ルビーの子育て ~ノゴマ~
大雪山の夏は、短い。
その限られた季節を求めて渡ってきた喉元の赤い小さな鳥。
命がけで次の生命を繋いでいました。
尾根の窪地
肌をなでる風は夏の手触りを残しながらも、冷涼な山の空気が心地いい尾根の散歩路。
窪地には、ハイマツを囲むように緑が広がっています。
その一角にある、突き出た大きな岩の頂に舞い降りる小鳥。
鋭い眼光であたりを見回しています。
その口元には、幾重にも重なった昆虫。
しばらくして、ハイマツの中に入っていきました。
ノゴマの夏
窪地の草原で出会ったのは、「ノゴマ」です。
本州で見かけたことはないですが、繁殖のために遥々海を渡ってやってくるといいます。
オスは喉元に鮮烈なルビー色を宿しており、ハイマツの枝先でそのルビーが鮮やかに映えます。
我が子を守る、小さな猛者
草原を駆け回るエゾシマリスを目で追っていた時のことです。
草原に突き出た岩の頂に、ノゴマが音もなく舞い降りました。
くちばしには、尾根を飛び回って集めたであろう小さな虫の数々。
我が子のもとへ運ぶ途中なのでしょう。
その小さな体から放たれる気配は、優しげな小鳥のそれではありませんでした。
あたりを鋭い眼光で睨み、入念に警戒しています。

そこへ、さきほどのエゾシマリスが近づいてきました。
親鳥にとっては大切な我が子を脅かすかもしれない「侵入者」です。
次の瞬間、ノゴマは果敢に体当たりを食らわせ、自分より体の大きなエゾシマリスを激しく追い出しにかかりました。
羽を広げ、命がけで巣があるハイマツの森から遠ざけます。
目の前で繰り広げられる剥き出しの生命の営みに、圧倒されました。
心震わせる瞬間
野生動物を撮影することは、単に綺麗な被写体を記録することではありません。
彼らが生きる一瞬のドラマに、カメラという窓を通してそっとお邪魔させてもらう体験です。
まずはあなたが美しいと感じた自然の中に身を置いてみてください。
そして、じっと気配を感じてみてください。
大雪山の尾根で私がノゴマの覚悟に心を震わせたように、あなたにしか出会えない、あなたの心を動かす瞬間が必ず待っています。
この夏、カメラをバックパックに詰めて、北の山を歩いてみませんか。
