君は1000%
1986オメガトライブの名曲、君は1000%。
この名曲にこんなフレーズがある。
“君は1000% 欲しいよ”
すごい歌詞よねこれ。
100%でも十分やのに、その10倍よ?
牛丼並ひとつ頼んだら、店員さんが牛丼10杯持ってくるんやで?
そんなに食べられへんって。
昔は何も思わへんかったんよ。
夏の歌やし、シティポップな雰囲気がかっこいいし、そういう雰囲気でどすこいみたいな曲やと思って聴いてた。
でも歳を取ると不思議なものでさ、歌詞の聞こえ方が変わるんよね。
“君は1000% 欲しいよ”
欲しいのは分かるし好きなんも分かる。
でもその次の歌詞が気になる。
“素直な瞳で君が見た夢なら
If you give me your heart”
あぁ、なるほど!と。
欲しいのは君そのものじゃなくて、君が見てる夢なんかもね?ってか?
好きな人がいたら、その人の好きなものまで気になったりするやん?
それと同じ温度感じゃない?
好きな映画に好きな本。
それに好きなバンド。
その人が見てる世界を、自分も見たくなる。
多分1000%ってそういうことなんちゃうかな。
君を所有したいんじゃなくて、君が見てる夢ごと欲しくなる。
なんやの…。
めちゃんこロマンチックやん。
こっちは牛丼10杯の話してたのに。
そんなロマンチックな歌ならそう言うてよ。
俺もロマンチックな話のひとつでも書くやんか。
ほな、えーとね、昔好きな人がいたんよ。
その人の好きな映画を観たり、好きな本を読んだり、好きな音楽を聴いたり。
好きなお香を聞いて、部屋で焚いたりもした。
彼女が見てる景色を少しでも見てみたかったんやと思う。
今思えばあれも1000%やったんかもね。
その人そのものじゃなくて、その人の世界観ごと好きになるみたいな。
ロマンチックよね。
でも、好きな人のおすすめ映画は最後まで観れへんかった。
セリフの言い回しが肌に合わへんかった。
好きな人の好きな小説は3ページで目が滑った。そして寝た。
好きな人の好きなバンドは今でもちょっと良さがわからへん。誰とは言わへんけどなにがいいん?
俺は彼女の世界にことごとくタイプが合わへんのやと思った。
それでも唯一続いたものがある。
牛丼の食べ方よ。
その人が紅生姜をお肉の下にたくさん敷いて、その上から溶き卵かけて、醤油をちょっと垂らして食べてはったんよ。
最初は変わった食べ方しはるなぁと思った。
でもとりあえず真似するやん?
なんたって、こちとらあなたの世界に入りたいのだから。
そしたらびっくりするほど美味しかった。
いい食べ方教えてもらったわ〜なんて思いながら、その人の世界を見れた気がして。
その世界に住めた気がして、俺は浮かれてた。
そして恋は一夏で終わった。
恋が始まる瞬間は、脳内でブブゼラ吹いたり太鼓叩いたりするほど俺の世界は華やかになったのに。
恋が終わる時って静かにスンッて終わるんね。
連絡先も消えて、今はもう顔も思い出せへんくらいになった。
でも牛丼の食べ方だけは10数年近く経った今でも残ってる。
要するに、俺にとっての1000%は牛丼。
それだけが彼女と俺を繋ぐ唯一の世界。
