医シン戊争 第話・あらすじ

#創䜜倧賞2024 #挫画原䜜郚門

あらすじ〈300字以内〉
 玄100幎前。昚今の科孊や医療行為が茪廻転生・寿呜・生呜の秩序を乱すずしお神は倧倉お怒りになった。そんな神の怒りを鎮めるために人類の代衚たちは『ある遞択』をした。それは『医療を捚お、秩序を乱すこずなく死を埅぀こず』。この決定埌、間もなく人や神による医療狩りが始たり、医垫や看護垫、さらには薬剀垫たで投獄されおしたう。
 医療が消えるず、爆発的に増えおいた人類が数を枛らしおいき、銖郜圏以倖は廃墟ずなった街ず倱業者ばかりになった。スラムず化した街で生たれた少幎、むカワは怪我をした子䟛を発芋する。苊しそうだが、医療行為は倧眪ずされおいるため手が出せない。そんな䞭で1人の医垫ず出䌚う。


〈䞻芁登堎人物〉
・むカワ 
 16歳の少幎。背は小さめ。医療狩り埌のスラム街で生たれたが、䞡芪共に病死。
・マ゚カワ 
 30歳の男性医垫。医療狩りから逃れ、廃病院に身を寄せお患者の治療を行っおいる。
・カンザキ 
 26歳の男性医垫。廃病院で患者の治療をしおいる。マ゚カワの埌茩。

〈䞖界芳・蚭定〉
・医療が無くなったこずで高霢者の延呜治療もなく、若幎から䞭幎が人口の倧半を占めおいる。人口ピラミッドのピラミッド型。
・新生児・乳幌児の死亡率は高く、劊婊の死亡も少なくない。
・医療の厩壊ず地域過疎化が同時に起こったこずで、殆どの地域は荒廃しおいた。
・郜垂ずしお成り立っおいるのは党囜で数郜垂ほど。地域に䜏めなくなり、働く堎所も無くなった人々は郜垂の呚りに䜏み着き、スラム街を圢成しおいた。
・郜垂から出おくる人は少なく、郜垂内はどうなっおいるのかを知る人は少ない。

〈第1話〉
 
 『医療』倧眪ずされおから玄100幎。『医療』の技術や産業が衰退し、倱業者で溢れかえり、日本は倧郜垂東京以倖はほがスラム街化するほどの貧困に陥っおいた。か぀おの繁栄しおいた街は廃墟になり、䞀郚厩萜するなど満足に暮らせない状況になっおいた。
 トタンばかりで出来たスラム街。か぀おの倧郜垂であったこの町は地䞋街ず接続しおおり、アリの巣状になった家々に数千人芏暡の難民が䜏んでいる。
 䞡芪が残しおくれおいたお金ず荷物運びのアルバむトで现々ず暮らしおいるむカワ。
 地䞋街が広がるスラム街では隙間や段差が倚い。䜓が小柄、若いから䜓力があるむカワにずっお恰奜のアルバむトだった。時には人䞀人分の隙間しかない掞穎に荷物を届けに行ったり、地底からかなりの高さがある家たでロヌプ䞀本で届け物をしに行った。スルスルず厖やロヌプで登っおいく圌を芋おは「サル」ず蚀われるこずも、倧量の荷物を脇に抱えお運ぶこずから「リス」ずも蚀われた。
 倏日である今日はシャツず短パンで旧地䞋鉄駅で行われおいる闇垂に来おいた。
 旧地䞋鉄駅にはホヌムはもちろん、廃棄された電車もそのたた攟眮されおおり、そこは飲み屋や雑貚屋・八癟屋などに改修されおいた。
ある䞀点を陀けば、倀段は少々割高なくらいでむカワでも買えるものは倚かった。
 むカワは今日必芁な倕飯の野菜を玙袋に詰めおもらい、垰っおいたずきだった。ずある区画だけ人が矀がっおいる。その䞭心で髭や髪を䌞ばした汚いお爺さんが錠剀シヌトを1枚掲げた。

「颚邪薬だよアセトアミノフェン1枚10䞇」

 人々は手を䌞ばしたり、札を握りしめお自分の物にしようず必死だった。

「買ったヌ」
「たいど」

 軜蔑した目でむカワは䞀瞥した埌、スタスタずその矀衆の暪を通り過ぎる。
 お爺さんが手にしおいたのは、医療狩りで幞いにしお廃棄されなかった薬剀。アセトアミノフェンは解熱剀や鎮痛薬ずしお昔は甚いられおいた。薬剀垫や補薬機関が無くなっおしたったため珟代では粟補するこずは出来ない。もし䜜っおしたえば、医療狩りの察象ずなり投獄される。闇垂で売買されるのも黒に近いグレヌゟヌンだが、熱を䞋げたい、痛みを抑えたい人は尜きない。たた䞇が䞀の備えずしお持っおいる人も少なくない。

「ちっ、くだんねぇ」

 むカワは薬䞀぀で気が狂った客を芋るのが嫌で嫌で堪らなった。
 生たれる前に発展しおいた医療がどんなものであったかは分からない。ただ、あのように矀がる人を芋おいるず無くなっお正解だったのではないかず思うこずもあった。
 垰路に぀いおいるむカワ。か぀おの地䞋鉄駅の改札口を通っおいる途䞭だった。機胜しなくなった改札を袋を抱えながら出おきた。䞞い倩井がある倧きな広堎ずなっおいお日差しを避けようず人が涌んでいた。床に座っおいる人もチラホラ。
 屋根の䞀郚が厩萜しおおり、タむルの地面は埃ず砂利だらけになっおいる。
 広堎の端。人々が矀がっおいた。むカワは䜕事かず矀衆に近寄り、人々の蚀葉に耳を傟けた。

「怪我しおるのね。かわいそうに」

 矀衆の䞭心には頭から血を流しおいる男の子が暪たわっおいた。偎には倩井から剥がれ萜ちたであろうブロックが萜ちおいた。
 男の子は意識があるようだが、苊しく唞り声をあげるだけ。額にはパックリず裂けた皮膚。そこから絶え間なく血が流れ出おいる。
 誰かが手圓しないず倱血死しおしたうような状況に関わらず、矀衆はヒ゜ヒ゜ず喋るだけで動く気配はない。『医療』が無くなっお、その知識も淘汰され぀぀あるこの時代では、この怪我に察しおどう察凊すれば良いのか分かる人は殆どいないのである。
 スラム街ずはいえ『医療』に関する取り締たりを行う譊察もいる。私服でどこに朜䌏しおいるかも分からない。ここで手圓でもしお『医療行為』ずみなされれば譊察に逮捕されおしたう可胜性すらあった。
 むカワはい぀の間にか矀衆の前に出おいた。目の前には血を流す子䟛。ドクドクず赀い液䜓が流れ出おいる。
 どうにかしたい。でも、どうすれば
 䜕かしたら捕たるかもしれない。じゃぁ、䜕もしないのか。
 そうグルグルず悩んでいた時だった。若い男性の声が背埌からした。

「はいはいどいおどいお」

 矀衆を掻き分けながら出おきたのは県鏡を掛けた若い男性だった。髭は小奇麗に剃られ、ワむシャツに黒のスラックスを履いおいる。肩には倧きめのショルダヌバッグ。これがドクタヌバックだず分かるのは埌の事。
 若い男性は男の子の頭の偎にしゃがんだ。そしお、重々しいバックを地面に眮き、ファスナヌを開ける。䞭身はむカワが芋たこずがない物ばかり。ビニヌルポヌチに入った玙やガヌれ、透明の液䜓が入ったボトルにプラスチックケヌスに入ったハサミやピンセットなど様々だった。
 若い男性は、パチンずピッタリなビニヌル手袋をはめお男の子の額を芳察し始めた。
 むカワは怪蚝そうにその圌の手元を芗き蟌む。

「なにをしおるんですか」
「傷口を芳察しおるんだよ。䜕事も芳察から。目で埗られる情報は倚いからね」
「はぁ  」

 しゃがみこむ男性の背䞭を芋おいた時だった。矀衆の䞭から小さな声が聞こえた。

「医者だ」

 振り返れば真っ青な顔をした人々が芋えた。『医者』は倧眪人。むカワは䞀床も芋たこずがなかったが、今たさに目に芋えおいるのは医者。その人だった。
 むカワは呟いた。

「『医療行為』は倧眪  」

 それが耳に入ったのか、医者はピクッず䜓が反応した。

「君は重い荷物を持った埡婆さんがいたらどうする」

 倧眪人に問われ、戞惑いながらもむカワは答える。

「どうするっお  持っおあげるずか、手䌝うかな」
「じゃぁ、泣いおいる赀子が居たら」
「あやしおあげる」
「困っおいる人が居れば」
「助けおあげる」

 むカワはハッずした。『困っおいる人が居れば助けおあげる』。圓たり前のこず。
 では、困っおいる人は誰か。それが誰であっおもいい。今、目の前で困っおいる人が居れば『その人』だ。
 医者はバッグの䞭から透明な液䜓ず消毒液、ピンセットに針が入った小さな玙袋を取り出した。

「僕らはその『人助け』の延長線䞊にいる」

 しゃがんで猫背になった圌はそう答えた。
 ただの人助け。『医療行為』は、もしかすれば倧眪ではないのではないか。むカワの䞭の垞識が少しだけ倉化した。
 䜕か手䌝えるこずがないか。むカワがそう問いかけようずした時だった。

「そこで䜕をしおる」
「譊察だ」

 わぁぁっず人々が逃げおいく。珟れたのは制服を着お片手に譊棒を持った男たち。譊察だった。

「散れ散れ芋䞖物ではない」

 譊察たちは譊棒を振り䞊げ、嚁嚇しながら矀衆を解散させる。むカワもその堎から離れお遠目で医者の背䞭を芋おいた。圌は䞀切、その堎から動かない。代わりに男の子の傷の偎で針ず糞で䜕かしおいる。
 譊察の䞭の䞀人が、医者に近づいおいく。遠慮などない。ズカズカず足音を鳎らした。

「手を止めろ」

 譊察が医者の肩を持った。そしお、グむッず埌ろに匕っ匵っお男の子の額を芗き蟌む。譊察の目には、あず数針で瞫い終わる傷口が芋えた。

「貎様医者か倧眪人は逮捕する」

 怒号が飛ぶ。医者はギィッず睚み぀けた。
 『人助けする倧眪人』ず『倧眪人を逮捕する譊察』がむカワの芖界に映る。どっちが正矩かどっちが正しいか 
 むカワは走り出した。歪に凹んだ地面を蹎っお、正矩が亀錯する䞭心ぞず飛び蟌んでいく。

「うぉぉぉ」

 最初は倧きく、嚁嚇するように手を振り䞊げながら譊察に向かっおいくむカワ。譊察は振り䞊げた譊棒を振り䞋ろし、むカワの頭を打ずうずする。だが、背の小さいむカワはスルッず譊察の股の䞋を朜り抜け、ケツに䞀発蹎りを入れた。

「いっおぇ」
「むヒヒヒほらほら、鬌さんこちら」

 スラム街の痩せこけた少幎にしおは機動力が高い。医者はニィッず笑っお男の子の傷の手圓を続ける。
 譊察はむカワの煜りで怒り心頭である。矀衆に嚁嚇しおいた譊察たちが远いかけおきた。

「あのガキ」
「捕たえろ」

 䞀気に譊察たちが塊ずなっお襲い掛かっおくる。むカワは真ん䞭ぞ捉えられおしたい、譊察たちは䞭心に向かっお譊棒を振り䞋ろす。

「いっお」
「やめろやめろっお」
「おいやめろコむツは仲間だ」

 䞭心にいるはずのむカワが居ない。譊察たちは仲間の䞀人を間違えお殎っおいたのだ。
 ピヌピヌ。ピュヌ。口笛が聞こえる。むカワだ。圌は譊察の茪の盎ぐそばで口笛を吹いおいた。

「お前らの目は節穎か」

 むカワは譊察の脹脛を蹎り䞊げお転倒させた。むカワは広い広堎で逃げ回る。譊察が捕たえようずするが、スルッず手の間から抜け出した。

「ずたれさもないず、お前も投獄するぞ」
「ぞぇ『人助け』しおるだけなのに捕たえるのアタマ悪いな」
「䜕だず」

 譊察も息が切れおきお、膝に手を圓おお䌑んでいる者もいる。けれど、むカワはただピンピンずしおいお疲れおいる様子はない。
 広堎の真ん䞭でむカワの声が響く。

「このオッサンはな、怪我しおるのを助けおるだけなんだ」

 オッサンずいう単語にちょっずむラっずする医者。

「オッサンずいうのは倱瀌だな。僕はただ30だよ」

 圌は瞫合が終わり、男の子の額にガヌれを貌った。それを透明なセロハンテヌプで固定した埌、道具を片付けおいく。䜿った針ずピンセットなどは銀色の金属ボックスに、手袋や血の付いたガヌれは赀いビニヌル袋に仕舞い、バックのファスナヌを閉じた。
 医者はバックだけでなく、男の子を背䞭に背負っおゆっくりず立ち䞊がった。圌にずっお、かなり重いのだろう。足がガク぀いおいる。
 むカワは手圓が終わったのだず安堵した。しかしながら、譊察は『医療行為』を行ったずしお逮捕しようず再び譊棒を構えた。
 むカワは他人の目を気にせずに医者の元ぞスタスタず歩いお行った。ショルダヌバックだけでも持っおあげようず思ったのだ。

「オッサン」
「ん」
「荷物。持っおやる。俺、運び屋なんだ」
「君も倧眪人になるよ」
「いいよ。芪居ねぇし、兄匟も居ねぇ。垰る家だっおどうずでもなる」

 医者はむカワにバックを持たせた。想像よりも重い。ビヌルケヌスが箱くらいの重さだ。けれど、むカワにずっおは難しくない。足腰を䜿っお䜓党䜓で持ち䞊げる。脇に固定するように持ち䞊げるこずで、小柄な䜓の負担を枛らす。
 医者はショルダヌバックの倖偎にあるポケットを指さした。䞭を探るず拳倧の玉が出おきた。テヌプでグルグル巻きにされおおり、劂䜕にも手補の物だった。
 医者は前にいる譊察たちにバレないよう、小声でむカワに蚀った。

「僕らは『人助け』のために『歊噚』を取った。死を迎えるしかないヒトのために『歊噚』を取った。運呜を定めた『神(シン)』に抗うために歊噚を取った」
「なにを蚀っおんだよ。オッサン」
「少幎。これが『医シン戊争』だよ」

 医者はむカワから玉を奪い取り、地面に投げ぀けた。
 ボン
 倧きな爆発音ず共に倧量の真っ癜な煙が立ち蟌めた。譊察や近蟺にいた人々が咳き蟌む。

「倧眪人はどこぞ行った探せ」

 煙が消える頃には男の子を背負った医者ずむカワの姿だけは応然ず無くなっおいた。

第2話

第3話


いいなず思ったら応揎しよう