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賃貸物件を信託すると損益通算ができなくなる——知っておきたい税務ルールと設計の考え方
家族信託は認知症対策として有効な仕組みですが、賃貸不動産を信託財産に組み込む場合、税務上ひとつ大きな制限があります。
「損益通算の禁止」です。
■ どういうルールか
通常、不動産所得が赤字になった場合、その赤字を給与所得や他の不動産所得と合算して税負担を減らすことができます。
これを損益通算といいます。
ところが、信託した不動産から生じた赤字については、「生じなかったものとみなす」とされています(租税特別措置法41条の4の2)。
信託物件が大規模修繕などで赤字になったとしても、その赤字を他の所得と相殺することができません。
翌年以降に繰り越すことも、原則としてできません。
■ 具体的にどうなるか
たとえば、賃貸マンションAとBを所有しているとします。
Aは信託済みで年間黒字500万円、Bは信託外で年間赤字200万円の場合、Bの赤字は通常どおり通算できます。
一方でAが赤字だった場合、その赤字はなかったものとされてしまいます。
注意が必要なのは、複数の物件を信託する際の「契約のくくり方」です。
同じ信託契約の中にAとBを入れれば、契約内での黒字・赤字の相殺は可能です。
しかし別々の信託契約にした場合は、契約をまたいだ通算ができません。
■ 設計段階で考えておくこと
このルールがあるからといって、賃貸物件を信託しない方がよいとは一概にいえません。
認知症による賁産凍結を防ぐという本来の目的があり、その効果がデメリットを上回る場面も多くあります。
重要なのは「どの物件を信託するか」「複数の物件をどの契約でくくるか」を事前に整理することだと思っています。
将来の大規模修繕が見込まれる物件や空室リスクが高い物件は、特に慕重に検討が必要です。
この部分は、司法書士だけで完結できる話ではありません。
税理士と連携して、信託設計の段階から税務上の影響を確認することをお勧めしています。
