「聖卓」全文無料
神様って、いつもあたしたちのことを見てくださっているというけれど、食事のときですら、見ていらっしゃるのかしら。いつだって、神様が見てくださっていると思うと、心の底から勇気が湧き出るのだけれど、食事のときだけは、なんだか少し恥ずかしい。だって、あたし、食べ方が、お上品じゃないんですもの。スパゲッティを食べるとき、口の横に、トマトのソースなんてついているところを見られたら、恥ずかしくってたまらない。顔中、額も、頬も、耳だって、きっと真っ赤になる。そうなったら、トマトソースと、顔の真っ赤なのとがおんなじになって、目立たなくなるかしら。そうなってくれたら、少しは安心なのだけれど、神様は、そんなあたしをみて、笑うのかしら。それも、なんだか恥ずかしい。もし神様がお笑いになったなら、きっと、神様にも、スパゲッティをお食べになってもらおう。そうして、神様の口の端にも、トマトソースがつくのを、願ってみよう。もちろん、そんな意地悪、お見通しなのだろうけれど、少しくらい仕返ししたって、いいと思うわ。あたしだって恥ずかしい思いをするのだし、それに、きっとお許しになってくださるもの。でも、お洋服を汚すのは悪いから、エプロンを用意しなくちゃ。真っ白な、布エプロン。でも、エプロンにソースがついたら、余計目立ってしまうかも。想像したら、おかしい。もしそうなったら、神様は、どんなお顔をなさるかしら。恥ずかしそうになさるのかしら。何もないような素振りで、そのままお食事を続けるのかしら。あたしに、「ソースが飛んでしまったね」と、優しく笑いかけてくださるのかしら。どうなさっても、あたしは、優しく微笑むわ。きっと、そうする。そうして、二人のフォークの、カチャカチャという音が、いつまでも鳴り響くのだとしたら、あたしこれ以上ないくらい、幸福になると思う。そんな日が、いつかきっと、きっと来るのだわ。
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