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NAKED meets ガウディ展(大阪)へ。世界初公開のコレクションと、身体が震えるサグラダ・ファミリアの光

【約1,200文字、写真13枚|読了目安:約3分】


展覧会名:『ガウディ没後100年公式事業 NAKED meets ガウディ展』大阪展
会期:2026年4月17日(金)~6月15日(月)/会場:VS.(グラングリーン大阪内)


皮膚が感知する、二つの意志の摩擦
 JR大阪駅を出て、人の波を泳ぐ。
 新しくなった街のなかに、突っ立っているコンクリートの塊がある。安藤忠雄氏の手による文化装置「VS.」。
 そこへ、アントニ・ガウディという「熱」が運び込まれた。
 うねるような曲線、色、生命のしつこさ。
 一歩踏み込むと、皮膚が少し、戸惑う。冷たいコンクリートの空気のなかで、ガウディの情熱がじわりと滲み出しているからだ。涼しいはずなのに、二の腕のあたりが温かくなる。
 これは「無機」と「有機」の喧嘩だろうか。それとも、内緒話だろうか。
 私はただ、その不思議な摩擦に身を委ねてみることにした。



1.空間に溶ける:境界線を喪失する「没入」の正体

 キービジュアルに誘われて奥へ進むと、圧倒される。 

「VS.」にて4月17日~6月15日開催の『NAKED meets ガウディ展』大阪展、会場入口
撮影:IRIE ART LOG

 天井の高いエリア(Area6)に立つ。サグラダ・ファミリアだ。 
 NAKEDが仕掛けるのは、ただの派手な映像じゃない。光が空間の境界を溶かして、巨大な聖堂が目の前で「呼吸」を始めている。

『NAKED meets ガウディ展』のArea6:サグラダ・ファミリア:永遠の聖堂

 上から降ってくる光の粒を見上げていると、不意に、100年前のバルセロナの太陽に包まれたような気がした。

 通路の壁に、そっと指を置く。
 触れたところから映像が揺れ、反応して広がる。まるで、冷たい建築物が私の体温を確かめているみたいだ。

『NAKED meets ガウディ展』のArea3:創造のるつぼ、バルセロナ

2.接触の記憶:身体を介して100年前とシンクロする

 古い、不格好な3Dメガネがあった。ガウディが実際に使っていた装置だという。
 現代のハイテクと、このアナログな驚きが、一本の線でつながっている。昔の人も、こんな風に目を丸くして、新しい世界を見ようとした。その「おお」という小さな感嘆を、100年後の私もなぞっている。

アントニ・ガウディ《3D立体視メガネ》 制作年不詳 ジョアン・バセゴダ氏旧蔵/ガウディ財団より貸与 ※世界初公開のオリジナル。レプリカにて体験可能。

 垂れ下がる、細いチェーンの群れに触れる。
 これは「逆さづり」の模型だ。この形状を反転させて、重力によって自然に完璧な耐荷重曲線が生み出されたという。
 理屈はわかる。でも、この絡み合う複雑な構造を見ていると、自然を解き明かそうとした男の、狂気のような冷静さに背中がむずがゆくなる。

『NAKED meets ガウディ展』のArea4:ガウディの工房

 「座ってみてください」と言われて、彼がデザインした椅子に腰を下ろす。
 私の安物のお尻には、もったいない。そう思ったけれど、座った瞬間に笑ってしまった。硬い木なのに、吸い付くように身体に馴染むのだ。

アントニ・ガウディ《ダイニングルームのベンチ(カサ・バトリョ)》1904-1906年 カサ・バトリョ(バルセロナ)/ガビネテ・モダニスタより貸与/レプリカ

 ガウディもきっと、一緒に働く仲間や自らのお尻で、この曲線を確かめたのだろう。
 また、この角度が絶妙だ。隣り合う人と向き合うわけでもなく、かといって意識しないわけでもない。
 このベンチにクッションなんていらない。春の日に日光浴をしているときのような、深く満たされる感覚だった。


3.思考の筆跡:緻密な静寂のなかに潜む「熱」

 展示も終盤へと差し掛かる頃、彼が若き日に記したと考えられる手記が置かれていた。世界初公開だ。
 なんと、筆跡心理学の専門家によるノートの詳細解説も紹介している。天才の片鱗を覗き見ることができる。

若い頃のアントニ・ガウディの手記(1878年8月10日、レウス)/レセウス美術館所蔵/オリジナル

 さらに学生時代の図面を見て、息が止まった。恐怖を覚えるほどに、緻密だ。
 「没入感」なんていうお洒落な言葉を支えているのは、甘い夢想じゃない。ミリ単位で線を引く、指先の痛みとしつこさだ。

講堂の描画《講堂:断面図》/1878年 バルセロナ/ガビネテ・モダニスタより貸与/レプリカ

 きっと彼が籠もっていた部屋には、猛烈な勢いでペンが走る音だけが響いていたに違いない。
 狂信的なまでの自然への敬意が、この恐ろしいほどに細かい線の集合体を、建築物に変化させたのだ。

『NAKED meets ガウディ展』大阪展、会場展示パネルより

インフォメーション

展覧会名: ガウディ没後100年公式事業 NAKED meets ガウディ展
会期: 2026年4月17日(金)〜6月15日(月)
会場: VS.(グラングリーン大阪内)


おまけ:余韻を日常に持ち帰る

 展示の最後に、お土産コーナーが待ち構えていた。

大阪展、会場内のグッズショップ

 「ハイチュウ」も並んでいる。わざわざここでこれを作らなくても、と思いつつ、その「へんてこ」な祝祭感が、なんだか嫌いじゃない。

「GAU-CHEW」という名前で販売されているハイチュウ(5個入り・1,944円(税込))

 目に留まったのは、自分で組み立てる『サグラダ・ファミリア』のペーパークラフト。完成すると58センチにもなるという。
 あの重力と造形の格闘を、自分の指先で再現できるのか。
 解説パネルを読み、3,080円(税込)という値札をじっと見る。

リチャード・ミラー 制作・デザイン、鳥居徳敏 解説『ガウディ サグラダ・ファミリア聖堂』〔新装版〕西村書店(3,080円)

 ……しばし悩んで、そっと棚に戻した。

 再び、安藤忠雄の無機質なコンクリートの回廊を歩き出す。
 手ぶらで帰る私の身体の奥には、まだ、あのガウディの「有機的な熱」が消えずに残っていた。


【次回の予告】

 次回は、大阪中之島美術館「驚異の部屋の私たち、消滅せよ。- 森村泰昌・ヤノベケンジ・やなぎみわ -」を訪れます。
(毎週水曜更新)

※この記事は、プレス内覧会に参加して書いたものです。
※掲載画像の転載・二次利用はご遠慮ください。

取材・文・写真:入江玄(IRIE ART LOG)

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