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【特別編③(最終回)】消えた陳情第28号・第29号― 情報公開請求が突きつけた、新たな疑問 ―

2026年7月26日ズバッと鎌倉 #特別編

第1回では、2025年9月8日に陳情配付基準が急きょ改訂された経緯を整理した。

第2回では、翌9日に受付された陳情第28号・第29号が、市議会ホームページ上から姿を消し、同じ番号が別の陳情に割り振られていた経過を紹介した。

では、この基準改訂は、本当に説明どおり「子どもの人権を守るため」だったのだろうか。

その疑問を解くため、市民は情報公開制度を利用して事実確認を始めた。


◆「子どもの陳情」が理由だった
2025年11月26日の議会運営委員会。
中沢克之議長は、9月の基準改訂について次のような趣旨の説明を行っている。
「教育委員会にも私にも提出したいという意思表示があった。」、「私のところにも複数回あった。」、「教育委員会のほうにもあった。」、「説得し、お話をした結果、陳情は提出されなかった。」

さらに、長嶋竜弘議会運営委員長は、
地方自治法第132条、少年法第61条、個人情報保護、
名誉毀損、信用毀損などを挙げ、「このような陳情を受け付ければ法令違反になる可能性がある。」という趣旨の説明を繰り返した


つまり、
「子どもの個人情報が記載された陳情が提出されそうだったため、急きょ配付基準を変更した」という説明である。

【反訳】2025年11月26日議会運営委員会の切り抜き

◆「法令違反になる」という説明は本当だったのか
陳情配付基準の改訂を正当化する理由として、長嶋議運委員長は11月26日の議会運営委員会で、個人情報や少年法、名誉毀損などを挙げ、「議会として受け取った陳情を配布したり、議員の皆さんに見せること自体が公に広げることになるため、法令に抵触する事態が起こります。」と説明した。

しかし、この説明には検証が必要である。
まず、個人情報や未成年者に関する記載がある文書であっても、行政機関は日常的に氏名等を黒塗り(マスキング)した上で文書を取り扱っている。情報公開制度でも同様の運用は一般的であり、「個人情報が含まれている文書は受け付けること自体が違法」という考え方は通常採られていない。

実際、9月8日の議会運営委員会では、「個人名を黒塗りにして配付する方法もあるのではないか」という意見も出されていた。

つまり、個人情報を保護する方法は、陳情そのものを議長・副議長の判断で取り扱わない制度へ変更する以外にも存在していたのである。

少年法第61条についても、少年事件に関する推知報道等を制限する趣旨の規定であり、「議会が陳情を受理してはならない」と規定しているわけではない。

個人情報保護法についても同様で、行政機関が個人情報を含む文書を受理すること自体を禁止する法律ではなく、適切な管理を求める法律である。

したがって、「受付けると法令違反になるので、基準変更以外に方法はなかった」という説明が法律上当然に導かれる結論だったとは言い難い。

黒塗り配付など、他の対応策も十分考えられたからである。この説明が事実なら、教育委員会にも何らかの相談記録や対応記録が残っているはずである。


◆情報公開請求の結果
そこで市民は、教育委員会へ情報公開請求を行った。
請求内容は、議会運営委員会で中沢議長が言及した案件について、教育委員会が受信したメールや同一内容の文書の公開である。

これに対し、教育委員会は、「行政文書不存在」と決定した。通知書には、「令和7年11月26日の議会運営委員会において、中沢議長がメール受付したとする発言が確認できません。したがって、そのメールは存在しません。」
という趣旨が記載されている。

公開請求の対象となった行政文書は存在しないという結論だった。


◆さらに公開質問状を提出
しかし、これだけでは疑問は解消されなかった。

そこで渡邊昌一郎氏は、教育委員会へ公開質問状を提出した。
質問は10項目に及び、
・相談はあったのか。
・面談だったのか。
・電話だったのか。
・メールだったのか。
・対応記録は存在するのか。
・議長発言は事実と一致しているのか。
など、具体的な事実確認を求める内容だった。


◆教育委員会の回答
教育委員会は、「議会運営委員会で議長が指している陳情提出希望者が特定できないため回答できない。」
と回答した。

さらに、「議事録は確認した。」としながら、議会映像については、確認していなかったことも明らかにした。

その後、渡邊氏が再度説明を求めたことを受け、教育委員会は映像も改めて確認した。

しかし回答は変わらなかった。

◆「特定できない」
教育委員会は再回答で、映像と議事録の双方を確認したが、「陳情提出希望者」が誰を指しているのか特定できない。「この案件のメール」が何を指しているのかも特定できない。と回答した。

つまり・・・
教育委員会は、議会運営委員会で中沢議長が説明した案件を、特定することができなかったのである。


◆二つの説明は一致しているのか
ここで整理したい。
議会運営委員会では、中沢議長は、「教育委員会にもあった。」と明言している。

一方、教育委員会は、「誰のことなのか特定できない。」、
「案件も特定できない。」と回答している。

もちろん、これだけで直ちにどちらかが虚偽だと断定することはできない。

議長が認識していた案件と、教育委員会が認識している案件が一致していない可能性も考えられる。

あるいは、議長が議会運営委員会で説明した内容が、
教育委員会には十分共有されていなかった可能性もある。

しかし少なくとも、現時点で公開されている資料だけを見る限り、

議会での説明と教育委員会の回答との間に整合しない部分が存在することは事実である。


◆市民が知りたいのは真実だけである
このシリーズでは、誰かを有罪だと断定することも、
違法行為が確定したと述べることも目的としていない。

紹介してきたのは、議会の反訳、陳情書、収受印のある写し、情報公開請求の回答、公開質問状、教育委員会からの回答など、いずれも実際に存在する資料である。

それらを時系列で並べると、多くの市民が抱くであろう疑問が浮かび上がる。なぜ陳情配付基準は、あれほど急いで変更されたのか。

なぜ受付された陳情第28号、第29号は、市議会の議論の対象にならなかったのか。

なぜ議会で説明された「子どもの陳情」は、教育委員会でも特定できなかったのか。

そして、なぜ議会運営委員会では、「お蔵入りした陳情はない」と答弁されたのか。

これらの疑問に対し、市民が納得できる説明は、いまだ十分になされているとは言い難い。

地方議会は、市民の負託を受けて運営される公の機関である。

だからこそ、疑問が生じたときには、資料と事実に基づいて説明し、市民の理解を得る努力が求められる。

本シリーズが目指したのは、結論を押し付けることではない。

公開された資料を一つ一つ積み重ね、市民一人ひとりが自ら考え、判断するための材料を提示することである。

議会への信頼は、情報を隠すことではなく、事実を丁寧に説明することによってのみ取り戻される。

それが、この一連の出来事から私たちが学ぶべき最も重要な教訓ではないだろうか。


(記事:鎌倉コミュニケーションズ)

本稿は、誰かを断罪することを目的としたものではない。議会で説明された内容と、公開された行政文書や議事録との整合性を検証し、市民が自ら判断するための材料を提示することを目的としている。説明責任は、民主主義を支える地方議会に課せられた最も重要な責務の一つだからである。

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