【シリーズ①】市庁舎移転は、誰がデザインしたのか。ー政策形成プロセスを検証するー
2026年7月3日ズバッと鎌倉#035
鎌倉市の新庁舎計画について取材を続ける中で、私は一つの疑問を抱くようになった。
この計画は、本当に鎌倉市が主体となって積み上げてきた政策なのだろうか。
もちろん、市長が公約を掲げ、新庁舎整備を進めること自体を否定するものではない。
しかし、市民の税金を使って進められる政策である以上、「誰が、どのような議論を経て、その政策を形づくってきたのか」というプロセスは、市民に対して十分に説明されなければならない。
私は現在、その「政策形成の過程」を調査している。
今回入手した資料の中で、私が注目したのが、一般社団法人「Park Line推進協議会」という組織である。
この団体は令和6年12月に設立され、事務局はパシフィックコンサルタンツ株式会社内に置かれている。
設立目的には、
・公共空間の活用
・道路マネジメント
・エリアマネジメント
・官民連携(PPP・PFI)
・グリーンインフラ
・DX
など、近年の都市政策で重視されるテーマが数多く並んでいる。
さらに会員を見ると、パシフィックコンサルタンツ、大成建設、みずほ銀行、NTT東日本、日本郵政不動産など、日本を代表する企業が参加していることが確認できる。

一方、鎌倉市では道路包括管理導入に向けた調査業務をパシフィックコンサルタンツへ委託している。
ここで私が申し上げたいのは、「だから何か問題がある」と断定したいのではない。民間企業の知見を行政が活用することは、現在では珍しいことではないし、それ自体を否定するものでもない。
しかし、市民が知るべきなのは、政策がどのようなプロセスを経て形成されたのかということである。
その疑問は、先日の建設常任委員会でも感じた。
委員会では、市長が打ち出した「民間活用による新庁舎整備」について、担当部長が「事前にサウンディング調査は実施していない。」(注1)と答弁している。
さらに、「事業者が見つかる保証はない。」、「これから検討していく。」という趣旨の答弁も繰り返された。
一方で、市長は「民間活用によって早く、安くできる」と説明している。
私はここに、一つの違和感を覚えた。
政策の方向性を示す市長と、それを実務として支える職員との間に、認識のずれがあるように感じられるのである。
もちろん、それだけで何かを断定することはできない。
しかし、市民として知りたいのは、「その方針は、どのような検討を経て決まったのか。」という一点である。
さらに今回の調査では、もう一つ気になる事実がある。
現在の都市整備部長であるT氏は、元大成建設の社員である。また、Park Line推進協議会には大成建設も参加している。偶然なのか。
これも、だから問題だと言いたいのではない。
民間企業で培った経験を行政に生かすことは、決して悪いことではない。
重要なのは、その経験や人脈が政策形成にどのような形で反映され、市民にどのような説明がなされているのかという点である。
行政に求められるのは、政策そのものだけではない。
その政策がどのように生まれたのかという「プロセスの透明性」である。
私たちは今後、
・Park Line推進協議会とはどのような組織なのか。
・道路包括管理との関係。
・新庁舎計画との接点。
・政策形成に関わった組織や人物。
・鎌倉市は、どのようなプロセスで意思決定を行ってきたのか。
これらについて、公文書、契約書、議事録、予算書などの一次資料をもとに、一つひとつ丁寧に検証していきたい。
取材は、まだ終わらない。
今回の取材を進める中で、市庁舎移転や公共空間政策、そしてPark Lineを取り巻く人脈をたどると、繰り返し名前や接点が見えてくる人物がいる。

現時点で、その人物に違法性や不適切な関与があったと断定できる事実はない。
しかし、政策形成の過程を検証する上で、その存在を見過ごすこともできない。
この人物は、どのような役割を果たしてきたのか。
それは単なる偶然の積み重ねなのか。それとも、政策形成の過程で何らかの役割を担ってきたのか。
今後この点についても、公開資料や一般質問や委員会での発言の議事録、契約書など客観的な資料を積み重ねながら、市民の皆さんとともに検証していきたい。
このシリーズは、誰かを攻撃するためのものではない。
また、結論ありきで記事を書くつもりもない。
私たちが明らかにしたいのは、「誰が悪いのか」ではなく、「誰が、どのようなプロセスを経て鎌倉市の政策が形づくられてきたのか」という政策形成の構造そのものである。
行政への信頼は、結果だけではなく、その意思決定の過程が市民に開かれていることで初めて生まれる。
だからこそ私たちは、そのプロセスを、市民の皆さんとともに一つひとつ可視化していきたい。
(記事:壬生三四郎)
(注1)サウンディング調査とは
一般的には「サウンディング型市場調査」と呼ばれ、地方公共団体が所有する土地や施設の活用方法について、民間の事業者から広くアイデアや意見を聞くために行うもの。事業対象となる土地や施設を広く、また公式に外部に示すことで、民間事業者の参入意欲を高める役割も果たす。(パシフィックコンサルタンツHPより引用)
