2000年前にも、「夏に子どもを勉強させすぎじゃない?」と言う大人がいた。
先日、
5歳の子どもを持つ友人が、
子育ての愚痴を言っていた。
「この夏、妻が子どもに無理やり勉強させている。
詰め込みすぎてて、少しかわいそうなんよね。
あれはやりすぎだと思う」
私にも、
5歳の子どもがいるので、
まあ、分からなくもない。
ただ、
他人の家の教育方針に口を出すのは、
野暮である。
私は、
是とも否とも言わなかった。
その代わり、
2000年近く前の詩人を思い出した。
古代ローマの詩人、
マルティアリスである。
マルティアリスは、
紀元1世紀のローマで活躍した詩人だ。
壮大な英雄譚を書くというより、
人々の日常や、
人間の滑稽さを、
短い詩にして残した人である。
その『エピグラム集』第10巻62番に、
学校の教師に向けて書かれた詩がある。
マルティアリスはそこで、
教師たちに、
鞭や杖を使うのをやめて、
「10月15日まで眠らせておけ」
と書いている。
そして最後を、
こんな言葉で締める。
Aestate pueri si valent, satis discunt.
「夏には、
子どもたちは元気でさえいれば、
それで十分に学んでいる」
2000年近く前の言葉である。
もちろん、
古代ローマと現代日本の教育を、
そのまま比べることはできない。
当時は、
本当に教師が鞭や杖を使っていた時代である。
それでも、
この一節は、
妙に現代的だ。
「夏くらい、
子どもを休ませてやれよ」
2000年前にも、
そんなことを言う大人がいた。
冒頭の愚痴で言えば、
友人の妻が正しいのか、
友人が正しいのか、
それは、
私には分からない。
ただ、
「もっと勉強させたほうがいい」
と思う大人と、
「いや、夏くらい休ませてやれよ」
という大人がいる。
その光景を見ていると、
人間というのは、
2000年くらいでは、
大して変わらないのだなと思う。
教育制度は変わった。
学校も変わった。
教師の鞭や杖も、
さすがに教室から消えた。
それでも、
夏になると、
大人は同じようなことで悩んでいる。
Aestate pueri si valent, satis discunt.
夏には、
子どもたちは元気でさえいれば、
それで十分に学んでいる。
2000年前の言葉なのに、
今年の夏にも、
そのまま使えそうである。
