ブラジルを沈めたハーランドが示した、日本代表に足りなかった“理不尽”
日本に勝ったブラジル代表が負けた
日本代表を倒したブラジルが、ノルウェーに1-2で敗れた。
しかも、ブラジルが完全に何もできなかった試合ではない。
前半にはPKがあり、流れの中でも決定機があった。
しかし、それを決めきれなかった。
一方のノルウェーには、ハーランドがいた。
決めるべきところで決める。
相手がブラジルでも関係ない。
試合の流れがどうであっても、最後にゴールを奪って勝敗を動かす。
この試合を見て、あらためて思った。
日本代表がワールドカップのトーナメントを勝ち抜くには、組織力だけでは足りない。
もちろん、日本代表は弱いわけではない。
むしろ、強豪国と十分に戦えるところまで来ている。
ブラジル戦も、一方的にやられた試合ではなかった。
戦い方次第では勝てたかもしれない。
だからこそ、ブラジルがノルウェーに敗れた結果を見ると、より悔しさが増す。
しかし同時に、ノルウェーがブラジルを倒した試合には、日本代表が次に進むためのヒントもあった。
それは、最後に試合を壊せる“理不尽な個”の存在である。
ブラジルはチャンスを作った。でも決めきれなかった
サッカーは、チャンスを作った数だけで勝敗が決まるスポーツではない。
どれだけ良い時間帯があっても、どれだけボールを持てても、どれだけ相手ゴールに迫れても、最後に決めなければ勝てない。
ブラジル対ノルウェーの試合は、その残酷さが出た試合だったと思う。
ブラジルにはPKがあった。
流れの中でも決定機があった。
しかし、それを決めきれなかった。
トーナメントでは、この「決めきれなかった」が命取りになる。
リーグ戦であれば、次の試合で取り返せるかもしれない。
内容が良ければ、長い目で見て評価されることもある。
しかし、ワールドカップの決勝トーナメントは違う。
一度負けたら終わり。
どれだけ良い内容でも、スコアで負ければ大会から去るしかない。
ブラジルほどの国であっても、決定機を外せば敗れる。
世界的なタレントがそろっていても、決めるべき場面で決められなければ、勝ち上がることはできない。
これは、日本代表にもそのまま当てはまる。
「良い試合だった」
「内容は悪くなかった」
「あと少しだった」
そう言える試合は増えた。
でも、ワールドカップで上に行くためには、その“あと少し”を超えなければいけない。
ノルウェーにはハーランドがいた
ノルウェーがブラジルを圧倒したわけではない。
ただ、ノルウェーにはハーランドがいた。
この差は大きい。
ハーランドは、90分間ずっと試合を支配するタイプの選手ではない。
ボールに何度も触って、ゲーム全体を作るタイプでもない。
それでも、最後にゴールを決める。
一瞬のチャンスを逃さない。
相手がブラジルでも関係ない。
試合の流れが悪くても関係ない。
そこにいるだけで、相手の守備は常に警戒しなければならない。
少しでもマークが外れれば、ゴール前で仕留められる。
一瞬のズレを、そのまま得点に変えられる。
これが“理不尽”である。
ここで言う理不尽とは、わがままなプレーという意味ではない。
相手の戦術や対策を超えて、勝敗を動かせる力のことだ。
どれだけ守備を整えても、ケインをフリーにしたら止められない。
どれだけブロックを作っても、エムバペに1対1で壊される。
どれだけ試合をコントロールしていても、メッシやクリスティアーノ・ロナウドの一発で流れが変わる。
ハーランドも同じだ。
チーム全体の完成度だけでなく、最後にゴールを奪い切る個の力がある。
ブラジルを沈めたのは、まさにその理不尽だった。
日本代表は、強豪と戦える国になった
ここで、日本代表を必要以上に否定する必要はないと思っている。
日本代表は、もう「強豪と戦えるかどうか」の段階にはいない。
組織力は高い。
守備の連動もある。
切り替えも速い。
海外でプレーする選手も増え、強度の高い試合にも対応できるようになっている。
ブラジル相手にも、ただ守るだけではなかった。
勝てる可能性を感じさせる時間帯もあった。
だからこそ、悔しい。
昔のように「世界との差は大きかった」で終わる試合ではなかった。
「よく頑張った」で片付ける段階でもない。
勝てたかもしれない。
勝たなければいけなかったかもしれない。
そう思えるところまで、日本代表は来ている。
しかし、ここから先は別の壁がある。
強豪と戦えること。
強豪を倒し切ること。
この2つは似ているようで、まったく違う。
日本代表は、強豪と戦える国になった。
でも、強豪を倒し切る国になるには、もう一つ足りないものがある。
それが、理不尽な個である。
日本に足りなかった、最後に試合を壊す個
日本代表には、良い選手がたくさんいる。
技術があり、走れて、戦術理解も高い。
チームとしてまとまって戦える選手も多い。
これは日本の大きな強みだと思う。
ただ、ワールドカップのトーナメントでは、組織力だけでは越えられない瞬間がある。
相手が対策してくる。
スペースを消してくる。
こちらの良さを潰してくる。
試合が重くなる。
時間がなくなる。
一つのミス、一つの決定機で勝敗が決まる。
そういう場面で必要になるのが、相手の計算を壊す選手だ。
綺麗に崩せなくてもいい。
戦術通りでなくてもいい。
相手に読まれていても、それでも突破する。
苦しい時間に、個人の力で前進する。
少ないチャンスを、無理やりゴールに変える。
こういう選手がいるかどうかで、トーナメントの勝ち上がり方は変わる。
ノルウェーにはハーランドがいた。
フランスにはエムバペがいる。
ブラジルにはヴィニシウスがいる。
アルゼンチンにはメッシがいる。
ポルトガルにはクリスティアーノ・ロナウドがいる。
もちろん、彼らと同じ選手を日本が簡単に生み出せるわけではない。
しかし、ベスト8以上を本気で狙うなら、日本代表にも“相手の予定を狂わせる存在”が必要になる。
三笘薫不在で消えた、日本の理不尽な突破口
そう思うとやはり悔しかったなと思うのが、怪我で参戦できなかった
日本代表で、その理不尽に最も近い選手は三笘薫だったと思う。
三笘はハーランドのようなストライカーではない。
ゴール前で相手を吹き飛ばして点を取るタイプでもない。
でも、1対1で相手の守備設計を壊せる。
左サイドでボールを持つだけで、相手は警戒する。
サイドバックは簡単に飛び込めない。
センターバックはカバーを意識する。
ボランチもスライドしなければいけない。
つまり、三笘がいるだけで、相手の守備全体が少しずつズレる。
これは、日本代表にとってかなり大きい。
日本代表は、組織で崩すことはできる。
連動して、相手の穴を突くこともできる。
しかし、相手が強豪になればなるほど、組織で作れるスペースは小さくなる。
その小さなスペースを、個で広げられる選手。
相手が整っていても、1対1で前進できる選手。
相手が嫌がる形を、自分の力で作れる選手。
それが三笘だった。
だから、三笘不在は単に「左サイドの主力がいない」という話ではない。
日本代表から、数少ない理不尽な突破口が消えた。
そう考えると、ブラジル戦で感じた「あと少し」の正体も見えてくる。
日本は戦えた。
でも、最後に相手を壊し切る一手が足りなかった。
“理不尽”はストライカーだけではない
もちろん、日本がハーランドのような選手をすぐに作れるわけではない。
そもそも、ハーランドは世界でも特別な存在だ。
身長、スピード、パワー、決定力。
あれだけのストライカーは、どの国でも簡単には出てこない。
だから、日本代表に必要なのは「日本版ハーランドを作れ」という単純な話ではない。
理不尽には、いろいろな形がある。
三笘のように、ドリブルで相手の守備を壊す理不尽。
久保建英のように、狭い局面で違いを作る理不尽。
上田綺世のように、ゴール前で一瞬の動き出しから仕留める理不尽。
堂安律のように、大舞台で思い切りよく左足を振れる理不尽。
セットプレーで点を取れるセンターバックの理不尽。
途中出場で試合の流れを変える選手の理不尽。
理不尽は、必ずしも一人のスーパースターだけを指す言葉ではない。
日本代表が目指すべきなのは、日本なりの理不尽を複数持つことだと思う。
組織力を土台にしながら、最後は個で壊せる。
守備で耐えながら、一発で仕留められる。
相手が対策してきても、別の武器でこじ開けられる。
そういうチームにならなければ、ワールドカップのトーナメントを勝ち抜くのは難しい。
組織力だけでは、ベスト8の壁は越えられない
日本サッカーは、組織力で世界との差を縮めてきた。
それは間違いなく正しい道だったと思う。
個の力で劣る部分を、連動性で補う。
守備の規律で戦う。
走力で相手に圧力をかける。
チーム全体で相手の良さを消す。
これによって、日本代表は世界と戦えるようになった。
しかし、ベスト8以上を目指すなら、組織力だけでは足りない。
なぜなら、トーナメントでは一瞬で試合が決まるからだ。
90分間良い守備をしていても、1本でやられる。
良い攻撃をしていても、決めきれなければ勝てない。
内容で上回る時間があっても、スコアで負ければ終わる。
だからこそ、強豪国には“理不尽な個”がいる。
ブラジルが前半に決定機を決めていれば、試合は違ったかもしれない。
でも、決められなかった。
ノルウェーはハーランドが決めた。
その差が、勝敗を分けた。
これは、日本代表にとっても大きな教訓になる。
強豪と互角に戦えるようになった。
でも、強豪を倒し切るには、最後に試合を動かす個が必要になる。
日本代表の次の課題は、そこにある。
日本は「惜しかった」から卒業しなければならない
日本代表は、ブラジル相手に惜しかった。
でも、いつまでも「惜しかった」で終わってはいけない。
惜しかった。
善戦した。
あと少しだった。
内容は悪くなかった。
そう言える試合は、これまでにもあった。
しかし、ワールドカップで本当に上へ行く国は、その“あと少し”を超えていく。
ノルウェーはブラジル相手に、それをやった。
ブラジルにチャンスを作られても耐えた。
決めるべき場面でハーランドが決めた。
そして、ブラジルを大会から退けた。
日本代表が目指すべき場所も、そこだと思う。
強豪と戦える国ではなく、強豪を倒し切る国へ。
そのためには、今まで積み上げてきた組織力を捨てる必要はない。
むしろ、日本の強みである組織力は絶対に必要だ。
ただ、その上にもう一つ必要になる。
相手の計算を壊す個。
苦しい時間に前進できる個。
決めるべき場面で決める個。
一瞬で試合を変える個。
ブラジルを沈めたハーランドは、日本代表にその現実を突きつけた。
日本代表は、強豪と戦える国になった。
でも、強豪を倒し切る国になるには、組織力の先にある“理不尽な個”が必要になる。
次のワールドカップで、日本が「惜しかった」から卒業するために。
必要なのは、綺麗なサッカーだけではない。
最後に勝敗を動かす、理不尽な一撃だ。
