命名名人
「命名名人」という勲章をもらったことがある。
「めーめーめーじん」。音が実にいい。
これが、命名仙人だと「めーめーせんにん」になる。これじゃ、めーめーしない人みたいだ。めーめーは、出来ることならしてほしい。しないのはちょっと厳しい。
私は「めーめー」が好きらしい。
子どもの誕生から未就園児までの頃、月齢の違いはあれど、みんなで情報を持ち寄って、楽しく助け合っていた同じマンションのママグループ。
私たちは、マンションの名前、仮に「マイ メモリアル 目黒」としようか、その頭文字を取って「MMMの会」と名乗っていた。この「えむえむえむの会」の「めーめー」は私ではなかったが、謎の秘密組織みたいで好きだった。自分たちは「マイメモラーズ」で、子どもたちは「マイメモリーキッズ」。
「めーめー」に大きな意味はない。命名であり任命ではない。当時普及し始めたばかりのLINEや普段の会話で使う、仲間だけの言葉遊びだ。言いやすさと音の響きが命。
そんなマイメモラーズの中に、一人だけ子どもの学年が一つ上になったママがいた。
彼女は、いつも私たち新米マママイメモラーズにアドバイスをくれた。
「幼稚園 急に『明日ラップの芯持ってこい』とかまじぴえん 。『トイレットペーパーの芯2本』は?は?まじありえん 。だから貯めといた方がいいぜ yeah〜n」
と、ラップしたかどうかまでは記憶にないが、私たちの幼稚園と小学校生活のQOLは、彼女たち親子のおかげで爆上がりだったのだから、会場は沸きに沸いていたはずだ。プォプォプォプォーン。
新しい世界へ飛び込み、時には傷つきながらも、後ろの私たちに道を教えてくれた、そんな勇敢な彼女につけた名は「切り込み隊長」。
「さすが!きりこみたいちょー!」「ありがとう!きりこみたいちょー」
私たちはいつも愛を送った。
インテリアがオシャレすぎたヨギちゃんの家は「ヨギカフェ」と呼んだ。そんじょそこらのカフェよりよっぽどカフェで、私たちは何かあるとすぐヨギカフェで集まった。
数年前の記憶を詳細に覚えているクミちゃんは、Kumi HDD、略して「KHDD」。忘れたくない大事なことから、忘れてほしい黒歴史まで自動保存されている。
そんなふうにみんなで「めーめー」していたのに、いつの間にか私が「めーめーめーじん」の称号を授かっていた。打率と採用率が高かったのだろうか。
その他に「おしゃれ番長」という勲章をいただいた。みんな自分の個性を理解したおしゃれさんだったはずだ。でも、娘とのリンクコーデ的なところは、確かに意識していたから、そこをすくい上げてもらったのかもしれない。
大学時代、大好きな先輩からもらった「パリっ子」という勲章の隣に並べてつけた。「ぱりっこばんちょー」。なんて美味しそうな響きなんだ。
もらった勲章は無条件で嬉しい。
彼らの愛を感じられるからだ。
そうだ。
私は「めーめー」するよりも「めーめー」されるのが好きな人間だったのかもしれない。
ピアノの先生は「聴音博士」という名をくれた。
先生が和音を弾いて、私が「ソシレファ」と音を答える。それに毎回全問正解して授かった称号だ。
「ちょーおんはかせ」は聴音を終え、満を持して誇らしげに椅子に座る。そして家で少しだけ練習してきた曲を弾き出す。
ポロロロロンッ。カカカカカチッ。
「はい。爪切りま仙人、隣の部屋で爪切ってらっしゃい。」
「爪切りま仙人」は静かな心で爪を切る。全てを卓越した心の持ち主でないと、ピアノの前にはそうそう戻ってこれぬのじゃ。
中学の修学旅行中、草むらに隠れた小さな側溝に落ちた私の叫びが「わーーーー」という、綺麗に平仮名と横棒だけで出来た平坦な音だった、と「はじめ人間」をもらった。
「わーーーー」という文字は岩で出来ていたらしい。私も見てみたかった。
サークルの会長からは「天然温泉」をいただいた。テニスのサーブをすればボールが消え、怯えてしゃがみ込むと、右手に持ったラケットの三角の隙間に黄色いボールが綺麗に挟まっていた。お前、いつの間にそんなところに。
2度目は騙されんぞ!とラケットの三角を確認していたら、黄色い奴は鼻の頭に落下して来やがった。スポーツマンシップはどこに行ったのか。
けれど、ボールと違って人は優しい。
この世にはただのどんくささを温泉と同列の癒しだと受け取ってくれる優しい人たちがいるらしい、と知った。
「奇声の達人」をくれたのは、私が関東に転勤してすぐ入ってきた帰国子女で、関西弁の男の後輩だった。
仕事中、私が「ぎぁえーーー」と頭を抱えていると、「ぎゅよーーー」と呼応してくれた。私が「あ!」と言うと、「い!」と返してくれた。それだけのことなのに、なぜか落ち着いた。
でも「い!」の後に「う!」と言っても「え!」は返してくれなかった。
物事には程よい頃合いがある。なんでもやり過ぎると「重すぎて圧!」なのだ。「う!」で打ち止めが一番かっこいい。「師匠」はそう背中で教えてくれた気がする。
だから「か」とか、なんなら「と」ぐらいまでやり合っている世界に出会うとムズ痒くなってしまうのだが、きっと「ししょー」なら "Get a room!"と言って去っていくのだろう。
ちなみに、娘は高校で「メンヘラホイホイ」という称号をもらっていた。
優しい娘らしさが出ていて、私は好きだ。
「めーめー」は、違う自分がひとつ増えるみたいで、楽しい。音やリズムが気持ちよければ尚更だ。
そこにはいつも、つけてくれた人の愛があり、使ってくれる人たちのノリがある。
そうやって楽しく気軽に「めーめー」し合える人たちが、私は大好きだ。
noteでも、今年ここで書き始めたばかりの私のことを、なぜか「ベテラン」、「トップクリエイター」、「先生」、「先生って!」とツッコんだら「総帥」などをつけて、遊んでくれる希少な方々がいるので、命名について思い出して書いてみました。
noteには実際、投稿をあげれば毎回3桁、4桁のスキを集める本物たちがたくさんいますけれども、そんな中、フォローしてもらっている方々から、おふざけでも、私のことをそんなふうに呼んでもらえるのは、ホントみなさんは優しいなぁ、と、ここで出会えた幸せを噛みしめております✨
これからも「イクマちゃん」と一緒に「イコマワールド」、「イコマジック」を見せられるように、楽しんで書いていきたいと思います✨
…って、これ全部、もらった言葉たちやないかい😆
なぁんだ!みなさんも「トップクリエイター」じゃないですか✨
お後がよろしいようで…笑
