NHS03-appraisal

NHSの6月はappraisal seasonであるが、イギリスに来た当初はappraisalが何なのか分からなかった。日本にはない風習だからである。今日はそのappraisalについて書いてみようと思う。


(1) appraisalとは何か?

appraisalはジーニアス英和辞典を引くと、評価、査定とある。しかし、Longman英英辞典を引くともう少し詳しく説明してくれており、a meeting between a manager and a worker to discuss the quality of someone's work and how well they do their jobとある。これをNHSの形に落とし込むと、1年間の医師の診療実績に問題がないか、appraiser (Longmanの解説であるa manager、評価者) と協議する会議である。日本で言うと、専門医の更新に向けた単位獲得に近い。日本だと学会への出席時に専門医カードをタッチしたり、学会発表/論文執筆、学会誌の後ろの方の問題を解いたり、最近だと院内感染や倫理などの講習を受けたりして、5年間で〜〜単位を取得し、専門医を更新する流れである。イギリスではこの単位獲得 (CPD, continuous professional developmentと呼ばれる) に加えて、年1回の会議 (appraisal meeting) を行わなければいけない。尚、初期研修医 (foundation year doctor) や専門研修医 (trainee) は ARCP (annual review of competence progression) と呼ばれる、研修がしっかり行われているかという会議を代わりに行う。

このappraisalは病院が主導して行われ、このappraisalを基に5年に一度、revalidationといわれるappraisalの大きなバージョンをGMCに行う。このrevalidationを行わなければイギリスで医師免許 (a doctor's licence to practice) を継続して保持することができない(日本では医師免許自体は一度取得すれば更新はない)。そのためappraisalは正直面倒臭いものの、自身の医師免許に関わることなので、apparaisal meetingを受けなければいけない。

(2) appraisal meetingまでに準備するもの

Medical Appraisal Guide 2022を読むと、meetingまでに (i) personal information, (ii) scope and nature of work, (iii) supporting information, (iv) review of the previous personal development plan, (v) challenges, achievements and aspirationsをappraiserにinputすることになっている。

(i) personal information
 これは主に経歴(大学卒業年次の他、PhDや専門医をもっているかなど)である。

(ii) scope and nature of work
 これは職探しのときの案内や入職時のjob plan meetingで決められているのでそれをコピペすればよい。臨床医であれば、主に臨床の内容(±教育や研究)を書けば良い。

(iii) supporting information
 ここが分かりづらく、日本ではない概念である。
(iii-1) datix
 病院によってはin phaseと呼ばれるが、要はインシデントレポートのことである。datixの担当部署に自分が関わったdatixがないか問い合わせをする。私はこの1.5年で何回かdatixの対象になったが、大きいものでなければ特に何も言われないようである。割と重大なものの場合はその件についてappraiserと話し合う必要があるのだと思う。
(iii-2) mandatory training/ESR training
 ESRはelectronic staff recordのことで、給与明細などが見られるシステムのことであるが、この中に院内で受講しなければいけない講習が含まれている。BLS (basic life support)、院内感染、学習障害/知的障害者の対応など、多くは全医療従事者を対象にした講習である。ほとんどはオンラインで受講できるが、BLSなど一部は対面で受講しなければいけない。appraisal meetingまでにこの必須講習を100%受講完了にしなければいけない。
(iii-3) Audits / reflective piece of an aspect of your work
 auditとは自身や自施設の手術/診療成績が(イギリス)国内の基準と比較して良いか悪いかの統計を出すことである。最低2つのauditをしなければいけないが、眼科の場合1つは(白内障手術を行っている場合は)自身の白内障手術の成績(主に破嚢率)である。もう一つは何でもいいのだが、例えば網膜硝子体手術を専門にしている場合はイギリス国内の基準として集計しているのが網膜剥離の復位率と黄斑円孔の閉鎖率なのでそれらを集計するのが良いと思う。あるいはquality improvement projectといい、例えば外来の待ち時間を減らすために行ったこと、患者満足度を上げるために行ったこと、などを提出することもできる。この場合もmeasurable、つまり介入の前後で数字がどれくらい増減したことを示すのが大切である。
(iii-4) CPD points
 continuous professional developmentのことで、日本で言う学会の単位である。1時間=1単位である。Royal College of Ophthalmologistsのannual meetingやサブスペの学会のmeetingの他、院内勉強会、院内での発表/teaching、試験に向けた勉強時間などもカウントされる。seminar, lecture, meetingなどに出席すると必ずcertificate (参加証明書) を発行してくれるのでそれを添付する。目安としては1年に50 CPD points以上である(CPDはさらに細くA, B, C, Dと分かれている)。日本のように最初の数年で単位を取り切るというのは一般的ではないが、カウントしてくれる項目も多いので、病院で普通に働き学会に数回行けばpointは獲得できる。尚、イギリスの学会参加費は日本よりも大分高いものの、多くはstudy budgetでカバーされるので病院に問い合わせることが大事である。
(iii-5) 360 degrees feedback from colleagues and patients
 院内で一緒に働く人と患者さんからのフィードバックをもらう。これは毎年やる必要はなく、最低5年に一度のrevalidationに合わせて行う。colleagueには同僚の医師の他、上司のconsultantや部下のtraineeやFY doctor、また看護師や看護助手、orthoptist (視能訓練士)の人たちも含まれる。専用のサイトを使って、colleagueたちにメールを送ると自動的に集計されてレポートが自動作成される。また患者さんにも「納得して治療を受けられましたか?」などの質問項目が記載された紙やQRコードを渡し記入してもらう。また、このときに以前のnoteでも述べた、thank you cardを添付するとevidenceレベルが上がる。

(iv) review of the previous personal development plan (PDP)
(v) challenges, achievements and aspirations
 PDPはこの1年間に行いたい目標のことで、最低2つ以上記載しなければいけない。この際、measureableかつachievableに書く必要がある。appraisal meetingで記載したPDPは次の年に達成できたかどうか聞かれるので、基本的には達成可能な目標を書くべきである。例えば、院内でteachingを行うとか、白内障手術を100例自身で行うとか、〜〜の事項についてauditを行うなどである。外科系だと手術件数など数字で示せる項目が多いのでこの点は楽かもしれない。

(3) appraisal meeting

上記を専用のサイトからアップロードし事前にappraiserに送り、meeting当日これをappraiserと確認する。私はまだnon-consultant gradeなためそこまで突っ込んだ質問はされないのと、今年1年のPDPは専門医試験 (FRCOphth) に向けて努力する、だったので、体裁は少し整える程度で終了することができた。

正直ここまでしなくても、ちゃんと働いているかどうかはわかるでしょ、と思うのであるが、appraisalやjob interviewなどを経験すると、イギリスでは何を軸に評価されるのか、というのが良くわかるようになる。どうしても日本だと"お上"のお目にかなうかどうかで医局人事等が・・・(以下略)なので、公平に人を評価すると言う意味では理にかなっているのかもしれない。


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