『化学物質過敏症を「悪化」させない』家族・友人・隣人のシンプルな関わりかた 「はじめに」より
はじめに
一緒に生きている人たちの苦境
ある日、突然でした。
同僚が私の横を通ったときのこと。
ふと、よい香りがして、その瞬間舌の先に痺れを感じました。
退社の時間も近く、何気に壁の時計を見たことも覚えています。
そして、「化学物質過敏症」を発症し10 年が過ぎました。
出版社に勤めていたこともあり、沢山の発症者からお電話やお手紙
をいただき、実際にお目にかかり、さまざまなものを失った日々を伺
いました。
まさに、苦境。
私も化学物質過敏症を発症しなければ……という月日を過ごしてき
ました。
同時に、思いもよらぬ人から手を差しのべられ、同僚、友人、そし
て家族たちの大きな支えもあって、今日まで生きてくることができま
した。
さらに幸いだったのは、仕事上でお世話になっていた医師、研究者
たちに、現実的で親身なアドバイスやレクチャーをいただけたことで
した。
もちろん、去っていった人たちもいました。空気に関わる問題は簡
単ではありません。
私自身も持て余すような症状や暮らしを、一緒に生きてくれた人が
いた。
それは何よりの特効薬であり、頓服でもあったことを、いま実感しています。
そして、支えてくれた家族・同僚・友人・近隣の人たちもまた、当
事者にはない苦労や悩みがあるだろうなあと思うようになりました。
いまもなお、迷いながら悩みながら、化学物質過敏症発症者を支え
る方たちがいます。
正直、本当は「まだ、理解しがたい」と心で思っている人たちもいます。
でも、化学物質過敏症を発症したのは、家族だから、隣人だから、
友人だから、仕事で関わる人だから……なにか、できる限りのことは
したい。
そして、今後も増え続け、出会うことも多くなるから。
なんとか、理解をしていきたい。
そう思っておられる方も少なからずおられると思います。
この本が、もうあと一歩、「化学物質過敏症」という症状や暮らし
を理解したい、と願う人たちの一助になれば幸いです。
以上「はじめに」より全文転載。
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筆者 マツダ・ヒロミ
1980年代より教育、労働問題の書籍を手がけ、1990年代小児科医・毛利子来氏らと子育てBOOK〈ちいさい・おおきい・よわい・つよい〉〈おそい・はやい・ひくい・たかい〉をジャパンマシニスト社にて、創刊プロデュース。『ち・お』初代編集長。
2014年2月化学物質過敏症発症。その後10作の化学物質過敏症、香害をテーマにした書籍の編集刊行に関わる。2019年第35回「梓会出版文化賞」受賞。
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