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ikepon_ikd
不感症の女
「波の音がするの」と彼女が言った。
「セックスをして、達することがないのだけれども、一度だけ。たった人生で一度だけ。あなたに8月に抱かれたとき達したの。その時波の音が聞こえたわ」
こんなときに何故彼女のことを思い出したのだろう?
妻がいつ破水してもおかしくないという連絡を受けて、会社を早退して新幹線に飛び乗った。
ビールを飲みながら、目を閉じた。
もうすぐ我が子が産まれるのに、どうして彼女のことを…。
波の音。彼女から聞いた不思議な話を思い出した。
一分間に波が打ち寄せる数って18回
それを2倍にすると36
36といえば、人間の体温
それを2倍にすると72
72といえば、一分間に打つ脈拍数
それを2倍にすると144
144といえば、少し高いけど血圧
それを2倍にすると288日
288日といえば?
そう、妊娠期間 十月十日 とつきとうかっていうのよ。
「やっぱり私達は海から誕生したのね。もう一度波の音が聞こえるぐらいいかせてね」
新幹線が到着した。
彼女は未だに、達せないのだろうか?
