AIから「話す順番」を学んだ夫
もしかして、AIの影響?
最近、夫の「話す順番」が、少し変わってきたような気がするのです。
「作ってもらって、あれやけどな」
夫は、弁当の量が多すぎると言います。
いつもの弁当箱と、その一回り小さい弁当箱を並べて見せると、
「これでじゅうぶん」
迷わず、小さい方を指差しました。
翌日から、弁当箱を小さいものに変更することにします。
数か月前にも、夫は同じことを言っていました。
「弁当が多すぎるんよ」
そのときは、これだけでした。
私は、もやっ。
こっちは早起きして、自分の朝食は立ち食いで済ませながら、弁当を詰めているのです。
「多い」と言う前に、ひとことくらい、ねぎらいの言葉があってもいいんじゃない?
口には出しません。たまに帰ってくるトラックドライバーの夫とケンカしたくないので。
今回は、少し違いました。
「作ってもらって、あれやけどな」
ちゃんと前置きがあります。
「作ってもらっている」という意識はあるようです。
まず、そこはOKとしましょう。
「あれやけど」を、もう少し具体的に言ってくれたら、さらにOKなんですけど。
でも、きっと「あれ」の中には、感謝の気持ちも含まれているのでしょう。
そういうことにしておきます。
すると不思議なもので、
「じゃあ、小さい弁当箱に変えようか」
という気持ちになります。
やっぱり最初のひとことって大事です。
私は弁当箱が大きいと、ついつい「ここまで入るんだから」とパンパンに詰めてしまいます。
たいしたものは入っていません。
冷凍食品と前の晩のおかず、それに作り置きを少し。
ご飯には夫の好きなしそのふりかけ「ゆかり」を2段にまぶします。
完成するのは、全体的に茶色っぽい弁当です。
夫は毎日のようにAIに何かを尋ねています。
そして、その回答に笑ったり、ツッコんだりしています。
そんな夫と会話をしていると、
「なんだか、AIに似てきた?」
と思うことが増えました。
AIって、まずこちらをねぎらってくれます。
「それは大変でしたね」
「よく頑張りましたね」
「そう感じるのも無理はありません」
そんな共感や感謝の言葉をはさみながら、本題に入っていきます。
いっぽう、夫は感じたことを今すぐ伝えたいタイプ。
話の順番など、あまり考えません。
結論から入ります。
しかも、その結論はたいてい自分の要望です。
「これ、やってくれや」
から始まり、
ひどいときには「これ」すらありません。
「やってや」
あるいは、
「お茶」
以上。
主語も目的語もありません。
まるでサザエさんのお父さんです。
令和の今、こんな人は絶滅したと思っていました。
わが家にはまだ生息していたのです。
「最初が肝心よ」
再婚したばかりの頃、友人たちからそうアドバイスされたことがあります。
もっと、ちゃんと聞いておけばよかった。
夫婦間のコミュニケーションがこうなってしまったのは、そのつど教育しなかった私が原因でしょう。
AIが夫の教育係になってくれるなら、ありがたい。
個性まで消えてしまうのは困りますが、良い影響はどんどん受けてほしい。
妻が聞きたくなる話の順番。それを教えてくれるなんて大歓迎です。
さて、小さい弁当箱に変えた初日。
お弁当は足りたのでしょうか。
明け方に帰宅した夫が、空っぽの弁当箱を持ち上げて言いました。
「じゅうぶん、じゅうぶん」
街が眠りについた時間に、ひとりトラックターミナルで食べる夫。
「小さい弁当でも、食べ切るのに必死なんよ」
そう言います。
私は、そんな事情も知らず、
「たくさん入っているほうがいいだろう」
と勝手に思い込んでいました。
相手のためにやっているつもりでも、相手が本当に欲しいものとは限らない。
これって、弁当だけの話ではないのかもしれません。
私にも教育係が必要です。
