【2026年08月最新】X(Twitter)アルゴリズム解析レポート|投稿が「おすすめ」に載る条件がついに公開・SNS運用7つの鉄則【前回5月版との差分解説】
こんにちは!
株式会社みずいろの代表取締役CEO兼CTO 松井です。
私たちはシステム開発で様々な企業のビジネスを支え、「変革と挑戦を続ける社会に導く」というミッションを掲げています。弊社についてはコーポレートページまたは企業史をご覧ください。
2026年8月中旬、Xが公開しているアルゴリズムのリポジトリ(GitHub「x-algorithm」)が、過去最大規模で更新されました。変更されたファイルは2,000以上、コードベースの規模は前回の10倍以上に及ぶ、過去最大の情報公開です。
本記事で扱う「おすすめ」とは、Xのアプリを開いたときに最初に表示される、タイムライン上部の「おすすめ」タブ(英語版では「For You」)のことです。フォローしていない人の投稿が流れてくる、あのタブです。今回公開されたのは、まさに「おすすめタブに表示される投稿がどう選ばれているのか」の仕組みそのものです。
前回5月版の解析記事はこちらです。
【2026年05月最新】X(Twitter)アルゴリズム解析レポート|Grok全面導入時代を勝ち抜くSNS運用7つの鉄則
https://note.com/i_matsui/n/nee2089295535
今回も公開されたソースコードをAIコーディングエージェント「Claude Code」で解析し、5月版と8月版のコードの差分をすべて突き合わせ、SNS運用に関係するポイントに絞って解説します。
私自身で直接コードの中身を解析していないため「速報」レベルの内容ですが、国内外のXの投稿やWeb記事をもとにファクトチェックを行っており、大きなズレはないと考えています。
しかし本記事の内容は参考程度とし、内容の真偽は自己判断でお願いします。
結論:3行サマリー
「いいね0.5点、通報−234点」という採点表が初めて公開された。ただし、投稿にいいねが付くたびに点数が貯まるのではありません。スコアは「見る人ごと」に、AIが反応を予測して毎回計算し直されます。ここを誤解すると運用判断を誤ります。
いわゆる「シャドウバン」に相当する仕組みが、ルール一覧ごと公開された。フォロワー向け 28 ルール、おすすめ向け 54 ルール。両者の差分 26 ルールが「フォロワーには見えるのに、おすすめに載らない」状態の正体です。
順位の前に「候補に入るか」の関門がある。リプライ・リポストはフォロワー外向けの候補に入らず、勝負は投稿後48時間(動画のみ30日)。「点数を上げる」前に「土俵に上がる」ことが今回の最大のテーマです。
前回(5月版)と今回(8月版)の主な差分

前提として、おすすめタブのタイムラインは「①候補の投稿を集める → ②点数を付けて表示順を決める → ③見せない投稿をはじく」という3段階で作られています。5月版までに公開されていたのは、主に②の「点数の付け方」だけでした。8月版では①と③、つまり「そもそもどの投稿がおすすめの候補として拾われるのか」「どの投稿が表示しないと判定されるのか」までが公開されました。「なぜこの投稿は伸びて、あの投稿は伸びなかったのか」を、入口から出口まで通して追えるようになったということです。運用者にとっての実用度は、過去3回の公開の中で最も高いと言えます。
もうひとつ重要な補足があります。実は、5月まで公開されていたランキングAIのコードは、Xのサーバーで実際に動いているものではなく、「仕組みを説明するための見本(サンプル)」でした。X自身が今回の説明文で「以前公開していたのはGrok(xAIの対話AI)の旧版を流用した見本だった。今回は本番で実際に使っているものを公開する」と明記しています。本物のランキングAIのコードが公開されたのは今回が初めてで、その中身はGrokとは別に、おすすめ専用に作られたAIでした。前回記事で「Grok全面導入」とお伝えした部分は、この点を踏まえて読み替えていただければと思います。
大前提:「おすすめ」は、見る人ごとに毎回作り直されている
7つのポイントに入る前に、記事全体の理解を左右する大前提をひとつだけ説明させてください。
多くの人は、おすすめタブの仕組みをこうイメージしていると思います。
投稿にいいねや共有が付くたびに点数が貯まっていき、点数の高い投稿がみんなのおすすめに載る
実際の仕組みは違います。投稿に点数は貯まりません。
スコアが計算されるのは、誰かがXを開いて、その人のタイムラインが組み立てられる瞬間です。流れは5つのステップです。
ステップ1:候補集め—入り口は2つある
あなたのおすすめタブの候補は、2つのルートから集められます。
ルートA(フォロー中):あなたがフォローしている人の投稿は、専用の保管場所から、リプライ・リポストも含めてほぼ全部が候補に入ります
ルートB(フォロー外):フォローしていない人の投稿は膨大にあるため、全部は見ません。「索引」(候補を探すための検索名簿)に登録された投稿の中から、あなたに合いそうなものが検索されます
集まった候補は1つのプールに合流します。ここから先は、出身ルートに関係なく同じ土俵で競います。
ステップ2:AIによる予測
AIが候補を1件ずつ見て、「あなたがこの投稿にいいねしそうな確率」「リプライしそうな確率」「通報しそうな確率」……を、あなたの過去の行動履歴(直近約1,000件)と投稿の中身から予測します。
ステップ3:採点
行動ごとの予測確率に、行動ごとの重み(この後のポイント1で紹介する採点表)を掛けて合計し、あなた専用のスコアを付けます。
ステップ4:スコアの調整
素点のまま並べるのではなく、投稿の「形式」や「並び」による調整が入ります。主なものは3つです。
フォロー外の投稿と、フォロー中の人のリプライ・リポストは、スコアが 0.75倍 に割り引かれる(オリジナル投稿を優先する設計。詳しくはポイント3)
同じ著者の投稿が並ぶ場合、その人の2本目以降は段階的に割り引かれる(2本目0.625倍 → 3本目0.44倍 → …下限0.25倍)。1人の連投でタイムラインが埋まらないようにする仕組みです
内容がよく似た投稿が並びすぎないよう、類似投稿の間引きが行われる
ステップ5:並べて完成
調整後のスコア順に並べ、最後に表示可否のルール(ポイント6)で問題のある投稿を外したものが、あなたのおすすめタブです。
つまりスコアは「投稿」に付くのではなく、「投稿 × 見る人」の組み合わせに付きます。同じ投稿が、Aさんのおすすめでは上位に載り、Bさんのおすすめには一切載らない、ということが普通に起きます。「バズった投稿が全員に一斉配信される」のではなく、「反応しそうな人を、1人ずつ判定して配られる」イメージです。
「では、実際に付いたいいねの数は無意味なのか?」—そうではありません。いいね数は、この採点式とは別の場所で決定的に効きます。採点の土俵に上がる前の「そもそもおすすめの候補として拾われるか」を左右するのです(ポイント4で説明します)。
件数は入場券、採点は一人ひとりへの当てはまり予測。この役割分担を前提に、7つのポイントを見ていきます。
ポイント1:「採点表」がついに公開された—通報1件=いいね468件分、ではない
今回いちばんの目玉は、大前提のステップ3で使われる「行動ごとの重み」の実数値、いわば採点表が初めて公開されたことです。ファイルの冒頭には「本番設定を自動でコピーしたもの(最終同期 2026年8月12日)」と明記されており、サンプル値ではありません。
主な値は次のとおりです。
プラス評価
リンクをコピーして共有:20.0
リプライ:5.0(相互フォローの相手のオリジナル投稿への返信は +15 されて 20.0)
DMで共有・引用ポスト:各 5.0
著者をフォロー:4.0
共有ボタン:2.0
リポスト:1.0
いいね:0.5
投稿クリック:0.4、リンクを開く:0.2
滞在時間:1秒あたり 0.004(30秒で頭打ち)
マイナス評価
通報:−234.0
ミュート:−58.8
興味なし:−43.2
ブロック:−31.2
ここで必ず押さえてほしいのが、「通報1件でいいね468件が帳消し」という読み方は間違いだということです。X自身がこの誤解を予期して、コード内と説明文の計4か所に否定コメントを入れています。
大前提で説明したとおり、この重みが掛かる相手は「実際に付いた件数」ではなく、「見ているあなたが、その行動をしそうな確率」です。式にするとこうなります。
あなた向けのスコア = 0.5 ×(あなたがいいねしそうな確率)+ 5.0 ×(リプライしそうな確率)+ … − 234 ×(通報しそうな確率)
たとえばAIの予測が「いいね確率3%、リプライ確率0.2%、通報確率0.001%」なら、スコアは 0.5×0.03 + 5.0×0.002 − 234×0.00001 ≒ 0.023。この式のどこにも「実際に付いたいいねの件数」は登場しません。
通報の重みが−234と極端に大きいのは、通報が起きる確率がいいね確率の1000分の1以下と、桁違いに小さいからです。上の例でも、−234を掛けてようやく −0.002 と、いいね項と同じ土俵に乗る大きさになります。確率の小ささを重みで補正しているだけで、「通報1件の破壊力が468いいね分」という意味ではない—というのがX側の説明です。
また、カウント対象は「ホームのタイムラインに表示された投稿の上での行動」だけです。外部からURLを配って通報を集めるような操作は、この計算には乗りません。
SNS運用担当者への影響
「通報されたら終わり」でも「いいねを買えば伸びる」でもない、という当たり前の事実に、初めて数値の裏付けが付きました。一方で、通報・ミュート・ブロックの予測が立つような投稿(誤解を招く釣りタイトル、過激な物言い)は、件数が少なくても構造的に不利になります。
運用上のアクション
エンゲージメント数の絶対値ではなく「見た人がどう反応しそうか」で投稿を設計する
通報・ミュートを誘発しやすい表現(誇大・断定・炎上狙い)は費用対効果が合わないと理解する
ポイント2:評価の主役は「いいね」ではなく「共有」と「会話」
採点表をあらためて眺めると、Xが何を評価したいかがはっきり見えます。
いいねは 0.5。それに対して、リンクをコピーして共有は 20.0(いいねの40倍)、リプライ・DM共有・引用は各 5.0(10倍)です。「いいねで終わる投稿」より「誰かに送りたくなる投稿」「会話が生まれる投稿」が、桁違いに高く評価される設計です。
逆に、プロフィールクリックの重みは現在 0.0、つまりまったく効いていません。「プロフィールに誘導するテクニック」は、少なくともランキング上の意味を失っています。
なお、5月版で正式追加をお伝えした「滞在時間」は引き続き有効です(1秒あたり0.004、いいね確率0.8パーセントポイント相当)。ただし今回、学習時に30秒で頭打ちにされていることが分かりました。30秒を超えて読ませても、それ以上の差は付きません。
SNS運用担当者への影響
KPIを「いいね数」に置いている運用は、アルゴリズムの評価軸とズレています。指標として見るべきは、リプライ・引用・共有(特にリンクコピー)の発生率です。
運用上のアクション
「この投稿は誰かに送りたくなるか?」を企画段階のチェック項目に入れる
問いかけ・意見表明など、返信と引用が自然に生まれる形式を増やす
長文は「30秒で読み切れる密度」を一つの目安にする
ポイント3:フォロワー外に届くのは「オリジナル投稿」だけ
今回の公開で、運用に最も直結する発見がこれです。
大前提のステップ1で説明したとおり、フォロワー外の人のおすすめに載るための入り口は「ルートB=索引からの検索」だけです。Webサイトにたとえるなら、どれだけ有益な情報を載せたページでも、Google検索にヒットしなければ誰にも見つけてもらえないのと同じで、索引に載らない投稿は、フォロワー外の人向けの候補として検討すらされません。
では、どんな投稿が索引に載るのか。公開されたコードの登録条件は明快でした。
コミュニティ投稿 → 登録しない
リプライ → 登録しない
リポスト → 登録しない
表示禁止・成人向け判定 → 登録しない
それ以外(=単独のオリジナル投稿)→ 登録
では、フォロワーに対してはどうか。フォロー中の人の投稿は索引を通らずルートAで候補に入るため、リプライ・リポストもフォロワーのおすすめには表示されえます。ただしこちらにも今回、新しい不利が見つかりました。大前提のステップ4で触れた 0.75 倍の割引が、フォロワー外の投稿だけでなく、フォローしている人の「リプライ」と「リポスト」にも適用されるようになっていたのです(5月版にはなかった処理です)。
整理すると、リプライ・リポストは、①フォロワー外向けの索引に入らない(=フォロワー外には届かない)、②フォロワー向けの採点では0.75倍に割引、③相互フォロー加点の対象外、と何重にも不利な扱いです。
混同しやすいので補足すると、この0.75倍は「投稿そのものがリプライ/リポストという形式である場合」の話です。ポイント2の「リプライ:5.0」は逆に「リプライされそうな投稿への加点」なので、会話を生む投稿は優遇、会話の断片や転載という形式は軽い減点、という関係になります。オリジナルを作る人を一等地に置く、という一貫した方針です。
一方、引用ポストはオリジナル投稿と同じ扱いで索引に入ります。ただし注意点があり、引用元の投稿やアカウントが表示禁止判定を受けていると、自分の投稿ごと表示から消えます。スレッドへの返信も同様で、親投稿が落ちれば自分の返信も道連れです。
SNS運用担当者への影響
「リプライ周りで活動してフォロワー外に露出する」という戦術は、構造上ほぼ成立しません。フォロワー外への到達手段は、自分のオリジナル投稿(と引用ポスト)に集約されています。
運用上のアクション
運用の主軸をオリジナル投稿に置く。リプライはフォロワーとの関係構築用と割り切る
引用する場合は、引用元のアカウントの信頼性を確認する(凍結・制限中のアカウントの引用は自分の露出を失う)
ポイント4:勝負は最初の48時間。ただし動画だけは30日
投稿の「寿命」も数値で確定しました。
おすすめ候補として扱われる投稿の最大年齢:48時間
フォロワー外向け索引の更新が止まるタイミング:投稿後およそ49時間
しかも索引の更新は、いいね数が1→2→4→8→16→32…と倍々の節目に達した瞬間にしか行われません。初速でいいねが付かない投稿は、索引上の情報が古いまま埋もれていきます。「初期エンゲージメントが大事」という経験則の理由が、ここではっきりしました。初期のいいねは点数を上げるのではなく、推薦候補としての登録・更新を進める「入場券」なのです。
そして大きな例外が動画です。
テキスト投稿の索引寿命:最長 48時間
動画の索引寿命:最長 30日(殿堂入り扱いの動画は5年)
ただし条件は厳格で、「添付メディアがすべて動画」かつ「10秒を超える」ことが必要です。10秒ちょうどの動画、画像と動画の混在投稿は対象外です。
SNS運用担当者への影響
テキスト投稿は2日で勝負が終わるフロー型、10秒超の動画は1か月効くストック型と、まったく別の資産として設計できます。
運用上のアクション
投稿直後〜48時間にエンゲージメントが集まるよう、投稿時間をフォロワーのアクティブ時間に合わせる
残したいコンテンツは「10秒超・動画のみ」の形式で作る(画像を混ぜない)
ポイント5:外部リンクは「減点」されない。ただし「中身が空」と見なされる
「リンクを貼ると伸びない」という通説について、今回コード全体を検証しました。結論は次の3点です。
① 「リンクがあるから減点」という処理は存在しません。むしろ今回、「リンクを開く」が新しい加点項目(+0.2)として追加されました。方向としてはリンク付き投稿に有利な変更です。
② ただし、リンクのURL文字列は「投稿の意味」から削除されます。AIは投稿の中身を「意味データ」に変換してから扱いますが、その変換の直前に、本文中の短縮URL(t.co)を丸ごと削除する処理が入っています。つまり「詳細はこちら→URL」という投稿は、AIから見ると「詳細はこちら→」という中身のほぼ空の投稿になります。減点ではなく、判断材料の消失です。
一方で、リンクカード(OGP)のタイトル・説明文・サムネイル画像は、意味データにきちんと含まれます。ここが対策の要です。
③ リンク先の「評判」は別ルートで強烈に効きます。XはURLごとに評判データを持っており(短縮URLの転送先まで追跡)、評判がBAD判定になるとスパムラベルが付き、X全体から表示されなくなります。しかも遡及型で、URLの評判が後から悪化すると、そのURLを含む過去の投稿にまでまとめてラベルが付きます。また「フォロワーでない相手への、低品質URL付きメンション」には専用のスパム判定ルールも存在します。
SNS運用担当者への影響
「リンクは1リプに逃がすべきか」という定番の議論に、コードレベルの答えが出ました。リンク自体は不利ではない。不利になるのは「本文が空同然」「リンク先の評判が悪い」場合です。なおポイント3のとおりリプライは索引に入らないため、「リンクをリプに逃がす」とリンク到達そのものは減ります。
運用上のアクション
リンク先のOGP(タイトル・説明文・画像)を必ず整備する
本文はURLを消しても内容が伝わる文章にする
短縮URL・多段リダイレクト・管理外のアフィリエイトリンクを避け、信頼できるドメインに直リンクする
ポイント6:「シャドウバン」の仕組みが、ルール一覧ごと公開された
今回の公開で社会的インパクトが最も大きいのがここです。投稿を「表示するか・警告の裏に隠すか・表示しないか」を決める仕組みが、ルール一覧ごと公開されました。5月版には存在しなかったファイル群です。
構造はシンプルです。
フォロワーのタイムラインに出すときの判定:28ルール
フォロワー外の「おすすめ」に出すときの判定:28+26=54ルール
この差分の26ルールこそが、いわゆる「シャドウバン」(フォロワーには見えるのに、おすすめに載らない状態)の正体です。追加26ルールには、スパム疑い・悪意あるURL・なりすまし疑い・乗っ取りアカウント・成人向け各種などが並びます。中には「アイコン画像やヘッダー画像がNSFW判定」というルールもあり、この場合は投稿内容と無関係に全投稿がおすすめ対象外になります。
注意すべきは、投稿単位のルールがフォロー関係を見ないことです。ラベルの付いた投稿は自分にだけは見え続けるため、投稿者は異変に気づきにくい構造になっています。
SNS運用担当者への影響
「急にリーチが落ちた」ときの切り分けが、初めて体系的にできるようになりました。原因候補は①ラベルが付いた、②候補に入っていない(ポイント3・4)、③単に競争に負けた・類似投稿の間引きに掛かった、の3系統です。①だけがペナルティであり、リーチ低下=シャドウバンとは限りません。
運用上のアクション
リーチが落ちたときは「ラベルが付いた」「候補に入っていない」「競争に負けた」の3系統で原因を切り分ける
アイコン・ヘッダー画像を含むプロフィール全体を、広告審査に出せる水準に保つ
ポイント7:アカウントの「信用スコア」が存在し、自動判定の免除券になっている
最後は、アカウント自体の評価の話です。
Xはフォロー関係のネットワークをたどって、アカウントごとに0〜100点の「信用スコア」を計算しています。Google検索の原型になったPageRankと同じ考え方で、「信用あるアカウントからフォローされているアカウントは信用できる」という連鎖で点数が決まります。
このスコアの用途がはっきりしました。公開されているスパム自動判定ルール20本のうち12本に、「信用スコア54以上のアカウントは対象外」という免除条件が入っていたのです(スコアが取れない場合はフォロワー2.5万人超で代用)。同じ投稿・同じ行動でも、信用スコアが高ければ自動スパムラベルは付かない。逆に言えば、新規〜中規模アカウントほど自動判定の網に掛かりやすい構造です。
計算方法にも重要な特徴が2つあります。
初期配分の50%は「Premiumまたは認証済みアカウント」だけに配られる。ただし課金状態はランキング計算そのものには使われておらず、効くのは「自動判定からの保護」という側面です
エンゲージメントによる加点は「誰からか」で重みが変わる。信用度が高く、めったにいいねしない人からの1いいねは、無差別にいいねする人の大量のいいねより重い。同一運用者と推定されたアカウント同士のやり取りは計算から除外されます(自作自演対策)
また別系統で、アカウントごとの「ブロック率・通報率」も集計されています。分母になるのはフォロー関係のない人からのいいね(人数ベース・約30日分)だけで、分子の通報は180日分残ります。フォロワー内輪のエンゲージメントは分母を増やさないため、炎上耐性はフォロワー外リーチの大きさに比例するという、少し意外な構造です(発火する閾値は上位0.1〜0.25%相当の極端な値で、通常運用で誤爆する設計ではありません)。
SNS運用担当者への影響
アカウントの信頼は、投稿単位のテクニックより長期の資産として効きます。「誰にフォローされているか」「誰からエンゲージメントを受けているか」の質が、目に見えないところで防御力の差になります。
運用上のアクション
相互フォロー企画・フォロワー購入は、信用スコア計算上ほぼ無意味(低信用アカウントからのフォローは質量を運ばない)と理解する
業界内で信頼あるアカウントとの自然な関係構築を、長期施策として位置づける
注意:機械的な運用は「操作のリズム」で検知されている
今回公開されたスパム・bot対策のコードは、運用の常識を一段階更新する内容でした。ポイントだけ挙げます。
投稿内容を一切見ず、操作のテンポと順序だけを見るbot検知AIが存在する。「フォローして即いいね」「フォローして即リプライ」は、エンゲージメントの人工的な増幅パターンとして独立の判定項目になっている
コピペ投稿の検出には日本語(CJK文字)専用の検出ジョブが、通常投稿用・リプライ用それぞれに用意されている。テンプレ返信や同一文面の量産は明確に検知対象
自動処罰ルールの中に「AIが書いたっぽいと判定された投稿・アカウント」への30日ラベルが存在する。AI利用自体ではなく「低品質な文章の機械的量産」が対象と読める
一方で誤検知防止のゲートも厚く、投稿作成が行動の半分以上を占める普通の投稿者は判定対象から外れる。実際の発動閾値は公開コードでは伏せられており、逆算はできない
生成AIを運用に使うこと自体は問題ではありませんが、「同じトーンの文章を高頻度で量産する」運用は、複数の検知ラインに同時に近づく行為だと理解してください。
SNS運用担当者がとるべき7つの鉄則
ここまでの内容を、実務の行動指針に落とし込みます。
オリジナル投稿を主軸にする。リプライ・リポストはフォロワー外に届かない。フォロワー外リーチの手段は自分の投稿だけ
「誰かに送りたくなるか」で企画を判断する。共有20.0・リプライ5.0・いいね0.5。保存版情報・意見が割れる問い・引用したくなる視点が最強
最初の48時間に全力を注ぐ。初期のいいねは点数ではなく「推薦候補としての入場券」。投稿時間はフォロワーのアクティブ時間に合わせる
残したいコンテンツは「10秒超・動画のみ」で作る。テキストの寿命48時間に対し、動画は30日
リンクはOGPを整え、本文だけで伝わる文と併記する。リンク自体は減点されないが、URL文字列は「意味」から消される
テンプレ量産・機械的な運用をやめる。日本語専用のコピペ検出と、行動リズムのbot検知が動いている
アカウントの「見た目」と「信用」を資産として管理する。アイコン・ヘッダー・固定ポスト・引用先まで露出に影響する。信用スコアは自動判定からの防御力になる
おまけ1:小規模アカウントには「お試し枠」がある
フォロワーが少ないと不利、と思われがちですが、今回のコードには小規模投稿者向けの引き上げ機構が確認できました。
条件は「オリジナル投稿」「著者のフォロワー1,000人以下」「その投稿の閲覧数1,000未満」。該当する投稿は、1回のフィード表示につき最大1本だけ、候補内の上位(点数順16番目相当)まで引き上げられます。標準で有効です。
「まだ十分見られていない小さなアカウントの投稿を、一度試しに出してみる」という趣旨で、フォロワー数が少なくても土俵には上がれる設計になっています。ただしフォロワー1,001人になった時点で対象外になる、規模の小さい仕組みです。
おまけ2:おすすめを決めているAI「Phoenix」の正体
ここまで「AI」と呼んできた、おすすめの採点を担うシステムには「Phoenix(フェニックス)」という名前が付いています。「XのおすすめはGrokが判定している」と言われることがありますが、正確には違います。少しだけ技術寄りの話になりますが、運用の理解にも直結するので、Phoenixの中身を噛み砕いて紹介します。
Grokではなく、おすすめ専用に作られたAI
PhoenixはGrokのような会話AIではありません。「この人がこの投稿にどう反応するか」を予測することだけに特化した、推薦専用のAIです。差分の章で触れたとおり、5月まで公開されていたのはGrokの旧版を流用したサンプルコードで、実際にXで動いているPhoenix本体のコードが公開されたのは今回が初めてです。
「考える部分」は意外と小さい
公開された本番設定から計算すると、Phoenixのランキングモデルの「考える部分」(AIの処理エンジンにあたる部分)は約3.4億パラメータしかありません。最近の対話型AIが数千億〜数兆パラメータ規模であるのと比べると、数百分の一から数千分の一の小ささです。
理由は速度です。おすすめタブは、誰かが画面を開くたびに最大1,400件の候補を一瞬で採点し直す必要があります。会話AIのような巨大モデルでは、この速度に間に合いません。
代わりに『記憶』が桁違いに巨大—容量は約490GB
では、小さな頭脳でなぜ精度が出るのか。答えは「記憶」です。
Phoenixは考える部分とは別に巨大な「記憶の辞書」を持っています。ユーザー1億人分・投稿1億件分・著者3,000万人分(さらにIPアドレス1,000万区画分)について、それぞれの特徴を記録しているのです。この記憶部分の容量は約490GB。モデル全体の99%以上を記憶に使っているという、対話型AIとは真逆の構成です。
つまりPhoenixは「小さな頭脳 + 巨大な記憶」。考える部分を軽くして速度を確保し、知識は辞書引きで瞬時に取り出す、という設計です。
本記事の要約FAQ
Q. 通報を1件受けたら、いいね468件分マイナスされるのですか?
A. いいえ。重みが掛かるのは件数ではなくAIの予測確率で、X自身がこの解釈を明確に否定しています。ホーム表示上の行動しか計算に乗らないため、組織的な通報の影響も限定的です。
Q. いいね数はランキングに関係ないのですか?
A. AIの採点材料には、いいね数・閲覧数などのエンゲージメント数値は入っていません。ただし、いいね数は「フォロワー外向け候補への登録・更新」の節目(1→2→4→8…件)として決定的に効きます。点数ではなく入場券です。
Q. 外部リンクを貼るとリーチが下がりますか?
A. 「リンクがあるから減点」という処理はなく、むしろ「リンクを開く」が加点項目に追加されました。ただしURL文字列は投稿の意味データから削除されるため、本文が薄いリンク投稿は「中身が空」と扱われます。OGP整備と本文の充実で対処できます。
Q. シャドウバンは実在するのですか?
A. 「フォロワーには見えるが、おすすめタブに載らない」状態を作るルール群(26本)が実在し、今回その一覧が公開されました。ラベルの付いた投稿は自分にだけは見え続けるため、投稿者本人は気づきにくい構造です(詳細はポイント6)。
Q. X Premiumに課金するとおすすめに載りやすくなりますか?
A. 課金状態はランキングの計算材料に入っていません。効くのは信用スコアの初期配分と、それを通じた「自動スパム判定からの保護」という間接的な側面です。
Q. フォロワーが少ないうちは何をしても無駄ですか?
A. いいえ。フォロワー1,000人以下・閲覧1,000未満のオリジナル投稿を引き上げる「お試し枠」が標準で動いています。小規模のうちからオリジナル投稿を積み上げる意味は、コード上も裏付けられています。
まとめ:「点数を上げる」前に「土俵に上がる」
5月版のテーマは「投稿の中身そのものをAIが理解する時代」の到来でした。この方向性は8月版でも変わっていません。AIはいいね数ではなく投稿の意味を読み、見る人ごとに反応を予測しています。
そのうえで、今回新たに見えたのは「そもそも候補に入っているか」という、点数以前の関門の存在です。
どれだけ良い内容でも、リプライなら索引に入りません。10秒以下の動画なら動画枠に入りません。引用先にラベルが付いていれば道連れで消えます。アイコン画像ひとつで全投稿がおすすめ対象外にもなります。逆に、いいね数十件の小さなオリジナル投稿でも、入場券さえ揃えば試しに表示される仕組みが用意されています。
表面的なテクニックが通用しないのはこれまでどおり。そこに「構造を理解して、土俵に上がる条件を外さない」という視点が加わった—それが8月版の最大の変化だと考えています。本質的価値のある発信が正当に評価される構造に、また一歩近づいたと言えるのではないでしょうか。
本記事が皆さまのSNS運用の一助になれば幸いです。
※本記事は、Xが公開しているリポジトリ「x-algorithm」の2026年5月16日時点と8月15日時点のコード差分を解析したものです。記載の数値は公開コード上の標準設定値であり、実際の適用値と異なる場合があります。
