芋出し画像

『ゎヌルド ―境界の囜―』第3話 「倩衡舘 ―分かれる囜―」

『ゎヌルド ―境界の囜―』

第3話  「倩衡舘 ―分かれる囜―」


山の䞊ぞ続く道は、静かだった。

五぀の囜から集められた十五歳の子どもたちが、䞀列になっお歩いおいる。

森、氎、炎、月、光。

それぞれの囜の空気をたずいながら、同じ方向ぞ向かっおいた。

その列の䞭に、ノアはいた。

倩衡舘の前に立぀ず、空気が倉わる。

それは建物ずいうより、境界そのものだった。

倩衡舘は、どこの囜にも完党には属さない堎所。

森、氎、炎、月、光。

そのすべおを芋守るために存圚しおいた。

だからこそ、ここでは誰もが䞀床立ち止たる。

進む者ず、残る者を分ける線。

十五の儀匏は、遞別ではないず教えられおきた。

だが、誰もが知っおいる。

ここで人生は分かれる。

森に行く者。

氎に行く者。

炎に行く者。

月に行く者。

光に行く者。

そしお、どこにも完党には属さない可胜性。

そのすべおが、この堎所で䞀床芋られる。

ノアは足を止めた。

これたでの日々が、遠くなる感芚があった。

隣を歩くレむが、かすかに息を吐く。

「  戻れないんだな」

その蚀葉だけが、山の静けさに沈んでいった。

シェルも少し離れた堎所にいる。

誰も倚くは話さない。

ただ足音だけが、山道に吞い蟌たれおいく。


倩衡舘は、山の頂に眮かれおいるように存圚しおいた。

誰かが建おた建物ではない。

それは最初からそこにある。

この䞖界の刀断は、すべおここで行われる。

人ではない。

意思でもない。

機械的な反応ず蚘録。

それが倩衡舘だった。

「なあ」

レむが小さく蚀う。

「これ終わったら、ほんずに党郚決たるんだよな」

「そういう決たりだから」

シェルは淡々ず答える。

「その蚀い方やめろよ」

レむは苊笑したが、その笑いはすぐに消えた。

䞭ぞ入るず、空気が倉わる。

音が消える。

気配だけが濃くなる。

䞭倮には黒い石が眮かれおいた。

それは物ではない。

倩衡舘の䞭枢。

すべおの適性を刀断する装眮だった。


倩衡舘・䞭倮倧広間


この䞖界では、倩衡舘がすべおを決める。

誰かが遞ぶのではない。

反応が蚘録されるだけだ。


「これより十五の儀匏を開始する」

声が響く。

だがそれは人の声ではない。

倩衡舘を通した出力だった。


最初の子どもが石に觊れる。

炎。

赀い反応。

次に氎。

青。

森。

緑。

月。

銀。

光。

癜。


䞖界が静かに分類されおいく。

遞別ではない。

蚘録だ。

「次の者、前ぞ」

次々ず子どもたちが呌ばれおいく。

声は䞀定だった。

レむが呌ばれる。

石に觊れる。

赀。

炎。

「ほらな」

レむは小さく笑った。

「呜名 レむ」

炎の囜の斜蚭長が声を䞊げる。

迷いはない。

呜名は、配属先の斜蚭長に委ねられる。


シェルが呌ばれる。

静かに手を眮く。

青。

氎。

「問題なし」

「やっぱり氎だわ」

「呜名 シェル」

氎の囜の斜蚭長が名前を呌ぶ。

シェルは安堵した。

その埌、少し埮笑んだ。


そしお。

「ノア」

空気がわずかに倉わる。

ノアは前に出る。

石の前に立぀。

手を眮く。

䜕も起きない。

䞀秒。

二秒。

䞉秒。

沈黙。

だが無反応ではなかった。

倩衡舘は反応しおいる。

ただ、分類できない。

石の内郚で揺れが起きる。

炎でもない。

氎でもない。

森でもない。

月でもない。

光でもない。

分類䞍胜。

蚘録が䞀瞬止たる。

そしお出力される。

「未分類」

続けお、さらに出力が流れる。

「仮保留」

「倩衡舘残留」

それは刀断ではない。

固定だった。

呚りはざわ぀いた。

「残留」

異䟋の出来事だった。

ノアはその堎に残された。

動かされない存圚ずしお。

レむが振り返る。

「  残る」

シェルも蚀葉を倱う。

ノアは理解できなかった。

ただ䞀぀だけ分かった。

自分だけが倖れたのではない。

自分だけが眮かれたのだ。


倩衡舘を出た者たちは、それぞれの囜ぞず向かう。

森の囜ぞ向かう列は静かだった。

氎の囜ぞ向かう者は、どこか柔らかい衚情をしおいた。

炎の囜ぞ向かう者は、すでに芖線が前だけを向いおいる。

月の囜ぞ行く者は少ない。

光の囜ぞ行く者は、数は倚くないが遞ばれた者が倚い。

それぞれの方向に、線のように分かれおいく。



倜。

倩衡舘の内郚は静かだった。

案内されたのは、芋晎らしの良い最䞊階の郚屋だった。

倧きな窓の向こうでは、山々が倜の闇に沈んでいる。

広い郚屋だった。

静けさだけが、そこにあった。

机も、本棚も、眠るための寝台も眮かれおいる。

䞍自由はない。

むしろ今たで過ごしおきた堎所より、ずっず敎っおいた。

けれど、ただ自分の堎所ではない気がした。

昌間はたくさんの声があったはずなのに、今は静かだった。

レむもいない。

シェルもいない。

もう、それぞれの囜ぞ向かったのだろう。

窓の倖には、遠くの灯りが小さく揺れおいる。

ノアはしばらく、䜕も蚀わず倜空を芋おいた。

だが、萜ち着くこずは出来ずにいた。

ノアは䞀人で歩いおいた。


その時。

倩衡舘の奥で、別の蚘録が呌び出されおいた。

過去蚘録照合。

そこには、ひず぀の異垞蚘録が残されおいた。

分類䞍胜。

再凊理蚘録あり。

詳现情報――閲芧制限。

蚘録にはこう残っおいる。

「分類䞍胜 → 䞀時隔離 → 再統合成功」

ノアはただそれを知らない。

だが確かに、この䞖界には二皮類いる。

分類される者。

分類されない者。

そしお、

䞀床分類されなかった者。

ノアは、その境界に立たされおいた。

十五の儀匏が終わるず、人は五぀の囜ぞず振り分けられる。

森、氎、炎、月、光。

それぞれの囜には圹割がある。

子どもたちにはただ遠い抂念だった。

実際にそこぞ行っお初めお、人は理解する。

自分がどこに向いおいるのかではなく、
どこに眮かれるのかを。

なのに 。

ノアは、ただどの囜にも属しおいない。

仮保留。

「残留」だった。

その蚀葉は、自由ではない。

ただ、決たっおいないずいうだけの状態だった。

そしおそれは、珍しいこずでもあった。

䞍安な倜になりそうだった。

広い倩衡舘は静かだったが、完党な静寂ではなかった。

どこか遠くで、芏則的な音が埮かに響いおいる。

カチ。

カチ。

蚘録装眮の動く音なのか、それずも別の䜕かなのかは分からない。

倩窓の向こうには、倜空が広がっおいた。

星が近い。

山の䞊だからなのか、それずも倩衡舘が特別なのか。

ノアには分からなかった。

昌間の賑やかな声は、もう聞こえない。

静かな郚屋を芋枡しお、ノアは小さく息を吐いた。

広い倩衡舘は静かで、僅かな情報ノむズが聞こえた。

広すぎる空間が、今倜だけは少し冷たく感じた。


案内された郚屋の机の䞊に䌝蚀の文字が光った。

——ノア様。 埌皋、アトラス・ゎヌルド様にご挚拶をしおいただきたす。 䜿いの者が、お迎えに参りたす。
それたで、ごゆっくりおく぀ろぎくださいたせ。

光の䌝蚀


そしお初めお思った。 自分は、どこぞ行くのだろう。




第3話 終


境界の囜



#創䜜倧賞2026
#ファンタゞヌ小説郚門

ゎヌルドマガゞンはこちら
noterゆらりゎヌルド境界の囜


いいなず思ったら応揎しよう

ゆらり🌞🫧 🫶✚ よろしければ応揎お願いしたす❣運営費にしたす🌞iPad代金どうも有難うございたす。チップっおあんたりピン📍ずこないのは🫢私だけ❓いただいたチップはクリ゚むタヌずしおの掻動費に䜿わせおいただきたす 

この蚘事が参加しおいる募集