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科学の未来はどうなる?「コスパ」重視の研究支援

出典

Biotech investor set to lead US National Science Foundation - Nature


2026年2月、米国の科学技術政策の要である米国科学財団(NSF)で、歴史的な転換が起きようとしています 。

ドナルド・トランプ大統領が、次期局長にバイオテクノロジー投資家のジム・オニール氏を指名する方針を固めました 。もし上院で承認されれば、NSF史上初の「科学者でもエンジニアでもない」トップが誕生することになります 。

半世紀以上にわたり、ノーベル賞級の発見を支えてきた米国の基礎研究の総本山で、一体何が起きているのでしょうか 。

「文系」出身の投資家が科学のトップへ

オニール氏の経歴は、これまでの局長たちとは全く異なります 。

彼はイェール大学とシカゴ大学で人文学を修めた人物です 。ジョージ・W・ブッシュ政権下では保健福祉省(HHS)のスピーチライターを務め、政策立案に関わってきました 。直近では米国疾病対策センター(CDC)の局長代行を務めていましたが、先週そのポストを去ったばかりです 。

研究開発の実務経験を持たない彼の起用に対し、元NSF局長のニール・レーン氏は強い懸念を表明しています 。NSFの助成から生まれる新技術に依存している科学技術コミュニティにとって、これは大きな不安要素となっているのです 。

「中退して起業せよ」という価値観

さらに波紋を呼んでいるのが、オニール氏のバックグラウンドにある価値観です。

彼は億万長者の投資家ピーター・ティール氏の右腕として、2010年に「ティール・フェローシップ」を共同設立しました 。これは、前途有望な学生に20万ドルの資金を提供する代わりに、大学を「中退」して起業することを促すプログラムです 。

学位取得を前提とした学術的キャリアパスを支援してきたNSFのトップに、学位そのものに疑問を呈する人物が座る。これは、組織のアイデンティティに対する公然たる挑戦と言えるかもしれません 。

満身創痍の組織と物理的な喪失

オニール氏が引き継ぐNSFは、すでに限界に近い状態にあります 。

トランプ政権が進める連邦職員削減の直撃を受け、2024年9月時点で1,717名いた職員は、早期退職や解雇によって1,198名へと急減しました 。組織の約30%が失われた計算です 。

さらに衝撃的なのは、NSFが「家」を失ったことです。昨年12月、住宅都市開発省(HUD)に場所を譲るため、専用の本部ビルからの立ち退きを余儀なくされました 。現在、残された職員は完全なリモートワークで業務を継続しています 。米国の科学行政を象徴する物理的な重みが、文字通り消失してしまったのです 。

「科学とは誰のためのものか?」

トランプ政権は当初、NSF予算を57%削減するという壊滅的な案を提示しました 。これに抗議する形で、2025年4月には当時のセシュラマン・パンチャナサン局長が突如辞任しています 。現在、新規の研究助成件数は2024年比で約20%も落ち込んでいます 。

これまで私たちが信じてきた「知的好奇心」に基づく長期的な基礎研究のモデルは、今や「投資効率」や「起業家的成果」を求めるビジネスの手法によって、変質しようとしています 。

科学者ではないビジネスの視点が、停滞する研究現場に革命をもたらすのか。それとも、すぐには金にならない「真理の探求」という科学の本質を破壊してしまうのか 。

科学の聖域が揺るがされている今の状況は、私たちが今後どのような「科学の未来」を選択するのか、その覚悟を深く問いかけています 。

#nature , #トランプ政権 - 関連記事の検索

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