「正しい判断ができるほど自分を信じていない」から、先に基盤を作った
売上を立てなければいけない状況に追い込まれたとき、正しい判断ができるほど自分を信じていない——これは諦めではなく、自分のメンタル特性を正確に把握した上での認識です。
追い詰められると崩れる、という自己認識
新卒でフリーランスをやっていた頃、貯金が3〜5万円まで減ったことがあります。
そのとき自分がどうなったかというと、冷静に戦略を立て直したわけではなく、焦りの方が先に来て、静かに消えていくような状態になりました。「背水の陣で力を発揮する」という感覚が、まったくわからなかったんですよね。
インターネットビジネスをやっていた時期も、毎月0に戻される感覚が続いていました。一生懸命売上を作っても、翌月にはまたゼロからスタート。そういう状況では、正しいことより目の前の数字を優先する判断を、自分ならしてしまうと思っていました。
だからこそ、いきなりジム一本に全てを賭けるやり方を選ばなかったんです。
先に「退路」を作ってから本命に進む
パーソナルジムを本格的に始めたのは2023年10月ですが、それ以前に、別事業で毎月一定の収入が入ってくる仕組みをある程度作っていました。
この順番は意図的なものです。ジムを開く前に経済的な基盤を整えておく——これは根性の問題ではなく、設計の問題として考えていました。
「基盤があるから焦らずに済む」という話に聞こえるかもしれませんが、正確にはそうではなくて、「焦る状況を構造的に作らないために、先に基盤を作った」という順序なんです。ジムに全力を注げる状態を、ジムを始める前に整えておく。それが自分には必要だと判断しました。
焦りがある状態でできない判断がある
なぜそこまで「焦り」を警戒していたかというと、焦っているときの自分の判断が、どういうものかを知っていたからです。
たとえば、お客さんに対して「続けた方がいいですよ」と言うとき。それが本当にお客さんのためになる提案なのか、それとも売上が欲しいから言っているのか。焦っている状態では、この区別が自分でもわからなくなる気がしていました。
誠実に判断しようと思っても、経済的な不安が大きければ、その判断は少しずつ歪む。少なくとも自分はそういうタイプだと思っていたし、今もその認識は変わっていません。
だから経済的な基盤は、「楽をするためのもの」ではなく、「正しい判断を守るためのもの」という位置づけで作ってきました。
根性で乗り越えようとしなかった
地方でジムを経営していると、「起業するなら全部賭けないといけない」「退路を残すのは中途半端だ」という話を見聞きすることがあります。
自分の考えは違います。全部賭けなければ本気になれないというのは、自分には当てはまりませんでした。全部賭けると、正しい判断より生存を優先するようになる。少なくとも自分はそうなると思っていた。
根性で乗り越えるのではなく、根性が必要にならないよう設計する。これが自分の性質に合ったやり方でした。
人口3万人の見附市でパーソナルジムをやっていて、売上に追われないでいられる時間がある程度確保できているのは、この順番で動いたからだと思っています。それが正解かどうかは、まだ検証中です。ただ、「焦った状態の自分」を使って事業をやるより、少し時間がかかっても「落ち着いた状態の自分」で判断できる環境を作ってからの方が、長く続けられると考えています。
自分の性質と事業の順序を合わせること。それだけの話なんですが、これが今のところ自分には一番しっくりきています。
