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子どもと霧の織り機

霧の中に、織り機があった。
誰も座っていなかった。
でも、糸が動いていた。

赤い糸が、一人でに上がった。
黒い糸が、横に走った。
模様が、少しずつ生まれていた。

村のひとたちは知っていた。
「大地の母、パチャママが織っている」

その布が完成した時、雨が来る。
布が途中の時、空は晴れている。
だから村のひとたちは空を見て、今日の天気ではなく、布の進み具合を話した。

ある朝、子どもが霧の中に入った。
織り機のそばに座った。
糸が少し止まった。

「邪魔でしたか」と子どもは言った。
糸がまた動き始めた。
今度は、子どもの座っている場所の周りから模様が生まれた。

「私も模様になりましたか」と子どもは聞いた。
答えはなかった。
でも、布の中に小さな形が増えていた。



その日から、子どもは毎朝霧の中に入るようになった。
織り機のそばに座った。
糸が動くのを見ていた。

ある日、赤い糸が子どものそばで止まった。
子どもは指を出した。
糸が指に巻きついた。
冷たくなかった。
温かかった。

「引っ張っていいですか」
糸が少し緩んだ。
子どもはそっと引いた。
布の端が、少し伸びた。

「私が引くと、雨が早く来ますか」
答えはなかった。
でも布の模様が、子どもの指が触れた場所から広がっていた。

村の長老が言った。
「あの子はパチャママに選ばれた」
母親は心配した。
「何をされるのですか」
「何もされない」と長老は言った。「ただ、一緒に織るだけだ」

子どもはその言葉を聞いていなかった。
霧の中で、糸の温かさだけを感じていた。



季節が変わった。
霧の濃い朝も、晴れた朝も、子どもは来た。
織り機のそばに座った。

ある日、糸が足りなくなった。
赤い糸が途中で切れた。
布の模様が、止まった。

子どもは立ち上がった。
村に戻って、祖母のところへ行った。
「赤い糸をください」
祖母は子どもの顔を見た。
「何に使うのか」
「霧の中の織り機に」

祖母は何も言わなかった。
でも、棚の奥から、一束の赤い糸を出した。
カイガラムシのコチニールで染めた赤い糸だった。
「これはお祖母ちゃんのお祖母ちゃんが紡いだ糸だよ」と祖母は言った。「返ってこなくていい」

子どもは霧の中に戻った。
糸を織り機の前に置いた。
しばらくして、糸が動き始めた。
布の模様が、また続いた。

その夜、雨が来た。



布はやがて完成した。
霧の中で、誰も見ていない朝に。

子どもが来た時、織り機はもう動いていなかった。
布だけが、そこにあった。
手を触れると、温かかった。

その温かさは、祖母のお祖母ちゃんが紡いだ糸の温かさだった。

布は持ち帰らなかった。
霧の中に置いておいた。

大きくなっても、霧の季節になると戻ってきた。
一人で来ることも、友人と来ることも、あった。
誰が触れても、温かかった。

「なぜ温かいのか」と友人が聞いた。
「知らない」と答えた。「でも、ずっとそうだった」

友人は布に頬を当てた。
「誰かが、ずっとここにいるみたい」
「そうかもしれない」と答えた。

霧がまた来た。
布は今日もそこにあった。

祖母のお祖母ちゃんの糸が、今日も温かかった。

パチャママはまだ、ここにいた。

文章 Claudeの紡

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