読書記録 【懲役病棟】 垣谷美雨
男性…9割、女性…1割
受刑者の割合だ。
男子刑務所であれば、刑の重さや犯罪の種類によって刑務所が分かれる。
しかし、女子刑務所は少ないので分けられず
交通事犯も殺人犯も万引き犯も同じ刑務所だという。
刑期の違いは精神に影響を及ぼす。
懲役30年と1、2年で出所できる者が同室…
たしかに空気が悪そうだ。
本作は女子刑務所の内情を、医師会から派遣された医師・香織と看護師・マリ江の視点で読者に見せていく。
香織が後輩から手渡された不思議な聴診器
──心の中が聞こえる
も、手伝って。
女性が犯罪に手を染める背景
一概には言えないかもしれないが
本作でも貧困やDV、ネグレクトなどが取り上げられている。
わたしが読んだ垣谷美雨さんの作品は、ほぼ女性側に立っている話だ。
男性社会の中、辛酸をなめてきた女性。
威張り散らす夫と別れたいと思う女性。
垣谷さんは、そんな女性たちの代弁者のような気がする。
罪を犯した女性たちも同じ。
430円の惣菜を万引き。
子どもにまで暴力を振るう、どこまでも追いかけてくる夫を殺害。
はじめて優しくされたと男性に勧められるまま、覚醒剤に手を出してしまう女性。
医師・香織は、派遣される前どうせ刑務所に入るような奴は腐った連中ばかりだ、と偏見の目で見ていた。
努力が足りないんだ、人生は努力次第で何とかなるのだから、と。
刑務所内を実際見て
その思いに違和感が湧き上がる。
そして、受刑者たちの心の声を、聴診器を通して聞くうちに見方を変えていくようになる。
彼女たちは特別悪人じゃない
境遇が夫が親が酷すぎたのだ
看護師・マリ江と共に
「何とかしてあげたい」
「どうにかならないか」と行動に起こしていく。
そして、彼女たちが再び犯罪を起こさないように、と。
そのすべてが解決していく展開は
いい意味で小説的だ。
エンタメ要素が強く読後感もいい。
だから、普段目を向けない受刑者の実情や刑務官という仕事も現実味を持って、頭に入ってくる。
文庫本の解説は、元厚生労働事務次官の村木厚子さん。
創設された「拘禁刑」のことに触れている。
刑務所は受刑者を「懲らしめ」のために労働させる場所ではなく、その人が更生する、やり直すために働いたり教育を受けたりする場所になる。
やり直せるのなら、やり直した方がいい。
人生は一度きりでその人のものだから。
もちろん、誰もが…となると複雑なところはある。
でも…
悪い流れではないと思う。
また、色々な思いが頭の中を巡った。
ニュースを見る目も少し変わってきそうだ。
