ドラッグストアの教科書②【客数×客単価 設計版】 ― どちらを追うべきか、を数字で決める ―
はじめに
「客数を増やすべきか、客単価を上げるべきか。」
この問いに、感覚で答えている店舗が多い。
「うちは立地が悪いから客単価で勝負」
「うちは競合が強いから客数で対抗」
これらはすべて、印象であって設計ではない。
今回は、この問いに数字で答える。
感情ではなく、構造で意思決定するための教科書である。
第1章:売上の分解公式
売上には、たった一つの公式しか存在しない。
売上 = 客数 × 客単価
そして客単価はさらに分解できる。
客単価 = 買上点数 × 一品単価
つまり、真の分解式はこうなる。
売上 = 客数 × 買上点数 × 一品単価
この3つの変数のうち、どれか一つでも動けば売上は変わる。
問題は、どの変数を動かすコストが一番低いか、である。
コストが低い施策から着手する。
これが設計の第一原則になる。
第2章:客数の構造
客数は、次の3層に分解できる。
新規客数:初めて来店する客
既存客の来店頻度:月に何回来るか
離反率:来なくなる客の割合
客数を増やすというのは、実際にはこの3つのうち どれかを動かす、という意味になる。
多くの店舗が「新規集客」にばかり投資するが、 実務上、最もコストが低いのは離反率の改善である。
新規集客のコストは、既存客維持のコストの 一般に5倍前後と言われている。
つまり、客数を語るときは 「新規か、既存か」を必ず分けて考える必要がある。
第3章:客単価の構造
客単価も同様に分解する。
客単価 = 買上点数 × 一品単価
買上点数を増やす施策:関連陳列、クロスMD、レジ前訴求
一品単価を上げる施策:上位グレード品への誘導、まとめ買い提案
ここで重要な事実がある。
買上点数を1点増やすことは、 一品単価を10%上げることより、 心理的抵抗が小さい。
なぜなら、点数を増やす提案は 「ついで買い」として受け入れられやすいが、 単価を上げる提案は「値上げ」として抵抗を生みやすいからである。
つまり客単価を上げたいなら、 単価より先に、点数から着手すべきである。
第4章:2軸マトリクスで戦略を決める
ここまでの構造を、実務に落とし込む。
縦軸に客数の伸びしろ、横軸に客単価の伸びしろを取り、 2×2のマトリクスで店舗を分類する。
【客数:高い/客単価:高い】
→ 好調店。攻めの投資でシェア拡大を狙う
【客数:高い/客単価:低い】
→ 立地は強いが、売場提案力が弱い店。
関連販売・クロスMD強化が最優先
【客数:低い/客単価:高い】
→ 固定客に支えられている店。
新規流入施策よりも、既存客の単価をさらに伸ばす方が効率的
【客数:低い/客単価:低い】
→ 構造的に厳しい店。
大規模投資の前に、まず「なぜ両方低いのか」の原因診断が必須
この4象限のどこに位置するかで、 打つべき施策の優先順位はまったく変わる。
自店がどの象限にいるかを診断せずに 「とりあえず客数を増やそう」と動くのは、 処方箋なしで薬を出すのと同じである。
第5章:客数改善レバーのROI試算
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