【特別編②】消えた陳情第28号・第29号―受付された陳情は、どこへ消えたのか ―
2026年7月26日ズバッと鎌倉 #特別編 ②
前回は、2025年9月8日に鎌倉市議会で陳情配付基準が急きょ改訂された経緯を紹介した。
その改訂理由として議長側から説明されたのは、「個人情報の保護」であった。そして、新しい基準が適用された翌日の9月9日、市議会には二通の陳情が提出される。
この二通の陳情こそ、その後の鎌倉市議会を揺るがすことになる「陳情第28号」と「陳情第29号」である。
◆正式に受付された二通の陳情
2025年9月9日、岩田薫氏は鎌倉市議会事務局へ二通の陳情を提出した。
一つは、「中沢克之市議会議長が詐欺容疑で告訴されたことについて調査し綱紀粛正を求める陳情」、そしてもう一つは、「陳情配付基準の突然の改訂に関して検証するよう求める陳情」である。
議会事務局では従来どおり誤字脱字などを確認し、収受印を押印した。
さらに、陳情番号としてそれぞれ
陳情第28号
陳情第29号
が付され、その写しが提出者へ返却されたという。


つまり、この時点では通常の陳情と同じ手続きで受付されていたことになる。
◆その後、議会から何の連絡もなかった
ところが、その後、提出者には議会から何の連絡もなかったという。
委員会審査の日程も通知されない。
配付結果もわからない。
そこで提出者は、市議会ホームページを確認した。
すると、予想もしない事実が判明する。
◆陳情第28号・29号が「別の陳情」に変わっていた
市議会ホームページに掲載された「今定例会の請願・陳情一覧」。
そこには、
陳情第28号
陳情第29号
という番号が掲載されていた。
しかし、そのタイトルは全く違っていた。
本来、第28号は「中沢克之市議会議長が詐欺容疑で告訴されたことについて調査し綱紀粛正を求める陳情」だったはずである。
ところが掲載されていたのは、「陳情取扱いルールの変更を見直すよう求める陳情」であった。
同様に、本来の第29号「陳情配付基準の突然の改訂に関して検証するよう求める陳情」ではなく、
「陳情配付基準の改正手続きに関する規定追加についての陳情」という別の陳情が掲載されていた。
番号は同じ。
しかし内容は全く別だったのである。

◆議会事務局への問い合わせ
提出者は驚き、市議会事務局へ電話で確認したという。
その際、議事調査課の担当者から「議長の指示で受理しないことになった。」という説明を受けたと告訴状には記載されている。
この点については、現在確認できる資料では告訴状に記載された内容であり、本稿ではその記載内容を紹介するにとどめる。
一方で、提出者が保有する写しには、議会事務局の収受印と陳情番号が押印されている。
つまり、受付されたことを示す文書が存在する一方、
ホームページ上では同じ番号に別の陳情が掲載されていたという経過は、資料から確認することができる。
◆二つの「第28号」が存在する
今回の問題を理解する上で重要なのは、同じ番号を持つ陳情が二つ存在していることである。
例えば、第28号。
一つは、9月9日に受付された「中沢克之市議会議長が詐欺容疑で告訴されたことについて調査し綱紀粛正を求める陳情」。
もう一つは、9月16日に受付された「陳情取扱いルールの変更を見直すよう求める陳情」。
どちらにも「陳情第28号」という番号が記されている。
第29号についても同様である。
通常、議会へ提出された陳情番号は重複しない。
そのため、この資料を初めて見た市民の多くは、大きな違和感を抱くのではないだろうか。
◆岩田氏による刑事告訴
こうした経過を受け、岩田薫氏は2025年12月5日、鎌倉警察署へ告訴状を提出した。
告訴状では、議長による対応が刑法第155条第2項に定める公文書変造等に該当すると主張している。
ここで重要なのは、この法的評価は告訴人の主張であり、裁判所や捜査機関が認定した事実ではないという点である。
一方で、告訴状には、
* 9月9日に受付された陳情の写し
* 収受印
* 陳情番号
* 後に同じ番号が付された別の陳情
など、多数の資料が添付されている。
これらは、当時の経過を考える上で重要な資料と言える。
◆「お蔵入りした陳情はありますか」
この問題は、その後の議会運営委員会でも取り上げられる。
2025年11月26日。
森功一委員は議長へ、率直な質問を投げかけた。

「陳情配付基準の見直しが9月にあり、議長と副議長がまず議会で取り扱えるものかどうかをチェックすることになりましたが、この間、お蔵入りした陳情はありますか。」
これに対し、中沢議長は、「これまでというのは、ないです。」と答弁している。
この答弁の意味は何だったのか。
そして、9月の基準改正の理由として繰り返し説明された「子どもの人権に関わる陳情」とは、具体的にどの案件を指していたのか。
その点を確認するため、市民は教育委員会へ情報公開請求を行うことになる。
しかし、その回答は、新たな疑問を生むものだった。
◆教育委員会は、なぜ自ら事実確認を行わなかったのか
ここで、もう一つ疑問が残る。
令和7年11月26日の議会運営委員会における中沢克之議長の発言は、陳情配付基準の改訂理由そのものに関わる極めて重要な説明であった。
議長は、「教育委員会にも私にも提出したいという意思表示があった。」と、教育委員会の対応について具体的に言及している。
仮に、この発言が事実であれば、教育委員会にも相談記録や対応記録、あるいは担当者の記憶など、何らかの形で確認できる資料や事実が存在すると考えるのが自然である。
ところが、情報公開請求に対する教育委員会の当初の回答は、「行政文書不存在」であった。
その後の公開質問状に対しても、「特定できない」との回答が繰り返された。
さらに当初は、議会運営委員会の映像すら確認せず、議事録のみを確認して回答していたことも明らかになっている。
市民から具体的な議事録や発言内容を示され、問題点が指摘されたにもかかわらず、教育委員会が議長本人や議会事務局に事実関係を照会した形跡は確認できない。
教育委員会を批判することが本稿の目的ではない。しかし、市議会議長が公式の会議で教育委員会の対応にまで言及した以上、教育委員会としても主体的に事実確認を行い、その結果を市民に説明する姿勢が求められていたのではないだろうか。
次回は、11月26日の議会運営委員会で語られた「子どもの陳情」をめぐる説明と、教育委員会への情報公開請求・公開質問から見えてきた事実を検証する。
(記事:鎌倉コミュニケーションズ)
