顎関節症は治せる【根本原因と向き合う】
こんにちは。
医療法人社団樹伸会理事長の石幡一樹です。
前回の記事では、私が歯科医師として歩んできた道のりと、父から受け継いだ「顎関節症治療」についてお話ししました。
今回の記事では、顎関節症は「なぜ自覚されにくいまま進行してしまうのか」、「なぜ放置や対症療法では改善しないのか」をお伝えします。
顎関節症に悩む多くの方に届いたら嬉しく思います。
◼︎顎関節症とは
顎関節症は、顎の周囲の筋肉や関節に必要以上に負担をかける傾向のある方がなりやすい疾患です。
本来、顎の周囲筋は「咀嚼や会話時のみ」に使われる筋肉です。
ところが、TCH(歯列接触癖)や偏咀嚼により、顎周囲の筋肉が収縮し続けることで「過緊張」となり発症のリスクが高まります。
これを「コップ」に例えて考えると分かりやすいかもしれません。
各個人が持つコップから水が溢れたときに顎関節症が発症すると仮定すると、TCHや偏咀嚼といった生活習慣は、コップの中の水位を少しずつ押し上げ、限界に近づけていく要因になります。
つまり、こうした習慣が積み重なることで、顎関節症を発症しやすい状況をつくり出しているのです。
◼︎顎関節症は「治せます」
はっきりとお伝えしたいのは「顎関節症は治せる」ということです。
実際に、当院での治療により通院2~3ヶ月で170名の患者の85%が改善し、半年の通院で99%の方が改善しています。
「もう治らないと言われた」
「年齢のせいだと言われた」
「様子を見るしかないと言われ続けてきた」
そのような患者さんを、これまで数多く診てきました。
もちろん、1回の治療で魔法のように治るものではありません。
顎関節症は、生活習慣や癖が関わるため、患者さん自身の取り組みも必要です。いわばリハビリに近い側面があります。
ただ、原因を正しく見極めて、「下顎の動きに偏りが出ないように、バランスのよい下顎の使い方」を身につければ、改善はできます。
私がこの治療に確信を持っているのは、父の経験が原点にあります。
父は顎関節症になったとき、学生時代に習った「一般的な治療」を一通り試しても治らなかったそうです。
そこで下顎の位置や使い方に着目してアプローチしたところ、父自身の症状が改善し、同じように悩む患者さんでも結果が出たのです。
その考え方を父は書籍や講演で広めていました。
私は学生時代、父の講演に同行し、その姿を間近で見てきました。
父が急逝した2015年以降は「顎関節症治療メソッド」を引き継ぎ、自分の臨床として磨き続けています。
◼︎「自覚のない顎関節症」がとても多い
顎関節症というと、「顎が痛い」「口が開かない」「音が鳴る」という分かりやすい症状を想像されると思います。
しかし実際には、自覚のない顎関節症の方がとても多いのが現実です。
当院では顎関節症の患者さんだけを特別に診るのではなく、通常の歯科診療や定期健診の際にも、
・口内の状態
・噛み合わせ
・顎の動き
・口の開け閉めの左右差や音
などを必ず確認しています。
すると「顎は別に痛くないです」という方でも、顎の動きが偏っていたり、筋肉が過剰に緊張していたり、開閉の軌跡が滑らかでない方が少なくありません。
顎関節症は、痛みが出てから突然始まる病気ではなく「気付かない負担の積み重ねが、ある日“症状”として表に出る」ことが多いのです。
◼︎顎関節症が若い世代・女性に多い理由
臨床の実感として、顎関節症の患者さんは増えてきています。
特に多いのが「10代後半から30代の若い世代」です。
背景には、スマートフォンやパソコンの普及やストレス社会の影響があります。
下を向いて画面を見る時間が長いほど、上下の歯は接触しやすくなります。
上下の歯が接触している状態を「TCH(歯列接触癖)」と言い、現代の生活習慣病の一種とされています。
本来、上下の奥歯が接触してよい時間は、1日24時間のうち合計で約20分程度と言われています。
つまり、残りの23時間40分は歯がくっついていない状態が自然なのです。
ところが現代では、無意識のうちに歯が触れ続け、顎の筋肉が休めない。
顎の周囲には「咬筋」という筋肉があります。
私はこれを、よく「ペンを持つ話」で説明します。
どんなに軽いペンでも持っているだけで多少の負荷があり、短い時間では影響がなくても、何時間も続けば腕の筋肉は疲れます。
歯の接触も同様で、気付かないうちに負担が蓄積します。歯の接触は無意識行動であり、この状態が長期間持続することで咬筋が慢性的に収縮(緊張)し、徐々に筋肉が発達していきます。
すると「ますます上下の奥歯が接触しやすくなる」という悪循環になります。
また、顎関節症は男性より女性に多い傾向があります。
理由としては、男性と比べて筋肉量が少なく口まわりの筋肉が弱いこと、咀嚼時の負担が一点に集中しやすいこと、ストレスの影響を受けやすいことなどが考えられます。
顎関節症は「多因子性」と言われ、原因がひとつではありません。
その中でも早期に変えやすいのが、生活習慣や癖といった、いわゆる「行動要因」です。
・片噛み
・不良姿勢
・無意識の食いしばり
・頬杖
・歯をくっつけ続ける癖(TCH)
こうした「自分では気付きにくい癖」が積み重なり、顎に負担をかけ続けます。
◼︎顎関節症は放置しても治りません
ここでもはっきりお伝えしますが、顎関節症は放置しても治りません。
放置していると、
・食事ができないほどの強い痛み
・口が開かない
・顎が外れそうになる
といった状態に進行することがあります。
さらに厄介なのは、顎の不調が顎だけにとどまらないことです。
顎の筋肉は、こめかみ(側頭筋)や首肩の筋肉ともつながっており、その緊張が広がっていくため、
・頭痛
・耳鳴り
・肩こり
・首の痛み
などの症状につながることもあります。
◼︎顎関節症は「対症療法」では改善しません
顎関節症は、「マウスピースを作って様子を見る」「痛み止めで経過を見る」といった処方をされることが多いようですが、これらは対症療法であり、一時的に症状を和らげているに過ぎません。
また、最新の知見では顎関節症の治療目的にマウスピースをはめて様子を見ることは「無意味・もしくは悪化の可能性がある」とされています。
ただ、これを知らない歯科医が90%以上と思われます。
顎関節症は「痛みを抑える」だけでなく、根本原因を正しく見極め、日常生活における負担のかかり方そのものを変えることが治療の本質です。
◼︎当院では「動画」を用いて変化を共有します
当院では、患者さんの同意を得たうえで、顎関節症治療の際に顎の動きを「動画」で記録します。理由は二つあります。
一つは、患者さんご自身に見てもらうためです。
「あなたの顎は今こう動いています」と目で確認すると、理解が一気に深まります。
もう一つは、顎関節症は生活習慣が大きく影響するため、患者さんの努力や癖の修正が改善の近道になるからです。
受診したときだけの治療では改善しにくいのが顎関節症の特徴です。
動画で変化を共有することで、日常生活の中でも意識しやすくなります。
※動画は個人情報として適切に管理しますのでご安心ください
今回の記事は以上です。
次回はより深く、顎関節症や治療についてお伝えしていきたいと思います。
顎関節症や口内の悩みを持つ方のお役に立てる情報を、これからも発信してまいります。
フォローや記事へのスキを頂けましたら励みになります。
医療法人社団樹伸会
理事長 石幡一樹
