宮大工の現場へ 〜もう宮大工って名乗っちゃっていいよ〜
宮大工の現場へ
~もう宮大工って名乗っちゃっていいよ~
神奈川県へ宮大工の応援に来て、2週間が終わりました。
この会社は週休2日制なので、土日はしっかり休みがあります。
先週の土曜日は、社員研修として山梨県にある国宝や重要文化財を見学する勉強会がありました。
応援の私にも「一緒に行きませんか?」と声を掛けていただき、せっかくの機会なので参加させてもらいました。
山梨県内のお寺や神社を巡りながら、親方が建物一つひとつを解説してくれます。
「この時代はこういう意匠が特徴なんですよ。」
「この組み方は○○時代によく見られます。」
普段なら絶対に聞くことのできない話ばかりです。
同じお寺でも、建てられた年代によって細かな意匠や納まりが違う。
宮大工さん達はそんなところまで見ているんだと驚きました。
正直に言うと、その頃の私は現場へ出てまだ3日目。
細かな部材の名前や納まりの話を聞いても、ほとんど分かりませんでした。
でも、それ以上に良かったのは、普段あまり話す機会がなかった職人さん達とゆっくり話ができたことです。
現場では皆さん忙しく、それぞれ作業に集中しています。
こういう勉強会だからこそ、色々な話ができました。
その中で、同じ宿舎に泊まっていた大先輩と話す機会がありました。
職歴50年。
まさに宮大工一筋という方です。
私は何気なく話しました。
「普段は住宅の仕事をしていて、お寺の現場は今回が初めてなんです。」
すると、その大先輩は笑いながらこう言いました。
「そうなんですか。私も昔は住宅をやっていた時期がありましたよ。」
そして続けて、
「でも、もう宮大工って名乗っちゃっていいですよ。」
あまりにもさらっと言われたので、一瞬意味が分かりませんでした。
「えっ?」
思わず聞き返すと、
「宮大工なんて資格じゃないですから。」
「自分で名乗ればいいんですよ。」
「○○寺の重要文化財の現場をやっていましたって言えばいいんです。」
「そうすると、『へぇ、あの現場へ行っていたんですね。』って話になりますから。」
そういうものらしいです。
ということで……
宮大工になりました。
……とは、さすがにまだ名乗れません(笑)。
確かに「宮大工」と一言で言っても、その中には見習いからベテランまで様々な立場があります。
木を刻める人。
図面を描ける人。
現場を任される人。
棟梁として全体をまとめる人。
一人前になるまでには何十年という時間が必要な世界です。
だから私は、まだまだ住宅大工として宮大工の世界を学ばせてもらっている立場です。
それでも、現場へ出てまだ3日しか経っていない私に、50年の経験を持つ大先輩がそんな言葉を掛けてくれたことは、本当に嬉しかった。
少しだけ、この世界に受け入れてもらえたような気がしました。
あの何気ない一言は、今でも忘れられません。
