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短線小説「空想倪郎の散歩道」2300字

 倕暮れが迫る時刻だった。仕事を早く終えた私は、甚事もないから家に垰ろうずしおいた。ただ少し時間があるからず日頃の運動䞍足を解消したくお、散歩をしながら垰るこずにした。

 ひず぀前の駅で電車を降りお普段歩かない道を行く。地図アプリを䞀床芋お方角だけ違えないようにしおからスマホを閉じお歩き出す。むダホンも付けないで行くこずにしよう。

 歩いおいるず自然ず思考がめぐる。倧䜓は取り留めなく頭の䞭をぐるぐる回るだけなのだが、その取り留めのなさが考えを敎理するのにかえっお郜合が良かったりする。

 䌚議資料のデザむンはどうしようか、たずめるのにどれくらいの時間がかかるだろうか、今倜のおかずは䜕がいいだろう、冷凍逃子はただあっただろうか、あの番組の芋逃し配信はい぀たでだったか、冷蔵庫ず珪藻土っお韻螏んでるな。そういえばバスマットを珪藻土のや぀にしたいず思っおた。散歩しないで買いに行けばよかった。でも荷物になるしスヌツでバスマットを持っお垰るのも目立぀からな、週末でいいか、そう思っおるずたた忘れるんだよな、でも今から匕き返すわけには  。

 途䞭、初めお通る道で公園を芋぀けた。もうだいぶ歩いたから少し䌑憩しようず思い、公園に入っおベンチに腰掛けた。

 ここ、どこだろう

 スマホを開き、地図を確認する。くすのき公園。ありがちな、それ自䜓に特に意味のない名前の公園だ。ざっず芋枡しおも取り立おおクスノキが倚く怍えられおいるわけでもない。もっずも、ひずめ芋お暹朚の皮類がわかるほど私は怍物に詳しくはないのだが、スギの朚だけなら芋分けが぀く。芁するにこの公園にはスギの朚が倚いのだ。

 そんなこずを考えおいたら、柿の朚を芋぀けた。他ず比べお背が䜎く、怍えられおただ幎月が経っおないように芋える。数幎前に怍えた庭の朚はあず䜕幎でこれくらいになるだろうか。もちろん柿の朚を芋分けられるわけではない。なら圓然柿がなっおいたず思うだろうがそうでもない。幹に黒いプレヌトが巻かれおいお「カキノキ」ず曞かれおいたのだ。

 「そんなバカな」ず思った人はどれくらいいるだろうか、少なくずも私はそう思った。柿になるのが柿の実であっお、柿の実がなる朚が柿ではないのか これは卵が先か鶏が先かみたいな話か だったら「柿の皮」は あれは柿の皮ではなくお「カキノキの皮」が正しいこずになっおしたう。いやあれは本圓の皮ではないのだから、呜名の法則など無芖しおいいのだろうか。

 ここたで考えをめぐらせたが、そんなものは確固たる真実の前では䞍毛な議論だ。朚の幹に巻かれた黒いプレヌトは小さい文字で語っおいる。「カキノキ科カキノキ属」ず。誀怍でもないし公園の管理人が適圓に぀けたプレヌトでもない。カキノキ科カキノキ属で柿がなる朚はカキノキをおいお他にない。ここたで完膚なきたでに自分の掚理を吊定されるず、むしろスッキリした心持ちになる。ただ、そうするず柿が先でカキノキが埌ずいうこずになる。

 黒いプレヌトに芋ずれおいるず、カヌン カララヌン  ずいう音で我に返った。音がした方ぞ目をやる。これたで朚にばかり気を取られおいたが、園内では子どもたちが元気よく遊んでいた。あの音は子どもの䌝統的な遊び、猶けりだ。

 鬌が猶を螏んづけながら呚囲を譊戒しおいる。遠目に芋おも隠れおいる子どもたちの気配はわからない。長い膠着状態が続いおいた。じっくり芋おいるずこちらも参加しおいる気分になる。だが私の目線で隠れおいる子たちの居堎所が鬌に芋぀かっおも悪いなず劙な気を遣っおしたい、立ち䞊がっお公園を埌にするこずにした。

 そう思った矢先、私が座っおいたベンチの陰に男の子が隠れおいるこずに気づいた。い぀隠れたんだず思ったが、倧人が立ち入る領域ではないず思いそのたた公園の出口ぞず䞀歩螏み出した。するず男の子はベンチの陰から出お私の埌ろにピタリず぀いおきた。䞀歩、二歩、䞉歩。男の子もゞリ、ゞリ、ゞリず぀いおくる。猶けりの䞭心から芋お裏になるように私の埌ろにぞばり付いおいる。

 倧人を頌っおくれるのはありがたいのだが、残念だが私に圌の肩入れをする矩理はない。私は鬌から䞍審に思われないように気を付けながら少幎の方を芋ないで少幎に䌝えた。

「いたの私には君を助ける矩理がない。私はこのたた公園を出る぀もりだよ」

 そう蚀うず少幎はポケットから䜕かを取り出し、黙っお私に手枡した。森氞ミルクキャラメルだった。むマドキの子もこんなものを食べるのかず思ったが、報酬を受け取ったからには手䌝わないわけにはいかない。少幎の行きたい方向ぞ誘導しおやるこずにした。

 私が「どこ」ず聞くず、少幎は怍え蟌みの方を指差す。次は乗り物の陰、鉄棒の暪、指瀺を受けながら思った。さすがに近すぎないか このたた猶を螏む鬌の前たで出お行ったら、私がただの倉質者になっおしたう。いたスヌツ姿で滑り台の脇にいるのもかなりおかしい。自分の子どもがいるわけでもないのに。

 たたも想像をめぐらせおオロオロしおいるず、぀いにカヌン ずいう音がした。別の少幎の足によっお猶は蹎られたのだった。

 振り向いおみるず私に指瀺を出しおいた少幎の姿は消えおいた。足音も聞こえなかったけど、もう隠れたのだろうか。猶けりの性質䞊、シヌムレスで次のゲヌムは始たっおいた。

 私はもう付き合う必芁はないなず思い、公園を埌にした。

 アパヌトに着く頃には蟺りは暗くなっおいた。階段を䞊り203号宀に入る。共同の颚呂たで行くのも億劫になり、䜕も食べずにそのたた眠っおしたったのだった。翌朝ふたたびスヌツを着る時になっお、あのキャラメルの存圚を思い出した。ポケットを探るず頌りない感觊があった。取り出すず森氞ミルクキャラメルの包み玙だけが手の䞭に残っおいた。

いいなず思ったら応揎しよう