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医療事故調査に思う

事故調査、という仕事があります。
事故調査というと交通事故を想起される方が多いと思いますが、実際の事故調査は様々な“事故”で行われます。

例えば、異物混入や食中毒、院内感染なども“事故”としてそれぞれ専門家が調査を行います。
私が行ってきた施術事故調査。
年間1000件を超える施術事故が毎年のように発生しています。
消費者庁が把握しているのはごく一部ですが、それでも5年で2000件を超える施術事故が記録されています。
その大部分が無資格者による事故。
無資格者とは国家資格を所持していないというだけでなく、
業務範囲外の施術を行う「国家資格保持者」による事故も無資格者による事故になります。
症状増悪(かえって酷くなった)という軽微なものから、骨折や神経麻痺、そして死亡事故まで。
重篤な事故も珍しくありません。

頭の形の施術でいうなら、150回通っても良くならなかったというものから、頭蓋骨陥没や首が回らなくなったというものまで。
私も多くの施術事故調査に携わりましたが、その事故を見ていくと全くの無資格者は少数派で、多くは、
柔道整復師による施術。
助産師による施術。
医師の指導を受けていない理学療法士による施術。
これらも無資格者による施術となり、事故の多くがこのどれか。
医師法ならびにマッサージ師法違反する違法施術になりますが、消費者庁のデータですら個別公開はされません。
だからこそ、余計に無法状態で違法施術がまかり通るのです。

医療事故だけが公開される

そして、時折、ニュースに取り上げられる医療事故。
何故だか施術事故が公開される事はそうそうないのですが、医療事故だけは公開されています。
これは公益財団法人 日本医療機能評価機構が行う「医療事故情報収集等事業」というものがあり、そこにはかなり詳細にわたって公開されている。
正直言って公開されないのは名前くらいなもの。
実際どう公開されているか見てみたいと思います。

医療事故調査
日本医療機能評価機構のサイトから

事例IDは一般公開されてはいますが、何となく薄く墨を入れています。
これは頭蓋縫合早期癒合症の赤ちゃんに対する手術の医療事故。
この事例を選択したのは、このnoteが頭蓋変形を主に扱っているからです。

読んで分かると思いますが、ここまで公表されれば見る人が見れば個人を特定できちゃいますよね……
医師は他の医療職よりも重責を負います。
何より人命を扱うという特権を有しているからですが、それを考えても今の医療制度における医師の扱いはまともじゃないように思います。
もっと医療報酬も含めて適切に扱うべき、と思います。

そしてこの調査を見て思うところも多々あります。

例えば、「当事者部署配属期間」を見てみますと、医師の1人は「23年10ヶ月」と書かれています。
5年の研修期間を過ぎ、その後配属されて23年。
この医師は52歳になっています。
そして【改善策】には「上級医に相談できる体制の確立」。
一般的にこの年齢の医師は技術的にも成熟期とも言える時期で、大学病院だと准教授くらいの職位でしょうか。
そんな医師に「上級医に相談」って……
年齢を最初に見ていなければ、この事故を起こした医師はまだ30代前半くらいなのかなって思ってしまいました。

しかも、休日の、それも朝の6時から手術という過酷な勤務状況下で頑張ってくれている。
その時間に「麻酔担当体制の検討」までしろって……

恐らく普段の勤務時間では手術が行えず、繁忙でキツイ勤務状況ではあるが時間外ではあるけどその赤ちゃんの予後を考え早期に手術を執り行った。
しかもこんな早朝の執刀にも関わらず麻酔医は手術の掛け持ちをしている。
恐らくここでいう上級医がそちらに当たっていたのではないかと思います。

そんな状況がありありと浮かんできませんか?

結果、赤ちゃんを死なせてしまいましたが、それ相当の頑張りがあっての偶発的な事故であるのは想像に難くない。
ですが、上級医に相談しろ!麻酔医の勤務体制を見直せ!と現場の過酷な状況を伝えずにただ一方的に非難される形で公開されたのです。

この事故の改善策はただ1つ。
労働環境の改善しかありません。
配属医師の人数を増やす。
労働時間の適正化。
そして医療報酬を上げる。
医療現場を知っていれば皆さま同意を頂けると思います。
技術の欲しい現場には医師は来ないで、楽で高報酬な美容にばかり医師が向かう。
既に足元から医療崩壊は始まっているのです。

私が思うに……

違法施術を行い事故を起こしても非公開。
かたや厳しい環境下で起きてしまった医療事故は公開。

医療事故を隠蔽しろという訳ではありません。
痛ましい事故であり、もし我が子に同様の事故が起きれば心が引き裂かれる思いです。
そんな事故を思うと、どういった状況で事故が起きたかをその患者さんの親御さんは知りたい情報だと思います。
同様の事故を減らすには情報公開も必要ではありますが、公開の仕方はもう少し考えても良いと思います。
何より医療事故だけが公開されて、違法性が高い違法施術に関しては適切に事故情報が公開されていないのは公平性に欠いています。
適切な情報公開があれば年間1000件を超える施術事故を大幅に減らせると思います。

『特定の疾患又は症状の改善、解消又は緩和することを目的とした施術は、同条が禁止する医業類似行為に該当する』
山形地方裁判所令和7年3月25日判決令和5年(ワ)第61号

判決ではこう判断されています。
法律では医業類似行為は種類が決まっていて、手技による医業類似行為はマッサージ師の資格が必要。
それすら遵守せずに施術を行うのですから事故が多いのもご理解いただけると思います。

個人情報が特定されてしまうような情報公開は不要だと思います。
ですが適切な情報公開があれば無資格者(不適切な資格所持者含む)による事故の多さを多くの方が知るところとなり、そういった人から施術を受けようとする人が減り、結果として施術事故が減る。

この『医療事故情報』が教えてくれたのは2つ。
医療現場の劣悪な環境下で医師や医療従事者は頑張ってくれている。
もう一つは、この医療事故より違法性が高いはずの施術事故は公開されていない。
こういった問題は早期に解決されて欲しい、そう思うのは私だけではないと思いますが、皆さまはどう思われるでしょうか。

整体の違法性についてコチラにまとめています。よろしければお読みいただけると嬉しく思います。

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