ふたり
こちらの記事はあん様よりご注文いただいた【綴ります】シリーズです。
2026_FIREWORKS
再生ボタンに触れる
耳に飛び込む
懐かしい曲と声
ヘッドホンを抑える指が
微かに震える

どれほどの時を刻み
歩いてきたのだろう
ずっと傍にいたのに
心は孤独を抱え
果てしない
悲しみの痕
凍える身体に
灯ることのない炎
何かを背負い
身体を引きずり
生きていく
絶望と苦しみの狭間で
感覚は麻痺に向かう
それでも歩く
この道を
悲壮な思いを抱き
ハスキーな声で
語られる詩は
いつも心を
激しく揺さぶる
確実なものなどなく
不確定の上に成り立つ
想いや感情
波のように
寄せては返し
焚火のように
膨張し収縮する
言葉が止まる
体温がすっと
下がるように
切なさだけが
色濃く残っていく
そんな情景が
何故か思い浮かび
消えていった
それは
夏の花火みたいに…
198*_If I Fall in Love

小さな部屋の古びた電子ピアノ
彼の指が音を奏で
覚えたての歌を口遊み
それに寄り添いながら
声真似を笑い合った日
彼とは長年連れ添ってきた
同志でありパートナーであり
欠かせない存在
これまでも
これからも
そんな彼が連れてきた
あの人
彼はあの人が好きだった
だから好きになった
もっと好きになれば
彼を深く知れると思った
努力とか見栄ではなく
純粋に彼の思考さえも
好きになりたかった
狭い部屋にふたり
彼から名前を呼ばれ昂ぶる
何度も抱かれ
嗚咽と汗にまみれる
熱い想い
目がくらむような快楽
狭い部屋にふたり
あの人は名を呼ばないが
何度も揺さぶり
心を濡らす
空をもがく感覚と
青く灼かれる情念
彼はずっと傍にいる
好意は増え続け
それは安心や安静に変わり
今なお続いている
あの人はずっと傍にいる
追いかけても追いつけず
燃え続ける熾火のように
それでもハッキリと熱を感じる
彼が好きだったあの人を
心に閉じ込め想いを育てた
届かないと分かっていても
ずっとずっと
ずっと想い続けてきた
追い続け 付いていく
その眼差し
その声
振り下ろす指
込められた思い
全てが今を
築き上げている
息が詰まるほど
あの人だけを見ていた
恋と呼んでもいい
愛と呼んでもいい
叶うはずのない
一方通行の想いだけど
全てを 熱を
捧げた日々だった
ON THE ROAD

彼はあの人から
距離を取った
そう見えたのか
そうだったのか
それは分からない
単身で
あの人の囲いに飛び込み
出されるものを全て
飲み干し 貪った
細胞から歓喜し
打ち抜かれるたびに
涙を流した
あの人への想いが加速し
止めることなど
できるはずもなかった
権利を得るための電話
指が番号を記憶するほど
何度もボタンを押した
当選すれば
跳ねて喜び
落選すれば
次の機会を探す
熱狂に酔いしれ
震える喉と
飛び跳ねる体
振り上げた拳
次の日に来る
痛み
全てが輝いていた
全ての原動力だった
仕事が忙しくなり
遠ざかることもあったが
胸の中に熱と
青白い炎は
消えなかった
時間と生活が安定し
またあの坩堝に
還っていく
そんな姿は彼の眼に
どう映っていたのだろう
どんな感情だったのだろう
彼が連れてきたあの人に
身もだえするほど焦がれ
目を輝かせているのだ
彼と共有したい
その気持ちより
あの人を独占したい
そう思うようになったし
止められなかった
諦念なのか 嫉妬なのか
彼は苦笑いしながら
一緒に楽しむことを
選んでくれた
望んだこととは逆だったが
彼とふたりであの人を
追い続けることで
さらに深まった
2026_ANNIVERSARY
音が胸を叩く
歌が心を貫く
夜空に舞う火の粉
歓声よりも響く歌声
下ろした手に熱を感じる
分厚い感触が重なる
隣にいる彼の声は遠い
きっと鍵盤を叩くように
深く優しく
名を呼んでいるのだろう
聞こえなくても分かる
伝わる熱と
馴染みきった感覚で
彼の声は聞こえなくても
あの人の声だけがこだまする
黄昏に真夜中に
街角で仕事場で
切なくて苦しくて
似ているようで違う
存在感のある地声が
いつもあの日へ連れて行く
しばらく
時間遡行した思考
花が開く一瞬だったのか
サビの始めから
終わりだったのか
彼とあの人の声が
耳の奥で混ざり
リフレインする
そんな記念日は
彼とふたりで夜空を仰ぐ
花開く大輪に
どこまでも響く歌声
どんなに遠くても
歩き続けた時の長さ
蘇る場面と音楽
夜を照らす光と熱
涙をかくす陰と闇
いつも隣の彼は
ずっと寄り添ってくれた
ここにはいないあの人は
ずっと心に棲んでいた
息ができないほどの愛をくれた
私だけのふたり
イメージした曲は
BREATHLESS LOVE
君の名を呼ぶ
