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SoFi Technologies:銀行免許を持つ米国最大級オンライン金融プラットフォーム(前編:事業編)

はじめに

FinTech企業の調査、第三弾です。SoFi Technologies, Inc.は、2011年設立の米国最大級のオンライン専業金融プラットフォームです。学生ローンの借り換えから始まり、現在は銀行免許を背景に、預金・融資・投資・決済を網羅するワンストップの金融サービスを提供しています。

事業は「レンディング」「金融サービス」「テクノロジー・プラットフォーム」の3セグメントで構成されます。銀行免許を活かした低コストな預金原資と、1つのアプリで複数の金融商品を展開する「金融サービス・プロダクティビティ・ループ」戦略により、高い粗利益を確保しています。

現在は「Everything App」戦略の下、AI活用やサブスクサービスの刷新を通じてクロスセルを推進しています。信用力の高い層への貸付を軸としつつ、技術外販や手数料型ビジネスへのシフトを進めることで、持続的な成長と収益性の両立を目指しています。

事業のプロフィール

沿革

SoFi Technologies, Inc.の起源は2011年に遡ります。スタンフォード大学経営大学院(GSB)の学生であったMike Cagney氏ら4名が、当時「Social Finance, Inc.」という社名で会社を設立しました。

もともとの構想は、卒業生から資金を集め、それを在学中あるいは卒業したばかりの学生に融資するという、いわゆるP2P型の学生ローン借り換えモデルでした。

「学生ローン」をプロダクトとして選択した理由は、当時スタンフォードGSBの学生の65%が借入をしており(共同創業者自身も含む)、学校やその後の就職状況により返済力は異なるはずなのに、学生ローンの「One size fits all」的な考えはおかしいという発想でした。

また「卒業生が同じ学校の後輩学生に投資する」というアフィニティ・モデルを採用することで、借り手側には心理的な返済インセンティブ(moral suasion)が働き、投資家(卒業生)側には経済的リターンに加え母校愛というインセンティブが働く、という設計思想であったとしています。

その後、同社は2014年に住宅ローンの借り換え商品を、2015年には個人向けローン商品をそれぞれ追加し、商品ラインナップを拡大していきました。この間、SoftBankやPeter Thiel氏などから相次いで資金を調達し、2015年時点では評価額が40億ドル規模に達していたとされています。

2017年には、当時銀行免許を持たずに事業拡大を目指す一手として産業融資会社(ILC)チャーターの申請を行いましたが、規制環境の不透明さもあってこの申請は撤回されました。さらに同年、社内でのセクハラ疑惑や企業文化に関する問題が表面化し、創業者であるMike Cagney氏がCEOを辞任するという大きな転機を迎えています。

2018年2月には、Twitterの最高執行責任者(COO)・最高財務責任者(CFO)を歴任したAnthony Noto氏が新CEOに就任し、経営体制と企業文化の立て直しを主導しました。

Noto氏の下で同社は事業の多角化を加速させ、2020年には決済・口座インフラ企業であるGalileo Financial Technologiesを買収し、技術基盤を大きく強化しています。そして2021年6月には、SPAC(特別買収目的会社)との合併を通じてナスダック市場に上場しました。黒字化したのは2024年以降です。

規制面では、2022年1月に米通貨監督庁(OCC)から、Golden Pacific Bankの買収を通じた本格的な国法銀行免許の取得について条件付き承認を得て、銀行持株会社体制へと移行しています。

マネジメント

現CEOのAnthony Noto氏は2018年に就任し、取締役も兼務しています。同氏はSoFi入社以前、TwitterでCFO、続いて最高執行責任者(2016年~2017年)を務めた経歴を持ちます。

それ以前にはGoldman Sachsでテクノロジー・メディア・通信(TMT)分野の投資銀行部門共同責任者を、さらに遡ると全米プロフットボールリーグ(NFL)のCFOも務めており、金融とメディア・テクノロジー双方に通じた経歴の持ち主です。

学歴としては、米陸軍士官学校(ウェストポイント)で理学士号を、ペンシルベニア大学ウォートン校で経営学修士号(MBA)を取得しています。4年間の陸軍勤務もあるとのことで、鉄血のコーポレート・リーダーですね。

最高財務責任者(CFO)のChris Lapointe氏は、Uber Technologiesにて財務計画・分析(FP&A)およびコーポレートファイナンス部門の責任者を務めた経歴を持ち、そこからSoFiに参画しています。

このほか経営陣には、最高リスク責任者(Chief Risk Officer)、最高人事責任者(Chief People Officer)、最高マーケティング責任者(Chief Marketing Officer)などが名を連ねており、金融・テクノロジー双方の分野出身者が経営チームに配置されています。

株主構成

株主構成をみますと、機関投資家による保有比率が約55%、インサイダー(経営陣・役員等)による保有が約26%、個人投資家による保有が約19%となっています。主要な株主にはVanguard Group、BlackRock、JPMorgan Chaseなどの機関投資家が名を連ねます。

また、個人単位での筆頭株主としては「Delaware Project 10 LLC」という法人が挙げられており、発行済株式の約9.18%を保有しています。この法人はCEOであるAnthony Noto氏に関連するものとみられており、過去にリサーチしたNu HoldingsやBlock, Inc.に比べると、少ないものの、経営陣自身が相応の株式エクスポージャーを持っている構図がうかがえます。

経営陣はprepaid variable forward contractsと呼ばれるデリバティブ契約を用いて、株式保有の外観を維持しながら持ち分の一部を担保に現金化を行っています。

事業内容

SoFiの事業は大きく3つのセグメントから構成されています。全体の収益のうち、4割程度は手数料収益です。

セグメントは第一に「レンディング(Lending)」セグメントで、個人ローン、学生ローン、住宅ローンを取り扱う祖業に当たる領域です。ローンは売却・証券化して資金調達に充てることも、オンバランスで持つこともあります。同社は銀行免許取得後、自社の預金を原資として貸付を実行できるようになったため、他の伝統的なフィンテック企業と比較して高い純金利マージン(NIM)を確保できる点が特徴とされています。

第二に「金融サービス(Financial Services)」セグメントには、SoFi Checking & Savings(預金口座)、SoFi Invest(投資)、SoFiクレジットカード、SoFi Protect(保険仲介)、SoFi Relay(家計管理ツール)といった商品群が含まれます。この領域は近年最も成長率の高いセグメントとされており、低コストで獲得した顧客に対して複数の商品をクロスセルしていく、いわゆる「金融サービス・プロダクティビティ・ループ」という戦略の中核を担っています。

第三に「テクノロジー・プラットフォーム(Technology Platform)」セグメントは、決済処理・口座インフラを提供するGalileoと、クラウドネイティブなコアバンキング基盤を提供するTechnisysから構成されており、他のフィンテック企業や金融機関に対してBtoBでサービスを提供しています。このセグメントは手数料型の安定した収益源として位置づけられており、消費者向け事業とは異なる収益特性を持っています。

コントリビューション利益はContribution Profit、直接費用控除後の利益で、営業利益に近い概念
出所:出所:SoFi 10-Q Q22026

市場地位・競合

SoFiは米国最大級のオンライン専業レンダー(貸金業者)とされており、会員数は2026年時点で約1,500万人規模に達しています。1,500万といえば、日本のSBI証券の口座数と同じくらいです。

(事業内容が必ずしも同じではないですが)米国の個人向けFinTechアプリのアクティブユーザー規模では、Venmo(PayPal)の 6,700万人、Cash App(Block, Inc.)の5,900万人なので、SoFiは規模感としてはあまり大きくなく、ブランド認知もまだ弱いです。

VenmoやCash Appが送金・決済アプリ的位置づけだとすると、SoFiは預金や貸出を行う銀行。Chimeという手数料無料の当座預金・貯蓄口座、早期給与受取(direct deposit早期反映)を提供するFinTech企業と比較されることが多いです。Chimeのアクティブメンバー数は約1,000万人ですが、どちらかというと収入が少なかったり、不安定な人に良い銀行です。

SoFiは貸付事業において、いわゆるプライムからニアプライム層(信用力が比較的高い層)をターゲットとしていることが特徴的です。実際、2025年のレンディングセグメントの貸出実行時の借り手の加重平均FICOスコア(アメリカの個人の信用スコア指標)は749点と、5段階評価の上から2番目(Very Good)の範疇になります。

会員数は1,500万人レベルに到達

競合環境としては、レンディング分野では伝統的な銀行や他のオンラインレンダー各社と、投資分野ではSoFi Invest経由でオンライン証券各社と、そしてテクノロジー・プラットフォーム分野ではエンタープライズ向け決済・口座インフラを提供する各社と、それぞれ競合関係にあります。

近年は、2025年後半以降、ブロックチェーンを活用した低コスト国際送金サービス「SoFi Pay」や、ステーブルコイン「SoFi USD」の展開、さらには暗号資産取引サービスの再開など、決済・暗号資産領域への進出を強めています。

米国ではFinTech企業が、決済中心であれば融資に、融資中心であれば決済に、などとそれぞれがクロスセルを通じて顧客の囲い込みに動いている印象です。SoFiは、(学生ローンを除く)レンディングでは競争が厳しく、その他の事業では競争環境は安定していると認識しています。

戦略

SoFiは会員が自らの志を実現するために金融的自立(フィナンシャル・インディペンデンス)を達成できるよう支援することをミッションに掲げた企業です。

自らを「メンバーの生涯にわたる主要な金融パートナーになる」ことを目指すワンストップ型のデジタル金融プラットフォームと位置づけています。すべての取り組みは、会員が『お金を正しく管理(Get Your Money Right)』できるよう支援することに向けられているとしています。

SoFiは、顧客の金融体験を1つのアプリに統合する「Everything App」戦略を加速させています。足下では月額10ドルのサブスクサービス「SoFi Plus」の刷新やAIアドバイザー機能「SoFi Coach」の投入により、既存会員のクロスバイ(複数製品利用)を大幅に促進しています。

機能が統合されたアプリのイメージ
出所:SoFi Investor Presentation Q22026

また、「Composer」等のAI技術導入や自社勘定系システム「STS」の外販強化を通じてテクノロジー主導の収益多様化と持続的成長を図っています。

プロダクト(ローンチ)が多すぎて、ややとっちらかった印象ではありますが、レンディング収入をコアとしつつ、「キャピタルライト」な事業モデルへの転換を目指している様子がうかがえます。

成長性と収益性に関しては、「Rule of 40(40%ルール)」を重視しています。40%ルールとは、調整後純売上高の前年同期比増減率(四半期ベース)に、調整後EBITDAマージン(四半期ベース)を加算して算出される指標で、40%を超えることがFinTech企業で優良とされる目安になっています(Block, Inc.でも重視していました)。

成長性と利益率を示すRule of 40は、Fintech企業でよく指標となる
出所:SoFi Investor Presentation Q22026

2022年に取得した銀行免許は、低コストの預金を原資として貸付を行うことを可能にし、資本市場の変動への依存度を引き下げる効果をもたらしています。現在の高金利環境下において、直接融資とプラットフォーム型ローン事業(ローンを直接出すのではなく、他の投資家に媒介して手数料を得る事業)を組み合わせ、堅調な純金利収入と手数料収入を実現していると言えましょう。

規制・免許

2022年にSocial Finance, Inc.によるGolden Pacific Bank, N.A.の買収を通じて国法銀行免許を取得しました。これにより子会社「SoFi Bank, N.A.」は、預金の受け入れと貸付業務を一体的に行うことができる本格的な国法銀行となりました。これは大手フィンテック企業として初めて、預金保険の付いた完全な形の国法銀行免許を取得した事例とされています。

また、親会社であるSoFi Technologies自体も、連邦準備制度理事会(FRB)の下で銀行持株会社として連結ベースでの監督を受ける立場にあり、伝統的な銀行と同等の規制の枠組みの中で事業を営んでいる点が他の多くのフィンテック企業とは異なります。


長文お読み頂きありがとうございます。後編では財務を見る予定です。

正直、「ロゴは見たことあるかも?」、くらいの会社でしたが、米国には色々FinTech企業があるものですね。それぞれが少しずつ異なるターゲットや事業構成がありつつ高成長なのは、伝統的銀行などが応えられていなかった潜在需要があったということなのでしょう。

SoFi Plusというサブスクサービスは金利優遇や、投資に対する1%のマッチング(還元)サービス、無料のフィナンシャルコンサルティングなどが受けられるようです。金融でサブスクというのは日本では聞きませんね。月10ドルなら、多少の貯蓄があれば入った方がお得そうです。囲い込んだ後の優遇が続くかはどうなのでしょう・・・?


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