「まだ相談するほどじゃない」と思っている経営者へ
「利益は出ているはずなのに、なぜかお金が残らないんです」
経営相談をしていると、こんな話から始まることがあります。
何かがおかしい。
でも、何がおかしいのかは、うまく説明できない。
数字なのか。社員なのか。営業なのか。それとも自分の判断なのか。
はっきりした問題は見つかっていないけれど、なんとなく違和感がある。
私は、経営相談って、むしろそんなところから始まるものだと思っています。
「もう少し自分で整理してから相談します」
と言われることもあります。
でも、必ずしも整理してから来る必要はありません。
最初に「これが問題だ」と思っていることが、本当に考えるべき問題とは限らないからです。
「社員の問題」だと思っていた
ある相談では、
「社員が思ったように動いてくれない」
という話から始まりました。
一見すると、人の問題です。
ところが話を聞いていくと、違うものが見えてきました。
長い時間をかけて現場に仕事や判断が委ねられた結果、「誰が、何を、どこまで判断するのか」が曖昧になり、経営側からも現場が見えにくくなっていたのです。
だとすれば、社員の意識だけを変えようとしても解決しません。
仕事はどう流れているのか。
どこで情報が止まっているのか。
誰が何を判断しているのか。
「社員が動かない」は問題そのものではなく、問題が表面に出てきた「症状」だったのかもしれません。
利益が出ているのに、お金がない
数字でも同じことがあります。
「利益は出ているはずなのに、お金がない」
話を聞いてみると、P/Lの利益と実際のお金の動きが、頭の中で混ざっていました。
そこで、P/Lと資金繰り表を実際に作ってもらい、何度か一緒に数字を確認しました。
しばらくして、
「今まで聞いていた話が、ようやく腹落ちしました」
と言われました。
知識がなかったわけではありません。説明も受けていた。
でも、
「知っていること」と「自分の会社の経営として理解できていること」は違います。
一度つながれば、次からは自分で数字を見て考えられるようになります。
私は、それが大事だと思っています。
「それならAIに相談すればいい」のか
今なら、
「AIに相談すればいいのでは?」
と思う方もいるでしょう。
私もAIを使います。とても便利な道具です。
ただ、事業計画を見ていて怖いと思うことがあります。
売上が増えて、費用を引いて、数年後には利益が出る。
数字としてはきれいです。
でも、
「その売上、本当にその時期に現金になるのか」
「売上が立つまでに、いくらお金が出ていくのか」
「営業キャッシュフローは本当にそこまで生まれるのか」
「売上が計画の半分だったらどうなるのか」
「そもそも予定通り売れなくても、立ち上げられるだけの資金はあるのか」
まで考える必要があります。
事業計画上は黒字なのに、途中でお金がなくなる。
これは普通に起こり得ます。
AIが悪いという話ではありません。
AIは、与えられた前提や問いをもとに答えを作ってくれます。
でも、
「そもそも、その前提を疑わなくていいのか」
という問いは残ります。
売上計画を疑う。
入金時期を確認する。
必要な運転資金を見る。
想定より売れなかった場合も考える。
そして、
「この事業を始めても、会社は死なないか」
まで考える。
AIを使うことと、経営判断をAIに委ねることは同じではありません。
むしろAIが便利になるほど、何を問い、何を疑い、最後に何を自分で決めるのかが重要になると思っています。
答えではなく、「次に何をするか」を整理する
だから私は、相談を受けたとき、
「この質問にどう答えようか」
から考えることはあまりありません。
それよりも、
この人は、結局何に悩んでいるのか。
本当は、どんな状態になりたいのか。
を考えます。
事実と解釈を分ける。
分かっていることと、分かっていないことを分ける。
変えられることと、変えられないことを分ける。
そして、本当に考えるべきことを探す。
私が最初の60分でやっているのも、まさにこの整理です。
最近お話しした方から、
「次に何をすればいいか明確になりました」
と言われました。
別の方からは、
「背中を押してくれてありがとう」
と言われました。
私が答えを決める必要はありません。
何を確認し、何を考え、次に何をするのか。
そこまで整理できれば、最後に決めるのは経営者自身です。
その違和感、大事にしてください
「こんなことで相談していいのかな」
と思っている方には、
その違和感を大事にしてください。
と伝えています。
「なんとなくおかしい」
「このままでいい気がしない」
まだ問題として表面化していなくても、その小さな違和感の先に、大きな経営課題が隠れていることがあります。
問題が大きくなるほど、取れる選択肢は少なくなります。
逆に、小さいうちなら打てる手は多い。
何を相談すればいいのか、まだ分からない。
それでも構いません。
その違和感が何なのかを整理するところから、経営相談は始まります。
経営の整理60分
「相談したいこと自体が、まだ整理できていない」
そんな経営者の方に、初回60分の「経営の整理」を行っています。
答えをお渡しする場ではありません。
今感じている違和感から、本当に考えるべきこと、足りない情報、残っている選択肢、リスク、そして次に何をするのかを一緒に整理します。
「まだ相談するほどではないかもしれない」という段階でも大丈夫です。
むしろ、小さな違和感のうちに整理した方が、打てる手は多く残っています。
詳しくは、プロフィールまたはホームページの「経営の整理60分」からご覧ください。
※この記事は、これまでの複数の経営相談・支援経験をもとに、経営上よく見られる構造を伝える目的で再構成しています。守秘義務およびプライバシー保護のため、業種・企業規模・時期・人物関係・相談内容・経緯などを変更・抽象化し、複数の事例を組み合わせています。特定の企業・個人の事例をそのまま紹介したものではありません。
熊谷 篤
実戦経営アドバイザー/中小企業診断士
事業承継後の後継者、第二創業、新規事業責任者を中心に、経営者の意思決定整理と実行接続を支援しています。
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