俺はただ、涼しくなりたいだけなのに(麺酒一照庵 晴天櫓)
最近、冷蔵庫を開けたまま、しばらく立ってることがある。
何かを探してるわけじゃない。
何かをしまうわけでもない。
ただ、立ってる。
冷気を浴びてる。
冷蔵庫を家電としてではなく、滝として利用してる。
もうね、夏の俺なんて、ほぼ修行僧ですよ。
開けた瞬間、
ファ~~~
って、冷気が来るじゃないですか。
あれを全身で受けながら、
ああ、生き返る。
つってる。
ただ、冷蔵庫側からすると、たまったもんじゃない。
ピーピー鳴る。
「開いてますよ」
って。
知ってる。
こっちは意志をもって開けている。
それで、この前も冷蔵庫の前に立ってたら、
奥から変わり果てたショウガが出てきた。
いつ買ったのか、まったく覚えてない。もうショウガというより、ミイラ。触った感じも、なんか軽い。あれだけ身体を温めることで知られたショウガが、冷蔵庫の奥で完全に冷え切っていた。
お前にも、色々あったんだな。
そう思って、そっと戻しました。
というわけで、
冷たいものとショウガについて考えながら、
ラーメン屋さんに行ってきました。

■麺酒一照庵 晴天櫓
(岡山市北区中仙道2丁目25−7)

◆笠岡style 冷やし生姜醤油
運ばれてきた一杯は、見た目からもう涼しい。
まず、つゆを飲む。
とても冷たい。
口に入れた瞬間の清涼感は、もはや流しそうめん。ただ、知らない子供が上流で全部取っていくことはない。流しそうめんの不安要素を全部取り除いて、夏の涼しさだけを丼に残した感じ。


つゆは昆布やイリコの出汁を土台に、鶏の力強さがグッと前に来る。そこに醤油と生姜の香り。冷たいのに、味は薄着じゃない。ちゃんと着込んでる。でも、後味はスッキリしてる。

麺は硬め。思ったより、しっかり硬い。冷たいつゆの中でキュッと締まっていて、歯に対して一切の遠慮がない。「噛めるもんなら」くらいの態度で来る。この硬さが冷たいつゆに合う。
そこにミョウガ。さらにオクラ。オクラのネバネバが、さらっとしたつゆを少しだけ麺に引っかけてくれる。
普通のラーメンなら、脂と罪悪感までまとめて食べる。
でも、この一杯は違う。
胃も、肝臓も、知らない臓器も、
「これはまあ、いいんじゃないですか」
つってた。
すごく健康に良い気がする。
そして、もう一品。


◆飲める親子丼
親子丼について「飲める」と言い切るのは、結構な覚悟ですよ。
丼物は基本、噛むものです。
飲み物ではない。
カレーは飲み物という主張については、これまで何度か耳にしましたが、親子丼までこちら側に来た。飲料界の門が、だいぶ広くなってる。
食べてみると、まず鶏の脂が襲い掛かる。
ふわっと、じゃない。
ドン。
鶏です。
ここに鶏がいました。

卵はとろっとしていて、つゆもちゃんとある。でも、いわゆる雑なつゆだくではない。ご飯の底を洪水にして、全部を押し流すタイプではない。
つゆは多いのに、品がある。ご飯の底に、静かな池みたいに満ちてる。モネの池 in 岡山。鯉はいないけど、鶏はいる。
スプーンを入れると、ご飯、卵、鶏、つゆが一緒に入ってくる。
するっと口に入る。
なるほど。
飲める。
これは飲める。

冷やしラーメンで身体の中が一度スッキリしたところに、親子丼の鶏の脂が入ってきて、急に体内がにぎやかになる。冷やして、満たす。夏の食事として、かなり正しい気がする。
そんなわけで、
冷やし生姜醤油のつゆをほぼ飲み、
親子丼もほぼ飲み、
これはもう、身体の内側から涼しくなったぞ、
今日は冷蔵庫の前に立たなくても大丈夫だぞ、
と思いながら家に帰った。
でも、部屋が暑かったので、いつものように冷蔵庫を開けた。
ファ~~~
ああ、生き返る。
すると奥から、さっきのショウガが転がってきた。
今日はもう、生姜は足りている。
そう思って、そっと戻しました。
【メモ】
笠岡style 冷やし生姜醤油(1050円)
飲める親子丼(平日ランチセット +360円)
個人的には温かいラーメンのほうが好み。ただ身体を中から冷やしたい日に、胃袋も食欲もきちんと満たしてくれる、味も見た目も賑やかな一杯。/ 親子丼は +360円とは思えないクオリティ。単品でも420円。ラーメンと合わせて食べる立ち位置なので量は控えめですけど、これだけでも十分満足して帰れる食べ応えがある。
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