見出し画像

【特別編】中沢議長辞任のその先へ ー市民の知る権利は誰が守るのかー

2026年8月6日ズバッと鎌倉#特別編

朝日新聞は8月4日、「中沢克之議長が辞任の意向を固めた」と報じた。

昨年5月の議長就任以来、鎌倉市議会では異例の事態が続いた。議長辞職勧告決議の可決、議会運営を巡る対立、長期にわたる議会の停滞、そして6月定例会の混乱である。

現在は、後任となる議長、副議長、監査委員、さらには各委員会の委員長、副委員長を選ぶための役員選考が始まろうとしている。
しかし、市民が本当に注目すべきことは、「誰が次の議長になるのか」ではない。

"鎌倉市議会は、この一年余りの混乱から何を学び、何を変えようとしているのか。"
問われているのは、その一点である。

そのような中、小野田康成議員が配布した議会報告に目を通した。

小野田康成議員政治報告ビラより

そこには、地方自治法第98条第2項に基づく監査請求について、次のような記載がある。

「既に議会という公的な場において毎年度、適正な審査を経て承認されてきた過去の事案に対し、改めて遡及して監査を行うことが、現時点においてどのような意義を持ち、どのような成果を期待するのか。」

さらに、「行政運営の安定性」や「リソースの効率的な配分」の観点からも慎重であるべきだと述べ、監査請求に反対した理由を説明している。確かに、行政運営には効率性も求められる。
しかし、この説明を読みながら、どうしても拭えない疑問がある。

監査制度とは、一体誰のために存在する制度なのか。

地方自治法第98条第2項は、議会が必要と判断した場合に監査委員へ監査を求めることができる制度である。
その目的は行政を混乱させることではない。
ましてや政治的な対立を激化させることでもない。

"事実を確認し、市民に説明すること。"
これこそが監査制度の本来の役割である。
今回、監査請求の対象となったのは、新庁舎整備に関する問題であった。新庁舎整備では、これまで多額の公費が投入されてきた。その中には、日建設計へ支払われた約1億6千万円の基本設計費も含まれている。

ところが、その後、市は大きく方針を転換し、「民間活力を活用した庁舎整備」という新たな方向性を打ち出した。
ここで市民として抱く疑問は極めて自然なものである。

▼約1億6千万円を投じた基本設計は、現在どのように活用されているのか。

▼その支出は、本当に適正であったのか。

▼方針転換に至る意思決定は、市民に十分説明されたのか。

これらは行政を攻撃するための問いではない。
市民が納めた税金について、市民が説明を求める当然の権利である。だからこそ、「監査によって事実を確認しよう」という提案がなされたのである。

仮に監査を実施し、問題が存在しなかったのであれば、それは行政や議会の正当性を裏付ける結果となる。
逆に改善すべき点が見つかれば、そこを改めればよい。
ただそれだけではないだろうか。

どちらの結果になったとしても、市民にとって不利益はない。

だから私は、監査制度とは行政を疑うための制度ではなく、市民の信頼を守るための制度であると考える。

一方で、小野田議員の議会報告からは、「既に議会で承認された案件である以上、改めて監査する必要性は低い。」
という考え方が読み取れる。

もちろん、小野田議員は監査制度そのものを否定しているわけではない。今回の監査請求について、その必要性に疑問を呈しているのであろう。

しかし、市民の立場から見れば、別の受け止め方も生まれる。

それは、「これ以上、過去を検証するよりも、早く前へ進もう。」というメッセージである。

だが、本当に前へ進むためには、検証を省略してはならない。必要なのは、十分な検証を行い、市民へ説明し、納得を得た上で前へ進むことである。

民主主義とは、「一度決まったから終わり」という仕組みではない。必要があれば検証し、必要があれば改善し、その経過を市民へ説明する。その積み重ねによって行政への信頼も、議会への信頼も築かれていく。

行政も議会も、市民から負託を受けた公の機関である。
であるならば、最優先すべきは行政の都合でも議会の都合でもない。

"市民の知る権利である。"

中沢議長の辞任は、一つの区切りに過ぎない。
本当に問われているのは、新しい議長が誰になるかではない。今後鎌倉市議会は、市民に開かれた議会へ生まれ変わるのか。

▼説明責任を果たす議会へ変わるのか。

▼市民の知る権利を尊重する議会へ変わるのか。

その覚悟が今、問われている。
最後に、市民の皆さんへ問いかけたい。

議会で一度承認された案件は、その後、どれほど疑問が生じても検証する必要はないのだろうか。それとも、
市民の税金が使われた以上、必要に応じて何度でも検証し、その結果を市民へ説明することこそが、地方自治の原点ではないだろうか。

皆さんは、どのような鎌倉市議会を望むだろうか。


(記事:壬生三四郎)



いいなと思ったら応援しよう!