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見えない人とアートを見るということ

窪塚洋介×白鳥建二――視覚を手放したとき、見えてくる宇宙とは。

 こんにちは、ライターの入江玄です。
 今回は少し特別な体験を綴ります。

 俳優・窪塚洋介さんと、全盲の美術鑑賞者・白鳥建二さんがともに展覧会を訪れるラジオ番組「窪塚洋介、目の見えない白鳥さんと展覧会に行く」。
 その音声だけのアート体験を、文字で追いかけてみました。

NHK「窪塚洋介、目の見えない白鳥さんと展覧会に行く」HPより

 「見えない人と一緒にアートを見る」とは、どういうことなのか?
 作品を前に、なんだろうコレ? と意見を出し合うことで、お互いの違いが生じてくる。

 私は、何を“見ている”のか?
 そんな問いが、心に残ります。




「タイトルを見ない」から始まる鑑賞

 舞台は、銀座・資生堂ギャラリーで開催された髙田安規子・政子の個展『その世界の捉え方』。
 白鳥さんが提案したのは、「作品のタイトルを見ずに話し始める」というシンプルな方法。
 先入観を持たず、目の前にあるものを、ただ感じたままに言葉にしていく。

白鳥:タイトルを最初に見ちゃうと、なんとなく納得してしまうことがあるんです。

ラジオ番組「窪塚洋介、目の見えない白鳥さんと展覧会に行く」より

 窪塚さんやナビゲーターの川内さんが、目の前にある作品の形や質感、空気感を言葉にする。白鳥さんは、その声や間、気配から空間を想像していく。
 そこには、「見える人が見えない人に説明する」という構図はありません。ただ、同じ空間にいて、それぞれの感覚で作品と向き合っていくのです。

書籍もあります📖



鏡の宇宙で、言葉が星になる

 展示室の一角には、大小さまざまな鏡が壁に渦を巻くように貼られたインスタレーション。

窪塚:ワオ!
白鳥:なんですか?
川内:おおー!
窪塚:これは、高さ3メートルぐらいの壁の角なんですけど、大小様々なものすごい色んな種類の鏡が、ランダムにというか、…宇宙なんだ。銀河なんだ。

ラジオ番組 NHKラジオ第1「窪塚洋介、目の見えない白鳥さんと展覧会に行く」より

 窪塚さんはそれを「銀河みたい」と表現し、川内さんは「渦の中心に小さな星がある」と続ける。

川内:全部違う形で、違う枠で、1個として同じではない。あ、星? じゃあ星なのかな。この鏡は、もしかして、あ、隕石?

ラジオ番組 NHKラジオ第1「窪塚洋介、目の見えない白鳥さんと展覧会に行く」より

 白鳥さんはその言葉を受け取りながら、「星? 隕石? あ、そういうこと!?」と想像をふくらませていく。

 見えているものを、見えていない人に伝える。
 でもそれは、ただの説明ではなく、連想のキャッチボール
 ラジオの言葉が、差し込む光のように空間を照らしていく。

映画にもなってます🎞️



「今、ここにいる」ことの豊かさ

 展示をめぐる対話は、やがて「進化」や「宇宙の起源」、そして「人間とは何か」へと広がっていきます。

窪塚:みんな遠くから見れば同じ形をしている。

ラジオ番組 NHKラジオ第1「窪塚洋介、目の見えない白鳥さんと展覧会に行く」より

 対話の中で、私たちは「今ここにいること」の尊さに気づかされます。
 それは、知識や解釈ではなく、「感じること」そのものの価値

窪塚:もし1分間だけ視力が戻るとしたら、何が見たいですか?
白鳥:今の状況で十分です。

ラジオ番組 NHKラジオ第1「窪塚洋介、目の見えない白鳥さんと展覧会に行く」より

 このやりとりには、思わず息をのんでしまいました。

番組で体験されたのは、こちらの展示です🖼️



「見る」とは、どういうこと?

 絵本『みえるとか みえないとか』ヨシタケシンスケ (著)、 伊藤亜紗 (相談) には、こんな場面があります。

「え?! キミ、うしろが みえないの?」「ふべんじゃない? かわいそう!」
「いや、ぼくはべつに これが ふつうだから…」

絵本『みえるとか みえないとか』ヨシタケシンスケ (著)、 伊藤亜紗 (相談) より

 見え方が違うだけなのに、私たちはつい「正しさ」や「普通」を押しつけてしまう。

 今回のラジオ番組でも、異なる感覚を持つ三人の対話を通じて重なり合った「宇宙」は、私たちに「見ること」の本当の意味と、豊かさの定義を静かに問いかけてくれます。



結びにかえて

 このラジオ番組の映像版は、11月28日にEテレでも放送されました。
 「聴く」ことでアートを体験するという、ユニークな試み。
 そして、そこから生まれた「見えない宇宙」を、私は文字で追いかけてみました。

「ねえ、わたしの顔、何かついてる?」。――鏡がなかったら、そばにいる人に聞くでしょう。それはいわば「他人の目を使って自分の顔を見る」経験です。

伊藤亜紗 (著)『目の見えない人は世界をどう見ているのか』光文社新書、2015

 アートって、やっぱり面白い。タイトルを伏せることで、作品そのものも語り出す。そんな広がりに身を委ねるのも悪くない。

展示の映像があります📽️



🕊️補記:この記事について

 本記事は、NHK ラジオ第1「窪塚洋介、目の見えない白鳥さんと展覧会に行く」(2025年11月24日放送)をもとに構成しています。
 視覚に関する多様な捉え方や、異なる感覚を持つ人同士の対話を尊重する意図で執筆しました。
 表現や構成について、お気づきの点がありましたら、お知らせいただけますと幸いです。


ソース
📻 ラジオ番組:NHK ラジオ第1「窪塚洋介、目の見えない白鳥さんと展覧会に行く」
🎨 展覧会:髙田安規子・政子『その世界の捉え方』資生堂ギャラリー
📺 放送:2025年11月28日 Eテレ「みるラジオ 窪塚洋介、目の見えない白鳥さんと展覧会に行く」


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