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【伊勢神宮】式年遷宮のサイクルを「20年」とした理由とは

アマテラスを祀る伊勢神宮では古来、20年に一度、神殿を新しく造り替え、新しい神殿に御神体を遷すという大掛かりな事業「式年遷宮」が行われてきました。次の令和15年(2033)の第63回式年遷宮に向けて、令和7年(2025)に行われた山口祭を皮切りに8年かけて祭典が開催されます。主な祭典のひとつである第一次御木曳おきひき行事(川曳)が7月25日より行われます。『伊勢・出雲に秘められた聖地・神社の謎』(ウェッジ刊)より、一部抜粋してお届けします。

なぜ20年ごとに式年遷宮が行われるのだろうか。

『延喜式』「伊勢大神宮」巻には、遷宮に関して、次のように書かれている。

およそ大神宮は、廿年に一度、正殿・はう殿でん及びとのみてぐら殿どのを造り替へよ。わたらひのみや、及び別宮、ほかやしろの神殿を造る年限はこれに准ぜよ」
 
伊勢神宮で20年ごとに式年遷宮が行われつづけてきたのは、この一文に拠るところが大きいのだが(度会宮は外宮のこと)、ご覧のように、20年ごとに行う理由は書かれていない。そのせいもあって、20年周期に定められた理由をめぐって、さまざまな説が唱えられることになった。試みに、いくつかを挙げてみよう。

「社殿を常に清新に保ち、とこわかの状態にするため」「工匠の技術の継承に適当な年数だから」
「20が聖数だから」
「米を干し飯にして保存できるのが20年を限度とすることに由来」 

どれもそれなりに説得力はあるが、決め手を欠く。 

南北朝時代頃に編まれたかという伊勢神宮史料『二所太神宮例文』には、持統天皇4年(690)の最初の式年遷宮は、この4年前に崩御した天武天皇の「宿願」だったと書かれている。仮にこの記述が正しければ、多くの殿舎の新造を伴った690年の遷宮事業は何年も前からスタートしていたはずだから、天武天皇の生前にその一部がはじまっていた可能性はある。そしてそれを引き継いだのが、皇后でもあった持統天皇だったわけである。

天武・持統が生きた飛鳥時代には、薬師寺・ほうりゅう などの大寺院が建造されており、木造であっても1000年以上持続する殿舎を建造する優れた技術を、すでに日本人は有していた。したがって、伊勢神宮の神殿を、寺院建築にならって長持ちする堅固な建造物にするチャンスはあったわけである。

令和7年6月に行われた御樋代木奉曳(内宮)の様子

だが、外来の寺院建築を排して、あえてたかゆか式、ひのきしら 造り、ほったてばしらかやぶき屋根といった持続性の劣る建築にこだわったのは、「これが日本古来の伝統的な建築様式なのであり、日本のじん 信仰の中心に位置づけられる伊勢神宮には最もふさわしいのだ」と天武天皇が考えたからではないだろうか。

ただし、持続性の劣る建造物を末永く保つためには、定期的にまるごと建て替えることが必須となってくる。では、そのサイクルをどのくらいにしたらよいのか。そう考えたとき、短すぎず、長すぎない時間として天武天皇をはじめとする古代天皇とその側近たちの頭に浮上したのが、「20年」だったのではないだろうか。

今年5月に行われた第一次お木曳行事(陸曳) 

仮にもし今後、式年遷宮が途絶えてしまったら、伊勢神宮は伊勢神宮たりえるだろうか。孜々営々ししえいえいと続けられてきた式年遷宮の未来、そして伊勢神宮の未来は、日本人ひとりひとりの双肩にかかっている、と表現しても決して過言ではあるまい。

編集=三橋 健 文=古川順弘
写真提供=伊勢御遷宮委員会

▼本書の詳細はこちら

<本書の目次>
第一章 伊勢神宮、七つの謎
 第一の謎 なぜ天照大神が祀られているのか
 第二の謎 なぜ内宮と外宮があるのか
 第三の謎 伊勢神宮に仕えた斎王とは
 第四の謎 伊勢神宮の別宮とは
 第五の謎 心御柱の秘儀とは
 第六の謎 天照大神は男神なのか
 第七の謎 なぜ20年ごとに建て替えられるのか

第二章 出雲大社、七つの謎
 第一の謎 なぜ大国主神が祀られているのか
 第二の謎 出雲大社はいつ創建されたのか
 第三の謎 古代には超高層神殿だったのか
 第四の謎 出雲大社を司る出雲国造とは
 第五の謎 出雲のもうひとつの大社とは
 第六の謎 天皇に奏上された『出雲国造神賀詞』とは
 第七の謎 出雲に弥生王国はあったのか

第三章 「伊勢と出雲」をめぐる謎
 第一の謎 なぜともに垂仁朝が創建年代なのか
 第二の謎 伊勢の土着神は出雲系の神なのか

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