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【京都市京セラ美術館】パンツを脱ぐように展示を見る。ザ・トライアングルで出会った「見慣れない自分」

鏡の中にいたのは作品か、自分か
地下の展示室で、なんだか置いてけぼりになった
 倉敷安耶「女が生まれて、女が死んで、——」展 


【約800文字、写真8枚|読了目安:約2分】


 お風呂に入るときは、パンツを脱ぐ。
 展示も同じだと思う。
 もちろん、本当に脱ぐわけではない。知識とか、「この作品はこう見るものだ」という先入観とか、そういう服を一枚ずつ脱いでから展示室へ入る。
 すると、ときどき作品の向こう側に、見慣れない自分の姿が見えてくる。

 地下へ降りる。
 少しひんやりしている。

京都市京セラ美術館 ザ・トライアングル 地下1階 
撮影:IRIE ART LOG

 展示室には鏡のような作品があった。
 お風呂場の鏡みたいだと思った。
 湯気で曇っているわけでもないのに、どこか輪郭がはっきりしない。
 毎日見ている自分の姿なのに、なぜか少しぎこちない。

 みなさんは、お風呂の鏡を直視できますか。


1|寝顔の向こうに見えたもの

京都市京セラ美術館 ザ・トライアングル 倉敷安耶「女が生まれて、女が死んで、——母の血、ワイン、チョコレート、アルコール、アルコール、アルコール」展示風景

 《おやすみ》という作品は、私、母、祖母、三人の女性が寝ている。
 静かな寝顔だった。
 けれど、その静けさが気になる。

左から 倉敷安耶《おやすみ #母 》2026、《おやすみ #私 》(部分)2026

 妻の顔を見ていると思った。
 でも、自分のことを考えていた。
 母の顔を見ていると思った。
 でも、これから先の時間について考えていた。

倉敷安耶《おやすみ #祖母 》(部分)2026

 鏡やガラスに転写された作品だからだろうか。
 角度によっては作品の中に自分の顔や他人が入り込む。 

 人は年を重ねるのではなく、時間が静かに積もっていくものかもしれない。 
 作品を見ているのか、自分を見ているのか。不思議な気持ちになる。


2|赤い道を歩きながら


 ガランとした展示室を歩く。

 鏡と鏡のあいだには赤いカーペットが敷かれていた。
 どこまでも続いているように見える。
 人生みたいだな、と思った。

倉敷安耶《無題》(部分)2026

 歩く道は人それぞれだ。
 ズレることもある。
 転ぶこともある。
 一人で歩く人もいるし、誰かと歩く人もいる。

 けれど、少し離れて眺めれば、みんな案外似たコースの上を歩いているのかもしれない。
 保険会社の人生設計図みたいだな、と私は思った。

 違いばかり気にして生きているけれど、最後はみんな同じ方向へ向かっていく。

倉敷安耶《無題》(部分)2026

 鏡は、その様子を黙って映していた。


3|風呂上がりみたいな気分

 階段をのぼり、展示室を出る。
 地上の風が気持ちよかった。
 お風呂から上がったときみたいだ。

京都市京セラ美術館 ザ・トライアングル入口付近

 地上階に展示された作品を眺める。
 身体は何も変わっていない。
 作品を理解したわけでもない。
 それでも、どこか軽くなった気がする。

倉敷安耶《ドローイング 女・血・火・死》(部分)2026

 お風呂上がりに、パンツ一丁で扇風機の前へ立つ癖がある。
 別に意味はない。
 ただ気持ちがいい。
 この展示を見終わったあとも、そんな気分だった。

 あ゛ーーーー。


インフォメーション

ザ・トライアングル 倉敷安耶「女が生まれて、女が死んで、——母の血、ワイン、チョコレート、アルコール、アルコール、アルコール」

会期:2026年5月30日(土)~8月30日(日)
会場:京都市京セラ美術館 ザ・トライアングル
開館時間:10:00~18:00
休館日:月曜日(祝日の場合は開館)
観覧料:無料

公式サイト:
https://kyotocity-kyocera.museum/exhibition/20260530-20260830


【次回の予告】

次回は、美術館「えき」KYOTOにて開催中の「青山悟刺繍少年フォーエバー in 京都」を訪れます。(毎週水曜更新) 

※掲載画像の転載・二次利用はご遠慮ください。 

取材・文・写真:入江玄(#IRIE_ART_LOG)    


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