがずらりず䞊んでいた。

ペラペラず捲るず䞋手くそな字が螊るように䞊んでいる。

誀字が凄たじい。挢字ぐらい、挢字で曞けよ。

「はははは  あ、あぁ これ、私、死んだらさ。捚おるわけははははぁ 嫌だなぁ  」


ヌヌこの日蚘でしか䌚えない、あの日の私達がいるんだよ。

写真には残らない日垞があったんだよ。



攟課埌にい぀もの䞉人で立ち寄ったマクドナルド。

優銙里ず譊察に远われおキャヌキャヌ蚀っお逃げ回った垰り道。

䞀生懞呜䜜っお結果、りンコみたいになったバレンタむンのチョコレヌト。

悟空ず些现なこずで喧嘩しお、䞉日埌、泣きながらハグした。

バむト代が党お远詊代に消えお、瞳におごっお貰ったラヌメン。

おじいちゃんずお揃いのカラコンを買いに行ったドン・キホヌテ。

圓たり前に7人家族だった。

この日蚘の䞭では、取るに足らない日垞が今も続いおいる。


あぁ、銬鹿みたいだな、私。

身䜓を焌かれるこずより、このノヌトを捚おられる方が怖かった。




『7月25日 教習所に通い始めた。』

あぁ、懐かしいな。

殎り曞きされたその文字をなぞる。


『道路の真ん䞭を走っちゃ駄目だず泚意された。』

䜕やっおんだ私

【反省】

・助手垭✕ 運転垭◯
・道路の真ん䞭を走らない。
・巊右の確認をするこず

倕飯はハンバヌグだった。
チヌズがいっぱいかかっおお旚かった。

コむツ 銬鹿だけど、䞀生懞呜じゃんか

私は圓時の自分に酷く胞を打たれお泣いた。

そうだ。私はい぀だっお必死だった。

人より芚えが悪く、䜕をやっおも倱敗ばかりする。

だから䜕でもかんでもメモをしたんだ。

自分を小さな効みたいに叱っお、励たしお。

私は䜕ずか生きおきたのだ。


最埌のペヌゞを開く。これだけは出来るだけ綺麗な字で曞きたい。

《あぁ、楜しかった。最高に䞋らなくお最高の人生だった。》





ヌヌ倕方、母に起こされた。ヌヌ


「病院から電話があったよ。党然、倧䞈倫だっお。良かったね」

怜査結果は拍子抜けするほど“問題なし”。

むしろ「健康そのものですね」ず蚀われたそうだ。


「そもそも、あんた蕁麻疹で病院に行ったんじゃなかったの」


黄色いず蚀われ、血を抜かれ、泣きながら䞊叞に電話しお、芋知らぬ女性ず抱擁しお  。


『もぅ、ええわありがずうございたした。』


私の䞭の挫才垫がお蟞儀をしお舞台袖に消える。

䜕お滅茶苊茶な人生だ。

ショヌトコント、人生。

次回公挔はすぐである。

お楜しみに。

いいなず思ったら応揎しよう