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【掌編小説】七夕の歩幅 | 毎週ショートショートnote

子供たちが玄関の戸を開けて歌い出した。
「ローソク出ーせー出ーせーよー 出ーさーないとー ひっかくぞー」

私は棚からウチの牧場特製バター飴を取る。
子供たちの手が一斉に伸びる。
その手へ一つずつ飴を載せていく。

「ところで、次はどこへ行くの?」
「川向こうの洋服屋さん!」
「あのお姉ちゃんの所か。なら、あそこのお家にもこの飴、持っていってくれる?」

紙袋にバター飴を詰め子供たちに渡す。
子供たちは歌いながらかささぎ橋を渡る。小さな歩幅がきれいに揃っていた。

一回りしてきた子供たちが、またウチへやってきた。

「これ、洋服屋のお姉さんから。バター飴のお礼だって!」

手渡されたのは丁寧に包まれた牧場用の作業着だ。
包みには『これでまた一年、お互いお仕事頑張ろうね』と書かれた手紙があった。

去年、何気なく言った「作業着が草臥くたびれてきて」という言葉を覚えていたのか。
バター飴が巡り巡って思いやりになって返ってきた。

来年のこの歌が聞ける日が待ち遠しくなった。

(410字・ルビ除く)



あとがき

最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。
本作は、田原にか様の企画に参加させていただいております。
いつも素敵なお題をありがとうございます。
この場をお借りして深くお礼申し上げます。

#毎週ショートショートnote
#七夕の歩幅

今回のお題は「七夕の歩幅」です。
正直なところ、「七夕」も「歩幅」もバリエーションを広げにくいお題だなと頭を抱えてしまいました。

試行錯誤の突破口は、「たなばた」から連想した「たなぼた(棚から牡丹餅ぼたもち)」をかけた小さな言葉遊びです。
「棚からバター」という着想は浮かんだものの、今度はその必然性をどう作るかでまた一苦労しました。410字という限られた文字数の中、「バターサンド」では文字数がオーバーしてしまうため「バター飴」にしました。北海道らしさも添えたくて、最終的には牧場特製という設定を加えました。

一方の「歩幅」という言葉からも、歩幅が合う、合わない、広い、狭い……。そんな人間模様を巡らせるうちに、ふと「きれいに歩幅を揃えて歩く子供たち」の情景が脳裏に浮かびました。

では、バター飴と、歩幅を合わせる子供をどうつなげようか。
そこで思い出したのが、私の出身地である北海道の七夕行事「ローソクもらい」でした。
子供たちが提灯を掲げて「ローソク出せ出せよ、出さないと引っかくぞ」と歌いながら家々を回り、ローソクやお菓子をもらう風習です。
私が子供の頃は、この日だけは近所中を歩き回るのが楽しみでした。(もっとも、北海道の七夕は八月なのですが。)
そこへ最初に思いついたダジャレや、歩幅を揃えて歩く子供たちの情景を重ねていきました。

最初は「棚からバター」という小さなダジャレにすぎませんでした。それが故郷の記憶と結び付き、気づけば一年に一度だけ心を交わす、現代の彦星と織姫の物語になっていました。

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