短編アメリカンホラーストーリー『フォロワー』
フォロワーが一人増えていた。
アマンダはその通知を、特に気にしなかった。インスタグラムのアカウントは三年前から運営している。日常の写真を投稿する、ごく普通のアカウントだ。フォロワーは四百人ほど。見知らぬ人がフォローしてくることは珍しくない。
ただ、そのアカウントには何もなかった。
プロフィール写真は設定されていない。投稿もゼロ。フォロー中もゼロ。フォロワーもゼロ。ユーザー名は「user_00119」。
スパムだろう、と思ってブロックした。
翌日、また増えていた。
「user_00120」。同じだった。プロフィールなし、投稿なし、フォローなし。
またブロックした。
三日目、「user_00121」。
アマンダはパターンに気づいた。連番だ。毎日一つずつ増えている。試しに「user_00118」を検索した。存在した。「user_00117」も。「user_00001」まで遡ると、全て同じ形式のアカウントだった。プロフィールなし、投稿なし。ただ、フォロワーの欄に一つだけアカウントが入っていた。
全員、アマンダをフォローしていた。
百十九のアカウントが、全員。
気持ちが悪かった。全てブロックした。アカウントの設定を非公開に変えた。
それで終わりだと思っていた。
一週間後、友人のサラから連絡が来た。
「ねえ、あなたのアカウント、最近投稿した?」
「してないけど、なんで?」
「昨日、あなたのアカウントから写真に『いいね』がついて。でもあなたの投稿は全部消えてるし、アカウントが見つからなくて」
アマンダはログインした。
アカウントは存在していた。非公開のままだ。投稿も全部ある。「いいね」した覚えはない。
アクティビティのログを確認した。
昨夜、午前三時十四分。サラの投稿に「いいね」がついていた。
アマンダはその時間、眠っていた。
パスワードを変えた。二段階認証を設定した。
三日後、また連絡が来た。今度は別の友人、ケリーからだった。
「深夜にDM来てたんだけど……アマンダ、大丈夫?」
「何て書いてあった?」
少し間があった。
「『見てるよ』って」
アマンダはDMの送信履歴を確認した。ケリーへのメッセージが残っていた。午前三時十四分。
同じ時間だ。
アマンダはスマートフォンを置いた。考えた。アカウントが乗っ取られている。それだけだ。でも二段階認証を設定した後でも、同じ時間に操作されている。
もう一度、ブロックしたはずのアカウントを検索した。
「user_00001」から「user_00121」まで、全員、ブロックされていなかった。
そして全員、三日前から投稿を始めていた。
写真だった。
アマンダの家の写真だった。
外から撮られた写真。リビングの窓越しに、室内が写っている。キッチンの窓から、夕食の様子が写っている。寝室の窓から、眠るアマンダが写っている。
全て、深夜三時十四分に投稿されていた。
アマンダは立ち上がって、窓のカーテンを全て閉めた。
スマートフォンが光った。
通知が来た。
「user_00122があなたをフォローしました」
アマンダはカーテンの隙間から外を見た。
暗い庭に、人影があった。
スマートフォンを持って、こちらを向いていた。
