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市役所はAI化されたが末端の住民は回覧板を好んだ。そこでの奇抜な妥協案とは?

タイトル:< 回覧板よ頑張って! > (ショートショート、 814字)
 
市役所はAI化され、完全に無人となった。
 戸籍も証明書も、今ではコンビニや自宅のPCから
ワンクリックで取得できる。
 
支所には わずかに住民対応の仕事が残ってはいたが、
以前に比べれば暇そのものだった。
ただ一つ、どうにもならない問題があった。
 
一部の市民が「IT は苦手」と言い張るため、支所からの連絡だけは
町内の回覧板に頼らざるを得なかったのだ。
 その回覧板が町内を一周するのに、1〜2週間かかる。
 
ある日、市のAI が緊急会議を開いた。
 
「市民への重要通知が、まだ “回覧中” のため届きません」
 「では、どうする」
 「……回覧板の巡回速度を上げるしかありません」
 
翌朝。
 
町内に新型の回覧板が導入された。
 AI 搭載、GPS完備、電動歩行機能、そして――
 玄関前に立つと、その回覧板が自動で喋った。
 「次の家はどこですか。早く回りたいのです。私は市政の生命線です」
 
住民はざわついた。
 市役所が無人化した今、一番働いているのが回覧板だったからだ。
 しかし、住民たちからは不満が噴出した。
 
「回覧板を見たのち、ホルダーに挟まれた文書を持って
歩くのが楽しいんだ」
 「お隣さんとおしゃべりもできるし……」
 「孤独死の防止にもなる」
 「漬物や野菜などの おすそ分けをもらえる時だってある」
 
AI はその声を “住民の強い要望” と判断した。
 翌日から、AI 回覧板はホルダーを抱えたまま、住民と一緒に
とぼとぼと歩いて回るようになった。
 
こうして、市政の最先端を走るはずだったAI 回覧板は――今日も
カゴにいっぱいの『おすそ分け』をのせて、元気に歩いている。
 
 
……ところが、話はそれで終わらなかった。
 
AIの “神対応” に味をしめた住民たちから、さらなる要望が相次いだのだ。
 
「回覧はお昼直前に来てほしい」
 「おすそ分けにおにぎりを届けてほしい」
 「ハンバーガー5個とコーラを届けてほしい」
 
学習を重ねたAI 回覧板は、ついに回覧用ホルダーを捨て、
出前持ち用の岡持おかもちを抱えはじめた。
 
「ITは苦手」と笑う市民たちのために、市政の生命線は今日も
お昼時に合わせて走り続けている。
 
ー 終り ー      ご高覧ありがとうございました。(^^♪
 
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