読書📚2026年7月に読んだ本||流浪の月|52ヘルツのクジラたち|まどろみの星たち|存在の耐えられない愛おしさ 他
疲れて早く寝てしまう日も多かったけど、読みたかった本を順調に消化できました!
タイトルやあらすじから受ける印象と、読んでみた感想が違うものが多かった。やっぱり、読んでみるって大事だなと思った。
存在の耐えられない愛おしさ/伊藤亜和
noteに書いていたエッセイが注目され、最初に出版社されたのが、本書。
アフリカ系の父をもつハーフの著者のエッセイは、もちろんそのルーツに関わるマイノリティな話題も、面白さのひとつではある。
だけどタイトルに「愛おしさ」とあるとおり、全編に渡って、家族、友人、元恋人への温かい愛がえがかれているなあ、と感じる。
なんでもないような、でもちょっとヘンテコな日常の中に「かけがえのない今」「伝えたくても伝えることのない愛」が現れている。そこに共感する。
また、ご本人は「自分の精神を分析するような内容だとかなり(書くのが)苦しい」と語っているが、そういう内容は、読んでいて面白い。自分とは違うな、ここは解るな、と感じるから。それがエッセイを読む醍醐味であると思う。
巻末のジェーン・スーさんとの対談もすごく面白かった。素人ながら文章を書き続けようとしている私にとって、心に残る言葉がたくさんあった。
まどろみの星たち/菰野江名
24時間こどもを預かる認可保育園のお話。保育士の主人公、内海文乃の視点から、それぞれの環境で懸命に生きる子どもたちと、その保護者、そして保育士の先生たちが描かれる。
夜のコンビニでバイトする外国人、夜の繁華街で働く母親、医師と看護師の夫婦、さまざまな親が、子どもを預けにくる。
私も末娘をいま保育園に預けている。保育園の先生やスタッフの方々の細やかな気配りは、感じているつもりだったが、保護者が思っている以上に、手をかけて、気を使って保育してくださってるものだと知った。
本作を読んでから、私は連絡帳アプリをいつもより丁寧に書いている。
私は、共働きでないと家計が苦しいので働いているが、それを別にしたとしても、外で働きたいと思っている。
社会でたくさんの人に会って話をしたり、言葉や表情というかたちで感謝の報酬をもらえるのが嬉しい。グループでの仕事は、成功の喜びを分かち合える。家事や育児は、それはそれでしなくてはならない重要な仕事だが、わかりやすい形での報酬がもらいにくい。
誰だったか「家事はマイナスをゼロにする仕事。ゼロになって、当たり前に生活が回っていると感謝されにくい」と言っていたことを、ずっと覚えている。
汚れたものを洗濯掃除する。空腹をみたす。消費したものを買ってくる。できてもあまり評価されない、むしろやらないと文句を言われる。育児休業のとき、子どもと過ごせた時間は嬉しかったけど、後半になると「外で評価されたい、刺激を受けたい」と思ってしまった。
私は、「ずっとお母さん」は苦しい。「ずっと会社員」も苦しい。でも、交互にスイッチしながら生きると、どちらもより集中して頑張れる気がしている。
私が働かなくても、明日すぐに食べ物に困るわけではない。本作に登場する親たちほど、ギリギリで生きている訳ではない。
でも「私が私らしく健康に」「子どもたちも健やかに」暮らしていくためには、保育園で子どもを預かってもらうことは絶対に必要だ。
「保育所って(中略)働いて生きるための、手段なのよ」
保育園の先生たちがいるから、安心して仕事に行けます。ありがとうございます。
文乃と、杏子さんの食事シーンが各章に登場するが、とても美味しそう。
食べること、眠ることが、丁寧に描かれた小説だと感じる。どちらも生きることの基本で、子どもにも大人にも大切なものだ。
まず良識をみじん切りにします/浅倉秋成
理性のブレーキを壊して妄想をどこまでも暴走させたような、奇妙な、5つの短編が収められている。
復讐するため完璧なデスゲームの舞台を作り上げる男。
果てしなく行列が伸びていくクロワッサン店と翻弄される女性。
閉じこもり出てこない花嫁と原因を押し付け合う招待客。
味方を裏切り試合破壊行動を起こす野球選手。
子どもの名付けにな悩みまくる父親。
どれも当人たちは真剣で、だからこそ外野には滑稽で、また空恐ろしく感じられる。
パニックが加速していく様子がコントじみて、逆に面白い。
高校生のとき漫才をしていてM1甲子園にも出場している筆者は、漫才を題材にした漫画を「ショーハショーテン!」(すごく面白い、大好きな作品!)の原作もしている。その笑いのセンスや技術を尖らせて書いている感じがした。
ひとつひとつが面白く、考えされられるテーマもわかりやすいと思う。
私のお気に入りは「行列のできるクロワッサン」。
行列が伸びすぎて、並ぶことはもはや登山にいくような苦難の道のりである。割り込む暴漢に備え、保険まで普及している。こんなことある訳ない、ファンタジーな設定だが、行列に翻弄される人々や世間はすごくリアルだ。
また、「花嫁が戻らない」では、花嫁が閉じこもって出てこなくなった理由を「お前のせいだ」と責任を押し付け合う。飛び交う「理由」の中に、自分にも心当たりある言葉を見つけドキッとする。
どの話も「私も当てはまるかも」と思う一瞬がある。気になった話から読んでみて欲しい。
流浪の月/凪良ゆう
家族でも恋人でもない、友達とも違う二人の絆が、あたたかく切実で切ない。
両親をうしない、預けられた親戚の家もつらく、公園で過ごしていた9歳の更紗。19歳の文と出会い、許されないと知りながら、二人だけの生活を始めてしまう。
そして、二人の暮らしを知った世間が貼ったレッテルは「小児性愛の犯罪者」と「その被害者」。二人はただ、一緒にご飯をたべ、眠り、映画を見て過ごしただけなのに。
この物語のテーマは「見ているものと真実は違うかもしれない」「真実は当事者にしかわからない」ということだろう。
だけど、それよりも、更紗と文がお互いを求め合う切実さが心に迫り、余韻を残す。恋愛ではないのに、重厚なラブストーリーを読んだような読後感だった。
恋愛でも、家族でも、どちらでもなくても、求め合う二人の物語というのは、いいものです。
タイトルの「流浪の月」について。更紗と文、最初は生きる道しるべを失い、さまよっていた。そして最後も別の意味で流浪の民になる。どちらも流浪のなんだけど、最初は欠けているところのあった二人が、満ちたというところが「月」なんだろうな、と解釈した。どうでしょうか?
ドミノ/恩田陸
群像劇だいすき!
さまざまな人物の視点で物語が描かれ、ラストで一つに収束していく様が好きな人は、少なくないと思う。私もそうだ。
この「ドミノ」はすごい。関係する人物が27人(+1匹)も登場する。多すぎて混乱しそう、と敬遠したくなるかもしれない。でも大丈夫、この人たちはとても個性的だから、読んでいるうちにすんなり頭にはいってくる。
決算直前に契約書を滑り込ませたい保険会社の面々、子役の女の子たち、ミステリ好きの学生たち、爆弾魔たち、元警察官たち、訳あり美男美女などが入り乱れて、大混乱を巻き起こすさまは、まさにドミノ。
私は、加藤えり子さんの暴走(文字通り)がすごすぎて笑ってしまった。子役の少女たちが一番大人びていたのも面白い。
恩田陸さんの本は「蜜蜂と遠雷」「祝祭と予感」しか読んだことがなく、こんなにコミカルな小説も書かれるんだ!と嬉しい発見だった。
気楽に楽しめる面白い小説!
52ヘルツのクジラたち/町田そのこ
小説を読む前には、ある程度の心づもりがあると思う。
この小説は、タイトルと装丁が優しげだったので「そして、バトンは渡された」のような、ほんわかした話かと思って読み始めた。
ところが、実際はとてもつらい描写の多い小説だった。主人公の貴瑚と、彼女が出会う少年がどちらも親に虐待されている。運命に翻弄され、大切に思いあった人とも、一緒にいることが叶わない。
つらい過去があるからこそ、支え合える人との出会いが喜びに、そして成長が感動になる。そのカタルシスはたしかにある。ラストも気持ちいいものだった。
でも私には、つらい気持ちの方が大きい。これは小説だけど、現実に虐待をうけている人も少なからずいる。そうしたときに、これをエンタメとして楽しむことに、罪悪感を覚えてしまう。
こういう経験はなく、能天気に生きてきたことに、なんだか居心地の悪さを感じてしまう。べつに、それは悪いことじゃないのにね。
貴瑚が少年を助けたいと思い行動したときに、それに影響されて、優しい人たちの愛情が連鎖していくのは、とてもいいなと思えた。虐待があるのも本当だけど、こういう優しさの繋がりがあるのも、本当だと思う。
本屋大賞1位を受賞したのも、小説として面白いのは勿論あるけど、つらい境遇の人に「52ヘルツのクジラの声が届いて欲しい」という、書店員さんたちの願いだったかもしれない。
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