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【連茉小説】LOVERS #3 それぞれの葛藀

リオンずさくらを仲盎りさせるための方法ずしお取られた共同生掻。半ば匷制的だったものの、さくらは自身の成長のためにしばらくここで暮らすこずを決意。圌女の匷い思いを聞いたリオンも腹をくくり、眠りに぀く。




第䞉話2026.8.30曎新

さくら

 隣で寝おいる麗華ちゃんを起こさないよう、そっず郚屋を抜け出す。ただ早い時間だが、倜は明けおいる。リビングを芋回し、少しだけ窓を開ける。入っおきた颚に秋の氣配を感じた。

 窓の倖をじっず芋぀めおいるず、急に声がする。

「早いな、さくら」
「  おはようございたす」

 声をかけおきたのは智節さんだった。

「慣れない堎所ではうたく眠れなくお  。カヌテン越しに空が癜々明けおきたのが分かったので、思い切っお起きおしたおうず  。あ、麗華ちゃんはただ寝宀で寝おいたす」

「そうか」

「智節さんの方は」

「い぀ものこずさ。遅くに寝おも早く目が芚めちたう。だから普段は誰の邪魔にもならないよう、たた邪魔もされないよう、音楜スタゞオで䞀人、匟き語りをしお過ごすこずにしおいる」

「いいですね、匟き語り。今から匟くんですか」

「ああ」

「あの  。邪魔にならないずころにいるので、匟いおいる姿を描かせおもらえたせんか 私も、絵の緎習がしたいんです」

「構わないよ」

「よかった」

 ちょうど手持ち無沙汰だったし、朝の静かな環境でスケッチしたいず思っおいたずころだったので、圌が快く了承しおくれたこずに安堵する。リビングに眮いおあった鞄からスケッチブックず筆蚘甚具を取りだした私は、智節さんの埌に぀いおいく。


   


 智節さんは、スタゞオに入るずすぐにギタヌを手に持ち、無心になっお匟き始めた。その暪顔は䜕かに取り憑かれおいるかのように凛々しい。矎しいずさえ感じる。スケッチさせおもらえる喜びを感じながら、私自身もい぀しか無心になっお手を動かす。氣づけば䞉十分ほどが経過しおいお、描き䞊がった頃に圌の挔奏も終わった。

「無心で匟いおいる暪顔、ずおも玠敵でしたよ」
 スタゞオを出おいく智節さんに、描いた絵を芋せた。

「  僕じゃないみたいだ。颚景画が埗意だっお蚀っおたけど、僕に蚀わせりゃ人物画も充分うたいよ」

「ありがずうございたす。でも、本栌的に人物画ず蚀うか、䌌顔絵を描くようになったのは皆さんず出䌚っおからなので、私ずしおはただただで  。そうでなくおも矎倧では、モデルを芋ながらデッサンするのが苊手で  。描くならやっぱり動きの少ない颚景か、抜象画の方がいいですね  」

「誰にでも埗意䞍埗意はあるよ。自分ではただただず思っおるものの方が評䟡されるこずも、たたある」

「智節さんにもあるんですか、そういう経隓が」

「䟋えば  歌声ずか」

「えっ 歌、埗意じゃないんですか ラむブではあんなに堂々ず歌っおいるのに」

 意倖な答えに、思わず目を䞞くした。圌は小さく笑っお蚀う。

「拓海ず二人でバンドを組んでたずきはほずんどあい぀が歌っおたし、実際、あい぀の方がうたいからな。でもあい぀は声を倱っちたったから、今は僕が代わりに歌っおいるだけだよ。なのに、こんな僕の歌声が奜きだず蚀っおくれる人がいる  」

「  セナちゃんのこずですか」

「  セナもその䞀人、かな」

「いいですね。お二人が信頌関係にあるのが分かりたす」

「    」

 自分なりに恋仲である二人を耒めた぀もりだったが、圌は難しそうな顔で沈黙した。もしかしたら、圌はセナちゃんずの関係で悩んでいるのかもしれない。同じ音楜家同士でも分かりあうのが難しいのだずしたら、画家である私ずキヌボヌディストのリオンくんが真に理解し合うのはもっず難しいかもしれない。


 

 少しの䞍安を抱きながらリビングに戻るず、拓海さんに叩き起こされたらしいリオンくんが䞍機嫌そうな顔でダむニングチェアに座っおいた。目が合ったずき睚たれた氣がしお、衚情を曇らせる。


「おいおい、せっかく爜やかな朝を迎えたっおのに、苛立った空氣を巻き散らさないでくれよ」

 智節さんが愚痎をこがすず、リオンくんが反論する。

「いきなり起こされたこっちの身にもなっおよ  。ったく、幎寄りは朝が早いっお聞くけど、本圓なんだな。これじゃ身が保たないぜ  」

「ふん  。どうやらお前はずっず甘やかされお育ったらしいな。普段はどうか知らないが、ここではここのルヌルに埓っおもらう。い぀も蚀っおいるようにな」

「ちぇっ  。ルヌル、ルヌルっお  。芏則を砎れっお蚀ったのは兄さんじゃなかったっけ」

「僕らが蚀っおるのは、垞識を疑え、だ。間違えないでくれ」

「  めんどくさっ」

 リオンくんは心底嫌そうな顔をした。

「たぁたぁ  。ずりあえず朝ご飯にしたしょうよ。食べたらむラむラも収たるはずよ。はい、麗華特補の目玉焌きトヌスト。リオンが䞀番先に食べるずいいわ」

 空氣を読んだ麗華ちゃんがリオンくんの前に皿を眮いた。圌は小さな声で「いただきたす」ず呟き、箞を぀け始める。

「  ふんっ。うたいのは圓然だよ。出来合いのパンに目玉焌きのせただけなんだから。特補でもなんでもねえや」

 圌は終始、文句を蚀いながら食べ続けた。そのせいで、党員が食卓に぀いたあずも䌚話は少なく、重々しい空氣が挂ったたただ。圓然ながら私自身、和解の話し合いをするどころか、圌ず目を合わせる氣にもなれない。

「こんな調子じゃ、先が思いやられるわね」
 沈黙を砎るように麗華ちゃんが蚀い、智節さんが応じる。

「焊っちゃダメだよ、レむちゃん。二人の生掻は始たったばかりだ。僕だっお、レむちゃんを赊せるようになるたでにはかなりの時間を芁した。枩かい目で芋守っおやろう」

「そうね  。でも、あの時は拓海の呜がかかっおたじゃない 二人ずは、眮かれおいる状況が違うわ」

 そのずき、拓海さんが手話を䜿っお䜕かを䌝え、私ずリオンくんの肩に手を眮いた。
「  䜕が、二人を信じるだよ。期埅されおも困るし」
 拓海さんの手話を読み取ったリオンくんは、たすたす眉間にシワを寄せた。

圌ずいるず、心が乱れる  。

 同じ空間で過ごそうず決めおからただ䞀日も経っおいないのに、早くも私は逃げ出したい氣持ちになっおいる。昚日は苛立ちが勝っおいたから匷氣だったし、即決もできた。しかし、䞀晩経ったらそれも萜ち着いおしたい、なぜ自分がこの堎にいるのか分からなくなっおしたった。





 みんながモヌニングコヌヒヌを飲む間、私は自分が食べた分だけさっず掗っお片付け、その堎を離れた。このあずも仕事の関係で同垭しなければならないこずを考えるず氣が重かった。こんなこずでは玍埗のいく絵を描くこずも出来ない  。

 無性にむラむラした。手を動かしたい衝動に駆られた私は、スケッチブックず鉛筆を持぀ず、䞀人になれる唯䞀の堎所である庭に飛び出した。

 雑草の倚い庭の片隅に、圢ばかりのテヌブルず怅子が眮いおある。私はそこに腰掛けおスケッチブックを広げ、思い切り曞き殎った。䜕も考えず、手の動くたた乱雑に。


 䞀枚では氣持ちが萜ち着かず、同じ䜜業を䜕床も繰り返した。五枚目に突入したずき鉛筆の芯が折れ、我に返る。

 私はどれほどの力を蟌めお曞いおいたのだろう   スケッチ甚の鉛筆は柔らかく、折れやすいのは事実だが、今たで描画䞭に芯が折れたこずなどなかった。

 冷静になっお曞き殎った絵に目を通す。乱暎に走った線を芋お、改めお自分の感情が乱れおいたこずを知る。しかし  。

私にもこんな絵が描けるんだ  。

 線が现く、粟密なスケッチを埗意ずする私にずっおそれは倧きな発芋だった。決しお人に芋せられるものじゃないけれど、荒々しさを衚珟したいずきにはこんなふうに描けばいいんだず、自分の絵に教えられた氣がした。

 そこぞ、拓海さんがギタヌを持っおふらりず珟れた。圌は軜く手を挙げ、テヌブルにコヌヒヌの入ったカップを眮いた。お前の分だ、ず蚀いたげな衚情。小さく頷くず、圌は私の向かい偎にあった怅子を匕っ匵り出しお座り、そこでギタヌを爪匟き始めた。

 最初は指の運動なのか、心地いいアルペゞオの曲を匟いおいた圌。だが、私の乱れた絵に目を留めるず急に匟き方を倉えた。ピックを手に持ち、荒々しく、力匷く匊がかき鳎らされる。聎く者の心をもかき乱すような、重い゚ネルギヌがギタヌから攟たれおいるように感じた。

 匟き終えた拓海さんはにやりず笑った。そしお卓䞊の鉛筆を持ち、スケッチブックをコツコツず突いた。癜玙のペヌゞを開け、ず蚀いたいらしい。
 圌は声を倱っおいる。普段のコミュニケヌションは手話で行っおいるが、私が手話を芚えられないので、私だけ筆談か、手話の分かる仲間の通蚳を介しお意思疎通をしおいる圢だ。

 慌おお癜玙のペヌゞを開いお枡すず、圌は嬉しそうに筆蚘する。

ええず   今のは、さくらの絵から感じ取ったむメヌゞを膚らたせお匟いたんだ。むむ感じに怒りを衚珟できおただろう だっお  。さすがは拓海さん。あんな絵からでも、瞬時に私の感情を読み取るなんお。

「お恥ずかしい限りです  。わたしの醜い感情を芋られおしたったあげく、音にたで倉換されおしたっお」

 萜ち蟌む私に察し、圌は笑顔で銖を暪に振り、再び筆蚘する。

 ――ネガティブな感情を嫌うな。知っおるだろう 若かりし頃の俺たちが、シンガヌ゜ングラむタヌ・レむカぞの恚みを音楜に倉えお゚レキをかき鳎らしおいたこずを。怒りや憎しみは行動の原動力になる。負の゚ネルギヌは人ではなく、芞術に振れ。そうすれば必ず道は開ける  。

 仲良く暮らしおいる今の圌らからは想像も付かないがその昔、拓海さんず智節さんは、䞀人だけメゞャヌに匕き抜かれた麗華ちゃんを深く恚んでいたず聞く。楜噚もアコギから゚レキに持ち替え、鬱屈ずした想いを電子音ず歌に蟌めおきたのだず  。

「じゃあ、私の今の氣持ちも、やり方次第では芞術に昇華できるず蚀うこずですね」

 拓海さんが頷くのを芋お、圌らが私たちに共同生掻を提案した、真の意味がようやく分かった。ここでの生掻は、仲盎りしたり、ただ盞手を理解したりするのが目的ではない。自分の内面で枊巻く感情ず真摯に向き合い、アヌティストずしおそれを圢に出来るようになるためにするのだ。

「ありがずうございたす、拓海さん。うたくいくかは分からないけど、私、この感情を嫌わずに味わっおみようず思いたす」

 私が蚀うず拓海さんは、それでいい、ず発声せずに口を動かした。


リオン

 案の定、眠りは浅かった。早起きを匷制されたうえに無理やり食事をさせられたおれは、䞍満であるこずを瀺すためにリビングの゜ファで䞀眠りしおやった。だが、䞉十分も経たないうちに、ギタヌの音が聞こえおきお目が芚める。芋れば、拓海兄さんが庭で思いきりギタヌをかき鳎らしおいるずころだった。

「んだよ  。こんな朝っぱらから。近所迷惑だろ  」

 しかし、本圓に迷惑を被っおいるのはほかでもない、おれ自身だ。それだけじゃない。䞀睡したこずで収たった苛立ちは、兄さんのそばで埮笑んでいるさくらの姿を芋た途端にぶり返した。

「ちっ  」

 ぀いこの前たでおれに向けられおいた笑顔が遠く感じた。これは断じおさくらが奜きず蚀う意味ではなく、おれに察しおよそよそしくなっおしたったこずに、苛立ちず䞍満、今なら嫉劬心を抱いおいるず蚀う意味だ。

おれ、䜕か間違っおるかよ  。

 遠い日のこずのように感じられるが、あれは昚日の晩の出来事だ。おれは、さくらの絵に高倀が付いたず聞いお玔粋に嬉しかった。だから感じたたたに䌝えた。それなのに激しく反発されお「なんでだよ」っお  。䞀晩経っおもその氣持ちは倉わらない。

だっおさくらは、ほんのちょっず前たで貧乏絵描きだったんだぜ おれがさくらの立堎なら、自分の絵を高く買っおもらえたら絶察に嬉しいけどなぁ  。

 さくらのそばでギタヌを匟いおいる拓海兄さんだっお、売れない頃のさくらを随分氣にかけおいた。画家ずしお独り立ちするこずだっお望んでいたはず。でも、今の兄さんはさくらの味方。その䞖界で高評䟡されるこずず、䜜品に高倀が付くこずはむコヌルだず考えるおれの意芋は受け容れられない  。

「そんなに氣になるなら、庭に出おみたらいいじゃない」
 窓の倖を睚むように芋おいたら、麗華姉さんが急にお菓子の袋をおれに手枡した。

「なに、これ」

「コヌヒヌのお䟛にどうぞ、ずでも蚀っおさりげなく䌚話に加われば   拓海に嫉劬しおるんでしょう その顔を芋れば分かるわよヌ」
「  違ちげぇし」

 反論はしたものの、おれは無意識のうちに菓子袋に手を䌞ばしおいた。


 


 庭に出るず、二人が同時にこちらを芋た。おれは敵意がないこずを瀺すように菓子の袋を掲げた。反察の手には、自分甚のコヌヒヌも持っおいる。


「これ、良かったらコヌヒヌず䞀緒に。  おれも混ぜおもらっおいい」
 顔色を窺うように蚀うず、二人は目を合わせおから頷いた。

 そのわずかな隙に、さくらが描いおいたであろう絵を盗み芋る。画甚玙党䜓を埋め尜くすように匕かれた黒い線。䜕も考えずに曞き殎ったような、絵ずも蚀えない絵。こんなのは初めお芋た。が、これはきっずさくらの心そのものなのだろう。

ただ怒っおるんだろうな  。

 芋おいたら胞が苊しくなったので、すぐに目線を䞊げる。ず、拓海兄さんが芁らぬ氣を回しお立ち去ろうずする。

「行かないで 兄さんもここにいおよ。っお蚀うか、おれにも兄さんの挔奏、聎かせおよ。さくらだけ、ずるいじゃん」

「ずるい  」

 さくらの反応を芋お、最埌の䞀蚀は䜙蚈だった、ず口を芆うが、時既に遅し。しかし、たあたあ、ず兄さんがさくらをなだめ、堎を和たせるようにギタヌを匟き始める。

 兄さんが遞んだのは、おれがさくらのために䜜った曲「カラフルワヌルド」だった。よりによっおこの曲か  。しかし、自分から匟いお欲しいず頌んだ手前、やめおくれずも逃げ出したいずも蚀えなかった。

 だが、本来ピアノで匟くこの曲のギタヌ挔奏は新鮮だった。歌い手がいなくおも䞖界芳がむメヌゞできる、玠晎らしい曲だず蚀うこずも分かった。

「  ああ、改めお思うよ。我ながら、いい曲䜜ったなぁっお」

 挔奏が終わっおすぐに感想を䌝えた。兄さんは声を䞊げお笑う代わりに膝をばんばん叩いた。

 ――そうだよ、いいんだよ、リオンの䜜る曲は。だけど、今䞀床思い出しおみろ。『カラフルワヌルド』は誰のために䜜った曲か。そしお、どんな氣持ちで䜜ったのかを。今のリオンは初心に返るこずが必芁だず俺は思うよ。

「初心  」

 ――それに加えお、今の氣持ちも衚珟しおみるずいい。䜕か、新しい発芋があるかもしれないぜ

「今の氣持ち、か  」

 迷い、怒り、嫉劬  。さくらがスケッチブックに曞き殎ったように、自分の感情を衚珟したらどんな音になるのか  。兄さんの蚀葉に刺激され、すぐに詊しおみたくなる。

「兄さん、スタゞオを借りるぜ。今の今、感じおるこずを音にしおくる」
 ――ああ。奜きに䜿っおくれ。

 結局、さくらずコヌヒヌを䞀緒に飲むこずなく音楜スタゞオに盎行した。





 この家には狭いながらも防音蚭備の敎った音楜スタゞオがある。最初は圌らのギタヌしか眮いおいなかったが、おれたちきょうだいがメンバヌに加わっおから、緎習甚のドラムず電子鍵盀キヌボヌドも眮いおもらっおいる。

 おれは早速電子鍵盀キヌボヌドの前に立ち、鍵盀に指を眮いた。


「今の氣持ち、今の氣持ち  」
 さっきさくらがおれに向けた衚情を思い浮かべ、そこから湧き䞊がる感情を味わう。

 あれは明らかにおれを軜蔑する目だった。そしお、画甚玙に曞き殎られた線はおそらくおれに察する怒りの衚れ  。

さくらはおれにどうしお欲しいんだよ   おれがあの時、どんなに金を積たれおも電子鍵盀キヌボヌドを売らないず蚀えば満足したのかよ  

 目の前の電子鍵盀キヌボヌドは麗華姉さんが甚意しおくれたもの。思い入れは党くないが、これがあれば音楜は䜜れる。それじゃあダメなのか  

 ――今のリオンは初心に返るこずが必芁だず俺は思うよ。

 拓海兄さんの蚀葉がよみがえった。初心  。確かにおれの音楜はあの、 、電子鍵盀キヌボヌドず共にある。今でもそうだ。自宀に垰れば幌少期からずっず䞀緒にいる電子鍵盀キヌボヌドが出迎えおくれる。盞棒、ず蚀えば盞棒。それを、お金ず亀換できるか ずさくらは問うた  。

盞棒ったっお、所詮は楜噚だろ  。思い出にしがみ぀いたっお、金にはならない  。そうだろう  

 自問しおみるも、胞のあたりがモダモダしお萜ち着かない。

 ――今䞀床思い出しおみろ。『カラフルワヌルド』は誰のために䜜った曲か。そしお、どんな氣持ちで䜜ったのかを。

 再び、兄さんの蚀葉が頭の䞭に鳎り響いた。

 あの曲は、玔粋にさくらを応揎したくお䜜った。喜んでもらいたいずいう䞀心で  。そう、報酬なんお求めおなかったし、実際、そんなものは受け取っおいない。代わりにおれは、さくらずいう、共に芞術性を高め合えるパヌトナヌを、盞棒を埗た  。

そうだ  。おれは金では買えないものを、あの曲を䜜ったこずで埗たんだ  。

 ひょっずするずさくらは、その時の氣持ちをずっず倧事にしおいるのかもしれない。だから、あんなこずを蚀ったおれに倱望した  。そういうこずなのだろうか  

 理想ず珟実、思考ず本胜ずが脳内で入り乱れる。衚珟するなら今しかないず、䜕も敎理されおいない頭で、鍵盀の䞊に眮いた指を動かす。

 自分でも驚くほどに乱れた音。これが、今の氣持ちか。ざらざら、ゎツゎツ、ドロドロ  。そんな蚀葉が䌌合いそうな、ずおも音楜ずは蚀いがたい䜕かがおれの指から生み出されおいく  。

 だが、そのうちにどういうわけか、この電子鍵盀キヌボヌドずは別の音が脳内に流れ始める。䜕だ、これは   

おれはこの音を知っおいる  。あぁ、そうか  。これはおれの電子鍵盀キヌボヌドの音  。䌝えようずしおいるのか、おれに。自分を芋捚おおくれるなず  。

 空耳かもしれない。倢を芋おいるのかもしれない。でもおれは確かに今、盞棒の音を聎いおいる  。

 電子鍵盀キヌボヌドなんおどれも同じだず思っおいた。いや、思い蟌もうずしおいた。でも、違う。おれが最も衚珟したい音を知っおいるのはあの、、電子鍵盀キヌボヌドなのかもしれない  。

 そう、本圓は知っおいたんだ。でも、生きおいくためには金が必芁。そのためだったら䜕だっお提䟛する  。そう思わなければこの道で生きおいけなかった  。それが、真実だ。

 自分の内偎を垣間芋たずき、指から生たれる音が倉わった。ただざら぀きは残るものの、さっきみたいな嫌な感じはなくなっおいた。たるで、敵同士が䞀時䌑戊ずばかりに手を取り合ったかのようだ。

 どうやらここで、共同生掻をする䞊で倧切にしなきゃいけないのは「想い」らしいず蚀うこずが、おれにもがんやりず芋えおきた。たたちゃんずは掎みきれおいない。蚀葉で説明するこずも、電子鍵盀キヌボヌドで衚珟するこずも出来ない。でも、感芚的には、分かった氣がする。

 ――そう、それでいいんだよ  。

 頭の䞭に聞こえおきたその声は、どこか懐かしい感じがした。
「おれの電子鍵盀キヌボヌド   たさかね  」

 吊定の蚀葉を呟いたが、心の䞭心から、今のは確かにおれの電子鍵盀キヌボヌドの声だ、ずいう叫びが聞こえた氣がした。


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「LOVERS」に぀いお

本䜜品は、2025幎8月からnoteで連茉しおいた、いろうたの長線小説です。このたび、玹介動画の䜜成を機に、䞻人公を「さくら」ず「リオン」に絞っお再線成したした。内容は1幎前に投皿したものずほが同じですが、芞術家の葛藀ず成長がより䌝わりやすい構成になっおいたす。


分でわかる「LOVERS」玹介動画はこちら

動画制䜜いろうた  / ピアノ挔奏京泉


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